Precious

―――何よりも、誰よりも、大切だから……

きつく抱きしめたら折れちまうんじゃないかって…そんな事を思ったら腕に力を込める事が出来なかった。
「…一馬……」
見掛けよりもずっと華奢な身体を抱きしめて、髪をひとつ撫でる。漆黒の髪はひどく柔らかい感触を指に伝えた。
「何だよ、不破…お前変な顔している」
「変な顔って…お前なぁ…」
人が神妙になっているってのに…コイツは…。けどまあそんなトコも、惚れているんだけど。
―――悔しいくらいに、惚れている。自分でもどうにも出来ないくらいに。
こんなにも他人を大切だと思った奴はいない。こんなにも護ってやりたいと思った奴も。こんなにもそばにいて、抱きしめたいと思った奴も。
「何時もの顔、しろよ」
大きな目が上目遣いに俺を睨みつけている。でもそれが照れ隠しだって事はすぐに分かった。微かに頬が朱に染まっているせいで。それでも不機嫌そうに睨むコイツが、悔しいほどに可愛いんだ。
「何だよ、何時もの顔って」
「何時ものへらへらしてる顔だよっ」
「へらへらって…お前随分な言い方じゃねーかよ」
「―――だって本当の事だろう?」
そう言って顔をぷいっと横に向けてしまった。その耳が赤い。やっぱり照れているんだろう。腕の中の身体が微かに震えているのが、分かったから。
「でもこんなマジな瞬間まで…へらへらは出来ねーよ…」
耳元にそっと囁いてそして強引に自分へと向かせると、その唇を塞いだ。その瞬間腕の中の身体がぴくんっと震えた。


―――誰よりも、大切だから。
だからこそ逆に。逆に突き進めない。
大切に大切にしたいから。
だから強引に、出来ない。
自分らしくないってのは分かっている。
それでも。それでも初めての本気の想いだから。
だから、何よりも大切にしたいんだ。


「――俺の事…怖い?…」
囁かれた言葉に、俺は首を横に振った。本当は少し怖かったけれど…それでもお前が見つめてくる瞳の真剣さと、抱きしめる腕の優しさを信じようと思った。
「…怖くなんかねーよ……」
口から零れるのは憎まれ口ばかりだけど、それでも不破…俺はお前を信じたいんだ。お前の言葉を、お前の腕を、お前の優しさを…信じたいんだ。
「それでこそ、一馬。可愛いぜ」
もう一度唇に口付けられて咄嗟に俺は目を閉じた。甘い、キス。こいつは何時も俺にキスする時に、ひどく優しくするから。優しすぎるくらいに、優しく。
「…ん……」
そっと唇をなぞられて薄く開けば、舌が忍び込んでくる。そのまま自らのソレを絡め取られると、根元からきつく吸い上げられた。
「…んっ…んん……」
息苦しくて、背中に手を廻した。それでも口付けは止まらない。深く、深くなってゆく。何時しかその波に飲まれ意識がぼんやりと溶かされた。
溶かされて、拡散してゆく。唇が痺れるほど口付けられて、やっと開放された。
「…はぁ……」
離れた瞬間に息を大きく吸ったが、それは無意味な行為でしかなかった。ほっとする間もなくその指が俺の衣服に掛かって、そのまま脱がされてゆく。
「怖いか?」
服を脱がしながら、もう一度お前は聞いた。その言葉に俺は『ううん』と一言…告げた。


他人に触れられる事は、恐怖でしかなかった。
幼い頃の記憶が、そのトラウマが俺を怯えさせる。
消したくても消えない記憶。忘れたくても忘れられない記憶。
志魔利の触手の感触が俺の身体から消えることはなかった。
手を滑り、脚を滑り、口に潜り込み…そして俺の身体を貫き……。
あのぬめぬめとした感触が、俺から離れてくれない。

