太一の初恋

俺の名は武蔵山太一でごあす。見ての通りのデブでごあす。何時も痩せなければと思っているでごあすが、俺は食べる事と寝る事が、何よりも好きなナイスガイな高校生でごあす。
俺は食べて寝ていられればそれだけで幸せでごあした。それなのに…そんな俺に人生最大の危機が訪れたのでごあす。

『――君まずいね、太り過ぎだ。このままだと非常にまずい事態になるね』

それは拳武館で毎年行われている健康診断の時でごあす。暗殺者足る者健康管理には人一倍精進せよ…とは館長の言葉でごあしたが…俺は副館長派なので無視していたでごあすよ。
…って決して言い訳ではないでごあすよ…俺の忠誠心を見せる為に…で…ごあす……。
そんな何よりも忠誠心と拳武館を愛する俺が、俺がいきなりこんな事を言われる筋合いはないでごあすっ!!

『ま、まずいってどんな事でごあすか?』

俺はおろおろ…いや暗殺者たるもの常に平常心で隙を見せてはいけない…ってこれも館長の言葉でごあすな…俺は副館長派でごあすから、破ってもいいのでごあすね。
なのでかなり不安そうな顔で俺は、医者の顔を見下ろしたでごあす。って普通見上げるのでごあすが…俺は生憎そんなに小さくなかったのでごあすよ。

『そうだねぇ、このままだと脂肪が内臓を圧迫して内臓破裂かな?』

にっこりと爽やかな笑みを向けながら言う医者の首を俺はついつい掴みそうになってしまったでごあす…ってそれはいかんっ!!拳武館は無意味な暗殺は禁止している…ってこれも館長の言葉でごあしたね…だったら俺はこの医者を…と思ったがやめたでごあす。死なれてしまったら俺が困るのでごあすから。

『どうすればっどうすればいいでごあすかっ?!』

不安になって泣きつきそうな顔で言った俺に、医者はあっさりと言ったでごあすよ。本当にただ一言、俺に。

『痩せれば、いいんだよ』

…そしてその日以来、俺は本当に痩せなければならなくなったのでごあす……。


「痩せる方法だとぉ?」
取りあえず俺の大親友(勝手に思っているだけ)の八剣に聴いてみた。八剣は俺と違ってがっちりしているが標準体型でごあす。う、羨ましいでごあす。
「そんなん恋すればいいじゃねーか、ほら壬生を見てみろ」
と言って指を差された先には壬生がいた。確かに細い。大体初登場には『細身の少年』だった。う、羨ましい…俺もっ俺も何時しか言われたいでごあすっ!!!
「って壬生は恋しているでごあすか?」
「んなん見てば分かるだろうが…ちくしょー俺が食う前に…あの忍者が…」
「八剣??」
「いや何でもねーよ、とにかく恋をしろ。切ない恋をすれば痩せるぜ」
「分かったでごあす」
取りあえず八剣の言葉に従ったものの、恥ずかしながら武蔵山太一生まれて一度も恋などした事がなかったでごあす。俺が心をときめかしたものは…思い返せば…饅頭・ラーメン・ステーキに……食べ物以外ないでごあすかっ!!
そんなんではいけないでごあす。とにかく恋をっ!!恋をしなければならないでごあすっ!!
そんなんで俺は初恋を求めて旅だったでごあす(謎)


かと言っても初恋なんて道端に落ちている訳でもなく…俺は…俺は……。
「はぁー」
図体に似合う大きな溜め息を漏らしてしまったでごあす。あ゛あ゛、これが壬生辺りだったら溜め息もサマになるのでごあす。羨ましいでごあす。
ってそんな事はどうでもいい。俺は、俺は恋する相手を探さなくてはいけないでごあ…。
――――ズトンっ!!!!
考え事をしていたせいで俺はバナナの皮に滑って転んでしまったでごあす。でもバナナの皮なんて…何でそんなお約束な物がこんな所に転がっているのでごあすか?
とそんな心の呟きをして、置き上がろうとしたその瞬間…だった。


「大丈夫かい?」


低くよく通る声。太陽の光に反射したさらさらの髪。そして。そして今まで見た事ない美貌。それは…それは…とても。

―――ドキュンっ!!!!

