罪の代償

――――僕は君が、欲しかった。

君の髪に指を絡めて、そして口付ける。
冷たい君の唇に、口付ける。
それは。それはひどく、甘い。

紅い血の、味がする。


漆黒の髪。見掛けよりもずっと細くて、そして。そしてひどく柔らかい髪。
「――― 一馬……」
愛しい君の名を呼んだ。誰よりも大切な君の。誰よりも愛する君の。ただ唯一、僕がこころを奪われた君の名前を。
「…愛しているよ……」
君の髪を何度も指で撫でながら、その唇に口付ける。柔らかい唇、冷たい唇。
―――でも大丈夫、僕がこうしてぬくもりを与えるから。


狂う事とはどういう事なのだろう?
僕は狂っていると言われた。
君の大きな瞳が僕を睨みつけて、そして。
そして一言、
―――お前は、狂っていると……
狂っている?僕は狂っているの?どうして君がそんな事を言うの?
僕は正気だよ、だって。

…だって、こんなにも君を愛しているのだから……


君が、欲しかったから。
君だけを手に入れたかったから。
君を僕だけのものにしたかったから。

『…水貴……』

君の瞳が好きだよ。強い光を放つ瞳が。
真っ直ぐ前だけを見ているくせに。
何処か壊れている瞳が好きだ。
何処か怯えている瞳が好きだ。
―――ああ、全部。
全部、僕だけのものにしたい。


初めに僕は腕を切った。これで君はもう他の人間に触れることはない。
次に僕は脚を切った。これで君はもう何処へも逃げる事はない。

べっとりと血が、僕の頬にひとつこびり付いた。
それを指で掬って口許に運べば。
運べば甘い、味が広がる。じわりと、広がる。
それはなんて甘美な味なのだろうか?

最後に首から切り取った。これで君はもう、彼の名前を呼ぶ事はない。


腕の中に君の頭を抱いた。冷たくなった君を抱いた。
見開いた目は、僕の好きな瞳。大好きな瞳。

―――もうこの瞳は誰にも渡さない。

目玉を刳り抜いて、手のひらで転がした。そしてそのまま口に含んで、噛み砕く。柔らかい感触に、僕は暗い悦びを覚えた。


そのまま僕は散らばった腕を、脚を食らった。
こうして君を僕の中に取り込んでゆく。
僕の中に君が入ってゆく。
これで。これで、ひとつだね。

――――僕達は、ひとつ…だね……


罪の代償。僕が犯した罪。
血塗られた手のひらが犯した罪。
それでも僕は。



…僕は誰よりも、しあわせだった……



END

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