しあわせの法則

空を見上げればひどく暖かな日差しと、そして眩しいほどの太陽が顔を覗かせていた。その強い光に不破はつい、瞼を閉じてしまう。
「どうした?不破?」
そんな不破に豪鬼は不思議そうに尋ねてくる。まるで生まれたての子供のような瞳が、真っ直ぐに不破を見つめてくる。
「いや、あんまりにも眩しくって、さ」
そう言うと不破は豪鬼の髪をくしゃりとひとつ撫でた。見掛けよりもずっと細くて、そしてさらさらの髪を。そんな不破の仕草に少しだけ不思議そうな顔をして…そして豪鬼はひどく無邪気な顔で笑って。
「太陽、眩しいね」
不破と同じように空を見上げて、そして。そして目を、細めた。


しあわせになりたいって、誰だって。
誰だって、そう思っている。
だから何時もどうしたらしあわせになれるかと。
そんな事を考えながら、日々生きている。
どうしたら、しあわせになれるのかって。


―――こんなにも簡単に、手に届く場所にあるのに気が付かないもの。


「でも、気持ちいい」
笑う、お前。ひどく無邪気に。
「――ああ」
そこには微塵も感じられない。
「気持ちいいね、不破」
その肩に背負っている重たいものなど。
「そうだな、豪鬼」
その中に閉じ込められた重い枷を。

どうしたら、お前を解き放つ事が出来るんだろうか?


ふわりとひとつ、風が吹いた。それは春の匂いを運んでくる優しい風だった。その包み込むような暖かさと優しさにひどく暖かいものがこころに降って来る。とてもあたたかい、ものが。
「不破は、何時も楽しそうだな」
豪鬼の髪が風に靡いた。そこから微かに薫るのは、多分ひだまりの匂いなのだろう。ぽかぽかとした、暖かい香り。
「そう見えるか?」
「うん何時もにこにこしてる。だから、好き」
無邪気に迷いもなく言って来る言葉に不破は苦笑を禁じえなかった。こんなにも無防備に好きと言う言葉を言われれば、悪い気はしないしむしろ嬉しかった。ひどく、嬉しかった。だから。
「俺も好きだぜ」
だから何の戸惑いもなく、その言葉を返す事が出来た。


風に靡く紅い、髪。
見掛けよりもずっと柔らかくて。
ずっと細くて、そして。
そしてひどく心地よい髪に。
その髪に、触れたくて。

――――ずっと、触れていたくて……


もう一度不破は豪鬼の髪をくしゃりと撫でた。その瞬間ふと、思った。それは本当に突然で、そして本当に自然に。そう、思ったから。
「―――好きだぜ、豪鬼」
零れた言葉に不破は自分自身にすんなりと受け入れた。それは本当に自然に、ごく自然に訪れたものだったから。本当に何の疑いも思考も入り込む前に。
「お前が好きだよ」
不破の言葉にやっぱり豪鬼は微笑った。子供のように、ひどく無邪気に。


この笑顔をずっと見ていたいと思った。
ずっとこの笑顔をさせてやりてーと思った。
それは色々な事を考える前に、何かを考える前に。
ごく自然に俺の心から浮かんできた事。
考えた訳じゃなく、思った事。
ただ思った事。俺がただひとつ思った事。

―――その笑顔を護りたい、と。


「不破は、一番優しい」
「そうか?」
「だって俺と訓練してくれる。俺の傍にいてくれる」

「きっと誰よりも、優しい」


しあわせになりたいと思って。
何時もそう思っていて、そして。
そして突然に気付く事。不意に分かる事。
こんなにもそばに、それは存在すると言う事。

しあわせは、この手のひらにあると云う事。


こうして手を伸ばせばお前の髪に触れられる。
こうして俺が笑えば、お前が微笑ってくれる。


―――こんなにも身近にしあわせになる方法は、存在するのだから。


「訓練するか?豪鬼」
「うん、するっ!」
「じゃあ行こーぜっ」
「あ、待ってよ不破っ!」
「早く来いよ、置いてくぜ」
「待ってよーーっ!!」


これから先に何が起こるかは分からない。
でも、今は。今はこうして。
こうしてやっと見つける事が出来たしあわせを。
そのあたたかさを、護ってゆきたい。



―――身近にある大切なものを、護ってゆきたい。




END

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