―――誰よりも強く、なりたかった。
もう何も失わないようにと。
大切なものを護れるようにと。
誰よりも強く、強くなりたかった。
強くなればもう何も。
何も失うものはないから。
この手で、この拳で、護る事が出来るから。
自分自身の力で、護る事が出来るから。
―――護りたかったものは、ただひとつ。
「どうしてそんなにも君は強がるの?」
見つめてくる瞳の色がイヤだった。憐れむような、同情されているようなそんな瞳。
「…別に俺は強がってなんかねーよっ」
俺は別に同情される覚えも無いし、憐れまれる事もない。俺は、俺は…。
「くすくす、可愛いなあ。田代さんは」
「な、なんだよっそれはっ!」
俺の言葉にお前の目が微笑う。なんだかガキのような顔で…けれども俺には出来ない男の顔だった。いくら俺が強がっても、強くなっても出来ない顔。
「可愛いよ、田代さん」
「…速水……」
伸びてきた手を避けようとして叶わなかった。お前の手が俺の髪を撫でて。そっと撫でて、そして。
―――そして、キスされた……。
もしももっと、俺が強かったなら。
お前が死んでしまう事がなかったかもしれない。
こんな風に、死んでしまう事などなかったかもしれないのに。
ちっぽけな命だと、誰かが言った。
命に小さいも大きいもないのに。
命に価値の違いなんてないのに。
ただひとつしかない、その人だけの命。
それはどんなものにも代えられないのに。
―――ただひとつの、命なのに。
「強い女の人は好きだよ。でも強がっている女の人は哀しい」
抱きしめられた腕の思いがけない力強さに、俺は不覚にも身体が竦んだ。こんな風に強く。強く抱きしめられる事自体が、俺には…。
「田代さんは僕には強がっているようにしか見えない」
何時も穏やかに微笑っているお前。何を考えているのか分からない能天気さで微笑っているお前。でも今は、今は違って見える。
「…そ、そんな事ねーよ……」
否定しようとしたらまたキスされた。頭の芯から溶かすような甘いキス。俺はこんなキス知らなかったし、知ろうともしなかった。強くなる為には誰かに寄りかかる事も、誰かに預ける事も必要なかったから。
「もっと僕に甘えて欲しいな」
唇が離れて真っ先に零れたお前の言葉に、少しづつ何かが壊れていくような気がした。
本当の君を知っているのは僕だけだ。
君は確かに強いけど、とても強いけれど。
本当は誰よりも女の子で、誰よりも純粋で。
本当は誰よりも、優しいんだ。
――――僕が君を支えてあげたい…ずっと……
「…甘えて、欲しいな…」
「…速水……」
「僕だけに、田代さん。僕だけには強がらないで」
「君が好きだから」
耳元で囁けばぴくんっと腕の中の身体が震えた。それを合図に僕は君の唇を再び塞ぐと、そのまま胸元のボタンに手を掛けた。ぱちんと小さな音を立てながら、ボタンを外してゆく。
「…待っ…速水……」
「ダメ、待たない。田代さんは言葉だけでは分かってくれないから」
上から4番目のボタンまで外すと、そのまま胸元に手を忍ばせた。そしてブラの上からやんわりと胸を揉む。手のひらでは包み込めないくらいの大きさのせいで、少し爪を立ててしまったが。
「…やめっ…あっ……」
それでもそのままぎゅっと掴めば、耐えきれずに背中の廻した腕に力がこもる。その反応を楽しみながら、何度もブラ越しに胸を揉んだ。
「…やめろっ…って…あぁ……」
布越しでも分かるほどに尖った乳首をそのまま指で転がした。ぴんっと張り詰めたそれがびくんと跳ねるのを楽しみながら。
「…やだぁっ…あ……」
そのままフロントホックを外させれば、零れんばかりに胸が現れる。見掛けよりもずっと。ずっと白い肌をしていた。
「やめろっ…速水……」
