全力投球

―――恋したら、全力投球なんだからっ!

好きになったらそのヒトだけをずっと見ているの。
好きになったらそのヒトだけをずっと追いかけているの。
だって。だって、そんな自分が一番『らしい』って思えるから。

―――そんな自分が、大好きだから。


「来須さーーんっ!!」
全速力で走って、その背中にぎゅっと抱きついてみた。なんか今日の僕は少し大胆だなぁと自分でも思ったりしてみる。
でも、いいよね。だって久々に来須さんに逢えたんだから。
最近学校で見かけないから僕、凄く心配していたんだよ。来須さんのカッコイイ顔見ている時が一番幸せなんだもん。
「―――新井木か……」
あ、バレてる…って声でバレるよね。でもでもその声が怒っていないから…僕は少しだけ図に乗ってしまった。
「はーい、そうでーすっ!」
しがみ付いたまま背中に頬をすりすりさせてみる…これって端から見たら変態かなぁ?
でもでも来須さんの背中って大きくて、とっても暖かいから。こうしているだけで凄く、凄く安心出来るんだもん。
「…って何している?」
――ヴ、やっぱり言われてしまった。確かにちょっとこれはやりすぎたかなぁ?怒ってないかな?嫌われちゃったりしないかな?えっとえっとぉ…
「え、そのあのー」
うーん上手くいい訳が出来ない…どうしよう…このままじゃ来須さんに変な女の子だと思われてしまうって今でも充分変、だよね。
―――って自分でそんな事思ったら落ち込んでしまった。
僕って色気もないし女の子らしくないし、ましてや胸もないから…こんな風に後ろから抱きつかれても全然嬉しくないかもしれない。
原さんみたくナイスバーディーなお姉さまだったならやっぱちょっと、違うのかなぁ?でもそんな事で喜ぶ来須さんもイヤかも…って一体僕はどっちなんだっ?!
「そのー寒かったんでっ僕」
そんなこんなで口から出てきた答えがコレ。自分でもオイオイと言いたくなってしまった。どうして僕はこうした時に気の効いた台詞を言えないんだろうか。ちょっとだけ落ち込んでしまいそうだって、充分落ち込んだんだけど。
「…今は五月なのに?…」
ああっやっぱり。やっぱりズバリと突っ込まれてしまった…僕が心の中でセルフツッコミした事と一緒だよー。でも来須さんと一緒で嬉しい、かも。ってそんな事で喜ぶのもどうかと思うぞ、僕。
「あーえーとぉでも寒いのー」
それでも懲りずに言ってみたら、呆れたような声で返された。おかげで少しだけめげそうになっちゃったけど…でも。

「―――もう少しマシないい訳…考えろよ」

でもそう言った声が…ひどく優しかった、から。
とっても優しく僕の耳に届いたから。
だから僕は懲りずにまた。
また、ぎゅっと来須さんに抱き付いてしまった。


好きだから。大好きだから。
後悔なんてしたくないんだもん。
何時も何時も真っ直ぐな瞳を。
何時も何時も真っ直ぐな気持ちを。
大好きな人には向けたいから。
どんなに迷惑がられても。
どんなに嫌がられても。
それでも、それでも好きだから。

―――僕は、全力投球で恋したいんだ。


「…そんなにくっついて…暑くないか?」
―――はい、もっともです。でもでも今は。
「へへ『熱い』けど『暑く』はないもん」
―――今は、こうしていたいんだもん。
「……まったく…お前は……」

「しょうがない奴だ」

くすりと、ひとつ。
ひとつ来須さんが微笑った。
そして。そして、僕の手のひらを。
そっと握って、くれた。


「わっ、く、来須さんっ!!」
「なに驚いてる?」
「い、いえそのそのその僕…」
「変な奴だな」
「わっ!」

僕が耳が真っ赤になるまでどきどきしているのに、来須さんは平然と言ってのけて。そして。そして軽く僕の手をつねった。

「い、痛いですーーっ!!」
「軽くやっただろう?」
「でもでもでもーーっ!!」
「暑いのにくっついてくるからだ」
「…くすん、迷惑ですか?…」
「―――バカだな」


「…迷惑だったらとっくに手を…離している……」


恋をしたら何時も。
何時も全力投球なの。
何時も前だけを見て。
何時もその人だけを見つめて。
大好きだから。誰よりも大好きだから。

―――だから何時も僕は、一生懸命に恋しているんだ……



END

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