突然俺の胸が跳ね上がったでごあす。跳ね上がったと思った瞬間、どきどき言い出して止まらなくなってしまったでごあす。あ゛あ゛俺ついに太り過ぎで内臓が破裂したのでごあすかっ?!!
「あ、だ、だ、だ、だいじょうぶで…ご、ご、ごあす……」
「そうかい、ならばよかった」
にっこりと一つ微笑うその顔に、俺は…俺は……。
「じゃあ」
「あ、あ、あ、あ、ま、待つで…ご、ごあすーーーっ!!」
一言告げてその場を去ろうとするのを、俺は必死で呼びとめたでごあす。だって、だって、今呼びとめなければ、二度と会えないような気がして……。
「なんだい?」
呼び止められて振り返ったその瞬間に胸キュン…キュンっ?!な、なんでごあすかっ?!これはこれは…やっぱ俺は死ぬのでごあすかっ?!!
さらさらの髪を何気に掻き上げる仕草が、か…かっこいい…そうでごあすっ!!かっこいいのでごあすっ!!あ゛あ゛俺、俺、もうどうしたらいいのでごあすかっ?!!
「あ、あ、あのでごあす」
「だからなんだい?」
ちょっとだけ不機嫌そうに睨むその鋭い視線も…イカスでごあす…あ゛あ゛俺なんかめろめろでごあすーーっ!!!
「な、名前は?」
「名前?ああ、如月翡翠…君はその制服を見る限り拳武館の生徒のようだね」
その言葉に俺は、俺のボルテージはただいまマックス針は振りきれんばかりでごあす。あ゛あ゛俺の学校を知っているなんて…なんか無償に俺…幸せでごあす。
「し、知っているで…ごあすか?」
まさかこれが。これが…『恋』でごあすかっ?!この胸のトキメキが…俺は…俺は…。
「くす、知っているよ」
あ゛あ゛笑ったでごあす。何て眩しいのでごあすかっ?!後ろから光が見えるようで俺もうダメでごあす。気付いたら俺は再び巨体を地面に落としていたでごあす。
「どうしたんだ?」
怪訝そうな顔をして俺に近づいて来る…あ゛あ゛どうしよう、俺は…俺の心臓は破裂寸前もうダメでごあすーーっ!!
かと言っても立ち上がることは出来ないでごあす。俺はすっかり腰を抜かしてしまいそのその…。あ゛あ゛顔が近づいて来るーーっダメでごあすっ!!これ以上っこれ以上は俺はーーーっ!!!!


―――――もう…ダメで…ごあす………。


その時、だった。俺が意識を失いそうになった瞬間、聞き覚えのある声がしたのは…。
「如月さん…それに武蔵山…一体、これは?」
「ああ、紅葉か。いやなんか勝手に転んだらしいのだ」
「そうですか…僕はてっきり…」
「てっきり、なんだい?」
「いえ如月さんが敵と間違えて…」
そこので言って壬生は言葉を止めた。そして少しだけ困った顔をして、笑ったでごあす。それは俺が初めて見た笑顔だったでごあす。ちょっと…びっくりしたでごあす。
「…ってそんな事ありませんよね」
と、そんな壬生の台詞の後に…後に…俺は、聴きたくない言葉を聴いてしまったので…ごあす。


「ああ、僕の敵は君に手を出そうとする輩だけだよ、紅葉」


―――― 一瞬…頭が真っ白になって…そして。そしてもう一度その言葉を頭で反復し終わった後、俺は更に追い討ちを掛けられるシーンを見てしまったのでごあす。
その綺麗な指が壬生の肩に掛かって…そのまま…そのまま抱き寄せたのでごあすっ!!


「き、如月さんっ!」
「別にいいじゃないか、僕らはれっきとした恋人同士なのだから」
「…で、でも……」
「さあ行こうか、紅葉」
「あ、あの武蔵山は…いいんですか?」

「いいんだよ、僕は君以外目に入っていないのだから」


………その瞬間、俺の初恋は終わりを告げた…………


―――そして。
「よかったじゃないか、随分と体重が減って…努力したんだねぇ」
医者の言葉に俺は素直にこくりと頷けなかったでごあす。た、確かに俺は痩せたでごあす。痩せたのでごあすが…。
「それにしては随分と落ち込んでいるけどどうしたのかい?」
「…俺は…俺その…」

「失恋したので…ごあす……」


そんなんで俺の初恋は一瞬にして終わってしまったので、ごあす。

   


End

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