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―――たくさんの言葉よりも、ただひとつの瞳。

真っ直ぐに見つめる瞳にただ愛しくて。ただどうしようもない程に愛しくて、そっと抱きしめた。
「…豪鬼……」
普段は甲冑に隠された身体も、こうして抱きしめればただの華奢な少年でしかない。細身の、少年。こうして腕の中に閉じ込めれば、隠れてしまうほどの。
「…蘭…丸……」
たどたどしい言葉で、それでも俺の名前を呼ぶお前。月抄様に言葉を封印されたお前が、それでも内緒に覚えてくれた言葉。
「…らん…まる……」
手を伸ばして、背中にしがみ付くそんなお前を俺がどれだけ大事に想っているか。どれだけ愛しく想っているか…どれだけ愛しているのか…分かるだろうか?
「―――豪鬼、愛してるよ」
こうして言葉にして、どれだけ。どれだけお前に想いは伝わっているのだろうか?


…目が…好き…だ……


一度だけお前が俺の名前以外に言った言葉。
ただひとつの、言葉。
それを俺がどれだけ。どれ、だけ。
この胸に大切に閉じ込めているのか。
どれだけ大事に、こころに閉じ込めているのか。
そっとてのひらで、包み込んでいるのか。


抱きしめたままそっと、その身体を横たえた。腕は背中に廻されたままで。そのまま無防備な唇に口付けて、薄く開いたそこに舌を侵入させた。
「…んっ…んん……」
少しだけ逃げる舌を強引に絡め、きつく吸い上げる。その瞬間にぴくりと腕の中の身体が震えた。
「…んんん…はぁっ……ん……」
何度も何度も舌を絡め、吐息を奪う。何時しか腕に廻されていた腕の力が強くなって、くしゃりと俺の夜着を乱した。
「…はぁ…ぁ……」
唇が離れれば名残惜しそうに一本の唾液の糸が引かれる。もう一度軽く唇に口付けて、その糸をお前の口中に流し込んだ。こくりと、小さな音がして飲み込まれるのが分かる。それを確認してから、そっとその長い髪に指を絡めた。炎のような紅い髪。それはきっとお前の、本当の心の色と同じなのだろう。
「…豪鬼……」
自分でも苦笑するくらいに愛しげにその名を呼ぶ。愛しさがどうしようもない程に溢れてくる。溢れて何時しか俺の全てを飲みこんでしまうのではないかと言うように。
「…蘭…丸……」
海よりも空よりも蒼い瞳が俺を見上げる。その輝きに口許に笑みを浮かべて、そして瞼の裏に閉じ込めてキスをした。


お前の蒼い瞳が。その瞳が、ずっと。
ずっと、俺だけを映してくれたのなら。

―――何もいらない、と想った……


「…あぁ…っ……」
夜着の胸元を開かせて、くっきりと浮かぶ鎖骨を吸い上げた。それと同時に胸の飾りに指を這わせる。軽く摘んでやるだけで若い敏感な身体は鮮魚のように跳ねた。
「…はぁぁ…っ…ん……」
跳ね上がる身体は海を泳ぐ魚のようにひどく綺麗で。そして、そして眩しく思えた。髪から零れる汗が水飛沫のようで。
「…あぁ…ん…はぁ……」
鎖骨から胸へと唇を下ろし、胸の果実をそのまま含んだ。軽く吸い付いて、舌で転がす。柔らかく甘噛みしてやればソレは痛い程に張り詰めた。
「…あぁんっ……」
唇はそのままで、指を身体中へと滑らせてゆく。わき腹のラインから臍の窪み、そして内股へと。
「―――ああんっ!」
中心部分のソコに触れれば、それは微妙に形を変えていた。手のひらで包み込みながら、側面のラインを辿る。何度か指を往復させ先端の割れ目に爪を立てれば、とろりと先走りの雫が零れ始めていた。
「…あぁ…あ…らん…まる……」
どくどくと手のひらで脈打つソレを愛しげに撫でて、指を離した。そしてそのまま最奥へと指を忍ばせる。
「―――んっ!」
何時もソコは初めてのように、指を拒む。むけどもそれは最初だけで、何度か中を掻き乱してやれば後はひくひくと貪欲に刺激を求めるようになってゆく。
「…くぅ…んっ…はぁん……」
痛みを含んでいた声も何時しか甘いものへと摩り替わってゆく。それを確認してから中の指の本数を増やした。
「…はぁっ…ぁぁ……」
くちゅくちゅと音を立てながら、生き物のように蠢く内壁。きつく締め付ける媚肉を感じながら、一気に指を引き抜いた。そして。
「―――いいか?」
俺が耳もとでひとつ囁いた言葉に、お前は小さく頷いた。


――――言葉よりも確かなものがひとつだけあるとすれば。
どんなたくさんな言葉よりも、ただひとつの真実があるとすれば。


「―――あああっ!!」
一気に奥まで埋め込めば、その細い喉が仰け反り、甘い悲鳴を零した。そんなお前の髪を撫でながら、媚肉に馴染むまで一端動きを止める。そしてそのままひとつ口付けた。
―――口付けは、ひどく甘く甘美な味がした。
「…んっ…はぁ…あっ!」
唇を離してとろりとした瞳で自分を見つめるのを確認して。その蒼い瞳に俺だけが映っているのを確認して。俺はゆっくりと腰を使い始めた。
「あああっ…あぁぁ……」
がくがくと揺さぶられる身体。紅い髪が、揺れる。まるで血の海のように、揺れる。何時しか俺とお前の間に、本物の血が流れるのだろうか?本物の血の海に浸されてゆくのだろうか?もしも。もしもそうなったとしても、俺は。

……俺はお前だけを…愛している……

ただそれだけが真実。ただそれだけが本当の事。
それだけを、それだけが。
お前に伝われば、俺は何も望まない。


「あああ――っ!!!」


身体に欲望を注ぎ込む。
それと同時に俺の手の中にお前の液体が散らばった。
紅い海の中に白い雨が降った。


ただひとつだけの、真実。
それはお前の中に映る俺と。
俺の中に映るお前。

―――互いの瞳だけが、ただひとつの真実だった。



―――何時か……と、言葉にしようとして止めた。
唇の中に閉じ込めて、気を失ったお前の身体を抱きしめる。
まだ熱の残る、その身体を。

きつく抱きしめて、そして口付けた。



何時かもしも血の海にふたり塗れても…見つめる瞳は真実だから…と。



END

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