Sugar Love

「…本当にここ、通って歩くのかよ…」
黒崎は自分より一歩前を歩く劉のシャツをくいっと引っ張ると、そのまま彼の足を止めた。
「何や、当たり前やろう?肝試しなんだから」
半ば飽きれたように答える劉に、けれども黒崎の目は真剣だった。おまけに少し潤んで見えるのは劉の気のせいだろうか?
「だ、だけど…」
そのまましっかりシャツを掴んで離さない黒崎に、しょうがなく劉は頭をぽんぽんと叩いてやった。何だか自分の方が年上のような気がするのは、気のせいだろうか?
「なんや、怖いのか?隼人」
「こ、怖くないっ!俺は正義のヒーローコスモブラックだっ!お化けなんて全然怖くないぞっ!」
「のわりにわいのシャツしっかり掴んでんのは、何でや」
「…あ、これは…その…」
耳まで真っ赤になりながら俯く黒崎に、つい劉は苦笑を浮かべてしまう。どうしてこんなにこいつは可愛いのか。そう思ったら無意識に口許がにやけてきた。
「怖いんやろー?」
「怖くないっ!」
「だったら手、離してくれへんか?」
「………」
黒崎の目が恨めしそうに劉を見つめる。けれどもその手は劉のシャツを掴んだままだった。その仕草だけで劉は完敗した。本当にどうしようもない程、可愛くて。
「まあ、ええわ。わいは正義のヒーローコスモイエローやし、可愛い子ちゃんを護るのは、ヒーローの役目やしな」
「…ちょっと待て、劉。可愛い子ちゃんって誰の事だ?」
「そりゃー今わいの目の前でこーやってシャツ握り締めてるお人のことでしょうが」
「…俺は皆の憧れのコスモブラックだっヒーローはつねにかっこいいに決まっているっ!」
「でも今は、隼人やもん」
「…劉?…」
「俺の大好きな、隼人やもん」
そう言って劉はぎゅっと黒崎を抱きしめた。その腕が思いの外優しくて、そして逞しくて。だから。だから少しだけ…怖くなくなった…。

「やっやっぱ引き帰さないか?」
「今更無理や」
明かり一つ無い真っ暗な道で、繋いでいる劉の手だけが黒崎の唯一の手がかりだった。その温もりだけがこの世界の全てのような、そんな錯覚に陥ってしまうほどの。
「だっだって、さっき向こうで何か光った気が…」
「気のせいや、隼人。本当怖がりやなぁ」
「…こ、怖くないぞっ!…絶対……」
「じゃあ手、離していいんか?」
「…う、それは……それは…駄目だ……」
くすくすと聞こえてくる劉の笑い声が、無茶苦茶に悔しい。かと言ってこの手を離される事は絶対に出来ないのだから。
「ほーんま、隼人は可愛いなぁ」
「可愛いって言うなっ!」
「だって可愛ええもん」
手が離されて一瞬黒崎の身体がびくりと硬直する。けれども次の瞬間に抱きしめられた腕の暖かさがすぐに、その緊張を解いてくれたけれども。
「柔らかいなあ、隼人の髪は」
よしよしと頭を撫でてやりながら額に口付けると、再びびくりと黒崎の身体が震えた。そんな仕草にまた劉は笑うと、今度は唇に口付けた。
「…バカ…こんな所で……」
唇が離れると同時に黒崎は劉の胸に顔を埋めてしまう。そんな黒崎が劉には堪らなく可愛くて。
「こんな真っ暗ん中では誰も見てないよ、心配性やなー隼人も」
「う、うるさい。ヒーローたるもの何時も周囲に気を配ってなければならないんだっ」
「周りに気ぃ配るくらいなら、少しはわいにも気、配って」
「……配ってないこと…ないぞ…………」
「ほんまに?」
「何時もちゃんと、心配してるぞっ俺はコスモレンジャーのリーダーだからな。皆の事を心配するのは当然だ」
…あれ、コスモレンジャーのリーダーはレッドでは?そう思いつつも、それを口にするのは止めておく。この事を言うと黒崎がムキになって怒り出すのだ。まあそんな所も可愛いのだが。
「コスモブラックじゃなくて、隼人では?」
「…そ、それは…秘密だ」
その突飛な返答につい、劉は苦笑してしまう。全くらしいといえば…らしいのだが。
「ヒーローの正体は何時でも秘密なのだ。だから黒崎隼人の心は秘密だ」
「でもわいは、隼人のこと好きやでー。大好きや」
「ヒーローたるもの軽々しく気持ちを見せてはいかんっ!」
「でもわい、隼人が好きやもん」
「…う…」
「大好きや」
そう言われてまた、口付けられた。決して上手いとは思えないキスでも、それでも黒崎の心は溶かされてゆく。それは他の誰でもない劉からのキス、だから。
「…俺も……だぞ……」
黒崎は劉にしか聞こえない声でそっと。そっと、告げた。

…俺も、好き…だぞ……

素直じゃない自分の、精一杯の素直。
「うん、分かってる」
こつんと胸に頬を預ける黒崎の髪を撫でながら、劉はひどく幸せな気持ちになった。本当に我ながら単純だが、こんな些細な事で幸せになれるなら…毎日はひどく楽しいものに思える。
「分かってる」
真っ暗な中でも劉は真っ直ぐに黒崎を見つめる。そして黒崎も迷わずに劉を見つめ返した。それだけで全部、伝わるから。
「最高やわ、やっぱ」
二人で一緒にいられるなら、絶対に毎日が楽しいと思えるから。

「OH!隼人達遅いネーっ」
「ま、まさか俺っちの黒崎が悪の手先にっ?!」
「ノンノンっ隼人はボクのラバーズね」
「お前なんかにやれるかっ?!俺っちと黒崎の歴史には誰も及びはしないっ!」
「そんなのノー・プロプレムね。愛さえあれば時間など関係ナイね」
「…全く……」
とんちかんかなアランと紅井のやり取りを聞きながら、桃香は深いため息をつきながら、一言。
「今頃ふたりで、いちゃっいてんじゃないの?」
と、二人に痛恨の一撃を加えたのだった。

そしてその言葉が事実だった事を、後にイヤと言う程理解させられるのだった…。





End

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