―――だから、不破……
消してくれ。お前の腕で、お前の指で、お前の唇で。
お前の全てで、俺に残る感触を消してくれ。
そして。そして何も考えられなくなるくらいに。

……お前で埋めて…ほしいんだ………


薄い胸に手を触れれば、敏感な身体がぴくんと跳ねる。それを見届けながら不破は、胸の果実を唇で含んだ。
「…あっ……」
一馬の口からは堪えきれずに甘い声が零れる。それを確認して不破は舌で胸の突起をつつきながら、空いた方の手でもう一方の突起を摘んだ。人差し指と中指で摘んでやりながら、舌で音を立てながら舐めてやる。
「…あっ…あぁ……」
小刻みに震える身体。それは恐怖の為なのか、それとも感じている為なのか。不破の脳裏には一瞬疑問が浮かんだが、今更止めることが出来なかった。やっとの事で自分の腕の中へと預けてくれた身体なのだから。そう、やっと……。
過去のトラウマから、他人に触れることを拒んでいた一馬。そのたびに微かに見える怯えた瞳の色。それをやっと。やっとの事でここまで自分へと向けさせた。
―――今この身体を抱かなければ、永遠に心は閉ざされてしまうかもしれない。
「―― 一馬、好きだぜ」
だからもう、止めることは出来ないんだ。


そっと指を身体に滑らせる。
余す所なく触れて、そして唇を落とした。
この指が唇が、触れない個所がないように、と。
自分が知らない場所がないようにと。

―――お前の全てに…触れる……


「…マジで…いいか?……」
細い腰を抱きかかえ、脚を広げさせる。自身が最奥に触れた瞬間、怯えたように腕の中の身体が竦んだ。
「大丈夫だから…俺は…だから……」
それ以上自分の口からは言えなくて、お前は顔を背けてしまう。目をぎゅっとつぶって、羞恥と恐怖から逃れようとしている。
「途中で止めろっても止められねーからな…俺…欲しいから……」
そんなお前の髪を撫でながらひとつ、キスをした。出来る限り優しくしてやるつもりだけど、でも実際抱くのがお前だと思うとそんな余裕もなくなってしまうかもしれねー。現に今だって、情けないほどに俺の分身はお前を求めて息づいている。
―――どんな女とヤッたってこんな風にまでなった事はなかったのに…。
「お前が、欲しいから」
それを合図に俺はゆっくりとお前の中へと挿っていった。その途端身体が硬直して、びくりと跳ねた。
「―――ああっ!!」
先端を挿れただけなのにその眉が苦痛で歪んでいるのが分かる。口から零れるのも悲鳴じみた喘ぎだけだった。
「…一馬…力、抜いて……」
一端動きを止めて宥めるように髪を透いてやる。そうして今の痛みで萎えてしまった一馬自身に指を絡めると、そのまま手のひらで揉みしだいてやる。
「…あっ…あぁ……」
口から零れて来る声が甘さを帯びてくる。そして手のひらの一馬自身も…それを確認して一気に俺は、貫いた。
「…あああっ……」
喉を仰け反らせて喘ぐその首筋に口付けて、ゆっくりと抜き差しを始める。前に添えた手はそのままで。快楽を与えて身体の緊張が緩んだ隙に、その中を掻き乱した。
「…あぁ…あ…ふ…わ……」
耐えきれないのか、お前は彼の背中に爪を立てる。そのまま引っかかれて血が流れてきた。それでも俺は行為を止めなかった。背中の痛みなど、何でもなかった。
「一馬、一馬」
名前を呼びながら、お前の身体をがくがくと揺さぶった。何時しか俺の理性もぶっ飛んでいた。大切に抱いてやりたいという思いは、目の前のその艶やかな表情で見事に打ち砕かれた。
―――手に入れたくて、全てを俺の手に入れたくて。
何時しか俺は自分の欲望のままに、お前の身体に腰を打ち付けていた。


俺の身体の中に、熱い液体が注ぎ込まれる。
その熱さになぜか俺は。
俺は、ひどく安心感を覚えた。

…意識を失う寸前…お前の言った言葉…それを俺は信じたいから…

『愛しているぜ』

…その言葉を…信じたいから……


意識を手放してしまったその身体を抱き寄せながら、不破はバツが悪そうに頭をぽりぽりと掻いた。
「…ってわりーな一馬…俺自制全然効かなかった……」
初めての癖してあれから自分は3回も一馬の中に出してしまった。そこまでする気はなかったのが、あまりにも一馬の顔が色っぽくって不破には止める事が出来なかったのだ。
「でもそれだけ俺がお前に惚れてるって事で…許してくれよ…」
意識のない唇にそっと不破は口付けて、抱き寄せながら目を閉じた。暖かい身体のぬくもりを感じながら、一馬の夢の中を追うように…。

―――その優しい夢を、護るように……



END

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