何時も、一緒に

―――バカみたいだけど、惚れているんだと自覚する瞬間。

「わっ、いきなりなんだよお前はっ!!」
見かけよりもずっと細いその身体を抱きしめた瞬間、怒ったように怒鳴られた。けれども一瞬、ピクリと身体が震えたのを決して見逃しはしなかったが。
「だってお前身体暖かいんだものーっあっためろよー一馬――っ!!」
その一瞬の震えが嫌で、俺はわざとぎゅっとお前を抱きしめた。震えることが出来ないように、きつく。
「…く、苦しい…離せよっ不破っ!」
「いやだー、寒みーんだよ暖めてくれよぉー」
きっと端から見たらただじゃれているようにしか見えないだろう。けれども。けれども俺の中ではかなり…いや本気だったんだ。
他人に触れられることにひどく怯えるお前。女は平気みたいだけど男に触れられる事に、お前は物凄い拒絶反応を起こす。だからこそ。だからこそ、俺は…。
「わああーっお前何処触ってんだよーーっ!!」
俺はそんなお前の『原因』を何時しか、取り除いてやりてーんだ。


―――好きだぜ、なんて言えない。
まだ俺は言えない。言うことが出来ない。
お前に過去に何があったか、俺は知らねーから。
まだなんも知らねーから。
お前の被っている殻を外して、そして。
そして見せた傷を癒してやれるまで。
こころの傷を、癒せるまで。

そこまでの男になれたら…俺は迷わずお前に告げるから……。


「抱きごこちがよくねー」
「…は、離せってっ!……」
「やっぱ胸がないのがアレだよなぁ」
「―――っ!俺は男だっ!!」
「でも細っせーじゃん」
「………」
「こんなに細い、首も、肩も、全部」
「…ひ、人の気にしている事を…」
「いいんだよ、これで」
「何でだよっ?!」
「だって」

「だって、ちょうど俺の腕の中に収まるから」


自分でもなにバカな事を言っているんだろうと思ったら…予想通り、俺の頭は『グウ』で殴られていた。

「痛ってーーっ!!」
マジで殴られた。こいつあんな細っこい腕なのに、力だけはバカ力だからなぁ…。両手で頭を押さえている間に、腕の中から逃げられた。そんなすばしっこさが今は恨めしい。
「お、お前…何言って……」
はあはあと肩で息をしながらも、その顔は耳まで真っ赤だった。畜生…何でそんなに可愛いんだよ…犯されても文句言えねーぞ。
「何って思った事を言ったま…わっ!」
また頭を思いっきり殴られた。大きな目がギンっと俺を睨みつける。でもまだ顔が真っ赤なのが…やっぱどうしようもない程に可愛いんだよなぁ。
「何でお前はそうニヤニヤ笑ってんだよっ!!」
―――だってお前がどうしようもねーほど…可愛いから……
「い、いやー一馬ちゃんの抱きごこち最高★なーんてね」
もう一度殴りかかってくる手首を捉えて、そのまままた抱き寄せた。流石に3回も殴られるほど俺もバカじゃない。ちゃんと学習能力は持っているんだから。
「わー離せっ離せーーっ!!」
「イヤだ、離したらまた殴られるもん」
「離さなくても殴るっ!」
「だったら離さない方がイイじゃんかよ。どうせ殴られるんだったら」
「……だから………」
「ん?」
「何で俺に抱きつくんだよっ!!女じゃねーぞ俺」
―――好きだから、だよ。お前が誰よりも……
「そりゃー暖かいからさっ」
…なんてまだ…言えねーよな…お前の口から…自分から俺に何が合ったのかを言い出してくれるまでは……。


好き、だから。本気だから。
だから、誰よりも大事にしたい。
大切にしたいから無理強いだけはしたくねーんだ。
だから俺は、ずっと。

―――ずっとお前を待っているから……


「……誰よりもこころが…暖かいからさ………」







END

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