「ダメ、止めない。だって田代さんこんなに感じている」
「…あんっ……」
じかに指で胸の突起に触れれば耐えきれずに長い髪が揺れた。その髪に開いた方の手でそっと撫でながら、指の腹で乳首を転がす。桜色の突起は何時しか朱に染まり始めていた。
「…あぁ…んっ…ダメだって…速水……」
そのまま乳首に吸い付いて、舌で嬲った。わざとぴちゃびゃと音を立てながら、そこを征服してゆく。両の胸を支配されて、君は耐えきれずに脚をがくがくとさせた。
「…ダメ…やめ…あっ!」
舌で胸を弄るのは止めずに、胸から手を離してスカートの中に忍ばせる。そのまま布越しに君の秘所に触れた。その途端ぴくんっと君の肩が揺れて、そのまま僕に倒れ込む。
「田代さんココ、ぐしょぐしょだよ」
「…あぁ…んっ…はぁっ……」
布越しに割れ目に指を突き入れて、そのまま捏ね繰り回した。そのたびに布からべっとりと愛液が染み込んで来る。
「…やめろっ…速水…はぁぁ……」
びくびくと震える肩と、脚。それを愛しく思いながらパンティーを付けさせたまま、指をじかに忍ばせた。愛液の分泌する肉壁に指でなぞる。ひくんひくんと震えるソコに指を忍ばせて、そのままずぷずぷと奥へと突き入れた。
「…ああんっ……」
抵抗する肉壁の感触を楽しみながら、奥へ奥へと指を進める。絡みつく花びらがしっとりと濡れて僕の指を誘う。
「…あぁ…ダメだって…俺は…もぉ……」
肩に顔を乗せて喘ぐ君の背中を撫でながら、一端そこから僕は指を外した。そしてそのまま自らのズボンのファスナーに手を掛けると、形を充分に変化させた自身を取り出す。どくんどくんと脈立つソレを指で掴むと、パンティーの布を横にずらしたまま一気に秘所に突き入れた。
「あああ―――っ!!!」
無理な態勢のまま貫いたせいで、君の手に力がこもる。それでも僕はそのままの態勢で行為を進めた。ずぶずぶと音を立てながら飲みこんでゆく君の媚肉を感じながら。
「…あああっ…はぁ…ああん……」
熱い息が耳元に拭きかかる。それを感じながら僕はぐいぐいと腰を動かした。突き上げるたびに君の口から嬌声が上がる。甘く熱い吐息に身を焦がしながら。
「…やぁ…ダメ…あぁぁ…変に…変になっちまう…ああ……」
腰を掴んでそのまま君の身体を宙に浮かした。秘所に自身を挿入させたままで。そのままで下から君を突き上げる。そのたびに豊満な胸が揺れて、僕の視界を楽しませた。
「…あああんっ…はぁぁぁ…あっ…変に…変になるぅ…あぁ……」
「おかしく、なっちゃいな」
「――――ああああっ!!!」
腰を激しくグラインドさせて君の最奥まで貫いた。その瞬間、互いに最高潮に達した……。
「もっと、僕の背中にしがみ付いて」
「…はや…み……」
「もっと僕を頼って」
「…僕だけを…頼って……」
―――強く、なりたかった。
誰よりも強く。強くなりたかった。
全てのものを護れるくらいに強く。
強くなりたかったから。けれども。
…けれどもこうして。こうして抱きしめられる腕は……
「君は女の子なんだから」
ああそうだなと、思った。そうなんだなと思った。
今まで強くならねばとそればかり必死に。必死に生きていたから。
だから忘れていた。こんな風に。こんな風に支えてくれる腕があることを。
こうして支えられて、そして支え合う関係を。
…俺は…忘れていた……
「人は独りでは生きられないんだから」
「…速水……」
「だからこうして頼る事が弱さじゃないよ…頼って頼られてそして人は生きているんだから」
「…そうだな……」
「…そうだな…速水……」
そう言って僕の腕の中で微笑って君は。
君はひどく少女のような笑みをしていた。
―――そんな君が、大好きだよ……
END