言葉にならない気持ち

些細な事で、しあわせになれた。
ほんの小さな事でも、その一瞬一瞬が。
とても。とても大事なものだと。
大切なものだと、気が付いたから。

―――だから貴方を、失いたくはない。


言葉にならない気持ち、言葉に出来ない気持ち。
溢れて、たくさん溢れて、止められなくて。
そしてゆっくりと零れてゆくもの。そっと、そっと。

手のひらから、零れてゆくもの。


「…す…き……」
それだけの言葉を言うのにどれだけの時間が経ったのだろうか。どれだけの時が経ったのだろうか?ただその一言を言う為に私は。私は。
「…好き…来須……」
ずっと。ずっとずっと、胸の奥に。胸の奥に暖めて、そして降り積もってゆく言葉。静かにこころに積ってゆく言葉。大事な、言葉。
それを言うのに私はどれだけ遠回りをしてきたのだろうか?


頬に伸びてくる大きな手。
全てを包み込んでくれる優しい手。
その手のぬくもりが。
その手のあたたかさが。

―――全ての答えになってゆく……


「…ああ…俺もだ……」
好き、です。貴方が好きです。だから。だから死なないでください。絶対に死んだりしないでください。それだけが。それだけが、私の祈り。
「お前が、好きだ」
どうして私の手はこんなにも細いのだろう?どうして私の脚はこんなにも頼りないのだろう。もしも私に大きな手と素早し脚があったのならば。あったのならば、私の全てで貴方を護るのに。護る、のに。
――――どうして私はこんなにもちっぽけな存在なの?
「…なのにどうして……」
神様私に、剣と盾をください。貴方を護る事の出来る強い剣と盾を私にください。
「どうしてお前は、泣く?」


零れ落ちる雫を止められない私はただの弱い生き物。
ちっぽけで、弱くて勇気のない生き物。
ただ気持ちを伝えるだけでこんなにも遠回りをし、そして。
そしてこんなにも弱くてただ。
ただ、泣く事しか出来ない自分。


「…て………」


生きて、ください。死なないで、ください。
ただその一言が、ただその一言が。
どうして?どうして私は言えないの?
言葉にする事が出来ないの?


「―――お前を泣かせる俺が……」
頬を包み込む手がそっと涙を拭ってくれた。貴方の手は優しい。この手が全てを護る。自分自身を傷つけ、そして世界を護る手。
でも私は。私は世界よりも貴方の方が大切なんです。
「…俺が…不甲斐ないのか?」
世界の平和や、皆の笑顔よりも私は。私にとっては貴方が何よりも大切なんです。
「…違…う……」
けれども私は貴方の問いに首を横に振るのが精一杯だった。


言葉にならない気持ちを。
言葉に出来ない気持ちを。
胸に宿る溢れる想いを。全て。

―――全て貴方に見せられたならば。


「…生き…て……」


今はそれだけが。それだけを言うのがやっとで。
やっと、だから。大切な貴方に、何よりも大事な貴方に。
私は。私はただ。ただずっと、ずっとずっと。

―――生きて、微笑っていて欲しいの……


「死なない、お前を置いて」
「……」
「お前の涙を拭うのは」

「…俺…だけだ……」


言葉にならない気持ち。
何時か、きっと。きっと貴方に。
貴方に伝える事が出来るだろうか?

―――貴方に、全てを……


私の手は細い。私の脚は頼りない。
それでもこんな私でも。
こんな私でも貴方に出来る事がある。
たったひとつだけ、出来る事。



…それは貴方の為に祈る事…貴方の為に、微笑む事……


END

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