ふたり。

ふたりで、いる事。
それが当たり前の日常のように。
まるで空気のように、自然に。
自然に、ふたりで。
ふたりで、いる事。

『愛してるで、隼人』

何時も何時もお前は俺にそう言う。真っ直ぐな目を向けながら。
物怖じせずに、照れもせずに。何時も何時も俺に言う。
そんなお前に俺は恥かしくて、どうしようもない程に恥かしくて。そして素直になれない。
本当は俺も好きだって言いたいのに。変な羞恥心とプライドと、そして。そして頬まで上ってしまった火照りのせいで、俺は。
俺はどうしても言葉を告げることが、出来ない。

『誰よりもわいは、隼人が大切や』

反らされる事のない視線。お前は何時も痛い程に真っ直ぐだ。
俺が言えない言葉を全て先回りして、そして。そして言葉をくれる。
俺がお前に何も返せなくても。何も答えられなくても。
その優しい笑顔を向けてくれて、そして。
そしてそっと、俺を抱きしめてくれる。優しく、どうしようもない程に優しく。

「…劉……」
「ん?どないした?」
「…な、何でもない…ただ名前を呼んだだけだ……」
「はは、隼人に呼ばれるなら何度でも呼ばれたいわ」
「なんだよ、それ」
「わいは隼人の声ならずっと聴いていたいんや」
「じゃあ…劉のバカ……」
「ああ、バカやもん。わいはバカみたいに隼人に惚れてるもん」
「…う…じゃあ…劉の…えっち……」
「だってわいは隼人の全部が好きなんやもん。だから何時も欲しいと思っている」
「……じゃ…じゃあ……」
「じゃあ、なんや?隼人」
「……な…何でもない…ぞ……」

「じゃあキスしような」
「え?」
「ほら隼人、目ぇ閉じてくれや」
目を閉じる前に、唇が。そっと降りて来た。

言葉で伝えられないのならば。
声に出す事が出来ないのならば。
こうしている間だけでも。こうやっている時間だけでも。
素直になれたらな、と。
少しでいいから俺の気持ちが伝わったらならと。
そんな事を、思った。

『瞼、震えているで』

くすくすと頭上から降りて来る声。何処までも優しい声。
このままこの声に埋もれるのもいいな、なんて思ったから。
そして本音は凄く恥かしかったから。
俺はしばらく目を開く事が出来なかった。
目を閉じたままでお前の胸に顔を埋めて、そして。
そしてその命の音を、感じた。
…とくん、とくん、と言う…その命の音を……

『暖ったかいで、隼人』

何時しか腕が俺の背中を包み込んでいた。不器用でぎこちないけど何よりも優しい腕。
俺はこいつの飾らない優しさが大好きで。決してスマートでもカッコ良くもなくても、それでも一生懸命な。一生懸命なこいつが大好きで。
変だな、俺。カッコイイヒーローに何よりも憧れていたのに。強くてカッコイイヒーローに憧れていたくせに。
今俺の目の前にいるヒーローは…全然カッコ良くなかったりして。スマートじゃなかったりして。けれども。
けれども何よりも優しい、から。
何よりも誰よりも優しい俺だけのヒーロー、だから。

「…お前も暖ったかいぞ……」
「だって隼人を抱きしめているんやもん」
「俺は湯たんぽか?」
「ちゃう、大好きな隼人を抱きしめているから。だから熱いんや」
「ってどーしてお前はそう臆面もなく」
「隼人の前ではわいは何時も正直やからな」
「…だからって時と場合があるだろうがっ」
「ダメ、恋する男は盲目やから。だから回りなんて見えへんの」
「……劉………」
「なんや、隼人」
「…バカ……」

「バカでもええ。こうやって抱きしめていられるならば」
「バカ劉」
「愛してるで、隼人」
そう言ってまたお前は盗むように、キスをくれた。

本当は俺、お前のキス大好きなんだ。

『手、繋いでええか?』

そう聴いたと思ったらお前は俺の指に自分のそれを絡めてきた。その瞬間、俺の指先がほんのりと熱くなる。
…お前に…気付かれた…かな?
でもお前は何も言わない。俺が何も言えないのを分かっているから。だから、言わない。その代わりにお前は笑って。

『隼人と手が繋げて、幸せや』

とひまわりみたいな笑顔を向けて俺に言った。
俺は照れくさくてひとつ、お前の頭を叩いた。

こんな小さな出来事も。こんな些細な事でも。
ふたりで。ふたりで積み重ねて。そして。
そして、それが日常になって。
何時しかふたりの自然になれたらと。

何時しか、ふたり。に……




End

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