Kiss Your Lips

―――目を、閉じて。そっと、目を閉じて。

真っ直ぐに見つめる瞳を、何時しか自分だけのものにしたいとそう思うようになっていた。
強がっている瞳。けれどもそこから見え隠れする不安。強がれば強がるほど、脆くなるその瞳。その瞳がどうしても、愛しかったから。

傷口を唇で触れて、そして。そして癒せはしないのだろうか?


ぽつりと貴方は独りで立っていた。何をする訳ではなく、ただ。ただぼんやりと空を見上げながら。その瞳に映っているのは紅い夕焼けと、そして。そして遠い空だった。
「――― 一馬…」
不思議な孤独に満たされた空間。その中に貴方がぽつりといるようで。まるでそこだけが切り取られたようで。それが嫌で私は声を掛けずにはいられなかった。
「…あ、不知火……」
ぼんやりとした表情で私を見返す。その顔がひどく無防備で、ひどく自然だった事が。それが嬉しくもあり、そして何処か切ない。
「どうしたのです?こんな所で」
「いや別にただ…ただ空を見ていた」
そう言って私から視線を反らして上を見上げる漆黒の瞳を。紅い夕日に染まるその瞳を。
「そうですか」
―――自分だけに向けたいと、そう思った。


傷つき壊れやすいその心を。
強がる事で護ろうとしている。
必死で護ろうと、している。
けれども。けれどもその心の奥の。
奥の魂は、本当は無防備なほど剥き出しで。
剥き出しに晒され、傷ついている。
強がる事で。護ろうとする事で。
逆に魂は磨り減っている。
私は、その魂を。そんな貴方を。

…この腕で抱きしめ、包み込みたい……


「…一馬……」
後ろからそっと貴方を抱きしめた。見掛けよりもずっと華奢で、ずっと細いその身体を。私は力の限り抱きしめる。
「不知火?」
びっくりしたような貴方の声。そして一瞬硬直する身体。それは未だに直らない貴方の哀しい癖。どんなに私が抱きしめても、それは直ることは無くて。
「どうしたら私は、貴方を癒せるのでしょうね」
次第に力が抜けていき私にそっと体重を預けてくる貴方に。そんな貴方に私はもう一度きつく抱きしめた。
「…何言っているんだよ……」
「貴方のこころの傷を、どうしたら癒せるのでしょうか?」
このまま貴方をここで抱きたいと、思った。そうしたら私の気持ちを全て見せる事が出来るから。


どうして、だろう?
何時も俺はお前を護りたいと思っているのに。
どうして、だろうか?
俺は何時もお前に護られてばかりだ。
何時もその手が俺を包み込み、ふと淋しくなった時。
ふと、壊れそうになった時。
俺を抱きしめて、捕まえるのは何時も。
何時もお前の、手だった。

今だって、ふと。ふとこの空を見ていたら、消えてしまいたいと思っていたのに。


「…一馬、好きですよ…貴方が……」
「…不知…火……」
「貴方だけが、好きです。貴方の真っ直ぐな心が」
「……あ……」
「壊れそうな心が、それでも純粋な心が大好きです」


唇が、降って来る。そっと、降って来る。
切ないほどの、苦しいほどの。
そしてどうしようもなく甘いキス。
どうしてだろうと、思った。
何でお前にこうされると。こうされると。

―――ひどく泣きたくなるんだろうか?……


男に触れられるのは嫌だ。他人に触れられるのは嫌だ。
背後に立つだけでぞくっとする。けれども。
けれどもお前だけは。お前だけは、安心するんだ。
俺の後ろにお前がいると。ひどく、安心するんだ。


「…不知火……」
「ずっとこうして」
「……っ……」
「こうして、抱きしめていたい」


まるでお前の唇が、俺の心に触れているよう。
そっと、そっと、触れているよう。
俺の傷口に触れて、そして。そして透明な血を。
全て舐めとってくれているようで。


「―――俺も…不知火……」


振り返って、そして。そして背中にぎゅっと手を廻してしがみ付いた。分からない、分からない。こうして捕まっていないと不安になるのは。不安になるのは、どうしてなのか?
「…一馬……」
そうして、そっと背中に廻される腕。優しく抱きしめる腕。そうする事で。そうする事で俺は初めて安心出来た。初めて、ほっとした。


もう一度俺は目を閉じた。そっと目を閉じた。
ゆっくりと、降りてくる唇。触れ合った先の暖かさが。
その暖かさが、俺のこころに触れる。

――――そっと、触れる……



…まるで俺のこころの傷を、癒してくれるように……




END

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