蔵
俺がここに閉じ込められてどのくらいの時間が経ったのだろうか?
もう俺には分からねー…。ただ俺は。
俺はこの止まった時間の中であいつを待つ事以外、何もねーんだから。
カチャリと音がして、扉が開けられる。重たい蔵の扉が。俺はその音を待ち続けていた。ずっと、ずっとお前が来るのを、待っていた。
「―――村雨」
頭上から降って来る声に、俺は淫らな目を見上げて答えていた。そうこれから起こる行為を思い、俺はもうすでにぞくぞくとしていた。
「イイ子にしていたかい?」
「…如月……」
お前に近付こうと動けば、繋がれた鎖の音がカシャンと響く。この音こそが俺がお前のモノだと言う証。お前のモノ…だと言う…。
「くす、イイ子にしていたみたいだね」
「…あっ……」
まだ触れてもいないのに俺自身は微かに形を変化させていた。それを気付いたお前が俺のソレを軽く指で弾く。お前の綺麗な指が俺のソレを。
「―――こんなにして…僕を待っていたのかい、可愛いね」
お前はご褒美とばかりに俺の唇を塞ぐ。俺はその口付けに貪るように答えた。
「…んっ……」
薄く開いた唇をこじ開けてお前の舌が侵入してくる。まるで、生き物のようにそ俺の口内を蠢いた。眩暈を起こしそうなほど、巧みなディープキス。まさぐるような激しさで俺の口内を犯していく。
「…はぁっ……」
飲みきれなくなった唾液が俺の口元を濡らす。てらてらと、唾液の線が夜の闇の中で光っていた。
「飲み切れなかったのかい?悪い子だ」
お前が零れた唾液を舌で舐め取る。ぴちゃぴちゃとわざと音を立てながら。その音が生々しく俺の耳に入ってくる。それだけで。それだけで俺は…。
「…如月……」
俺は薄く瞳を開いてお前を呼んだ。それに答えるようにお前は俺の身体を冷たい床に押し倒す。俺の火照った身体と対照的な冷たい床。
「しょうがないな…くす」
「…あっ…」
お前の指が彼の胸の突起を掴む。するとそれはみるみる内にピンッと張りつめた。指で扱いたり、摘んだりされて俺は堪らず身体を震わす。
「…やっやだ…そこ…あぁっ」
「君はここ、弱いんだよね。こうするだけで…」
「あぁっ…ん…やだっ…」
愛撫を与える前からそれなりの角度と大きさを持っていた俺自身にお前は触れる。それをくすりと笑って見つめながらお前は俺の耳元で囁いた。
「もう、こんなだよ」
お前の手が俺自身を掴むと、そのまま綺麗な指が淫らに絡みつく。
「あふぅっ…あぁっ」
「君は本当に淫乱だね」
「あぁっん…あぁぁ…」
「面白いくらいにね」
お前の手の動きが一層激しくなると、一端手の動きを止める。それがじれったくって自身を指に押し付けたら、お前は俺自身の先端部分をきゅっと掴んだ。
「…あっ、いっいやだ…」
「何が、いやなんだい?」
微笑さえ浮かべてお前は尋ねる。俺はささやかな抵抗とばかりにお前を睨み付けた。けれどもそれを見てもお前はただ口許だけで笑うだけだった。
「僕に逆らうのかい?まあ従順なしもべなんて面白くないけれどね」
「…あぁっ……」
俺の言葉は喘ぎになって声にならない。再びお前の手が淫らに絡みついて来る。しかしそれは俺が昇りつめる前に意地悪くその指は止まってしまう。
「…あぁぁ…ん…あ」
狂おしい程の焦れったい感覚に俺は耐えきれず、首をいやいやと振った。絶え切れない…早く…早く…。
「イキたいかい?村雨」
「ぁぁ…ん…」
「イキたいだろう、村雨」
呪文のように繰り返すお前の声に、俺は溶かされそうになる意識をつなぎ止めるのに必死だった。しかしこの快感の海の中に呑まれていく自分を止める術を知らない。
「…あっぁぁ……」
「だったら、素直にそう言うんだ」
「あ、…ああ…イカせろよ……」
「くす、よく出来ました」
お前のその言葉と同時に、その手が俺自身を激しく扱いた。
「ああっ――!!」
既に、脈を打ち始めていた俺自身はその強い刺激ですぐにお前の手の中に果てた。
室内にはまだ荒い俺の呼吸音だけが響く。獣となった俺を、静かに冷たく見下ろすお前。それだけが俺の世界の全てになる。
「―――村雨…」
何もしていないのに常に適度な硬度を持ったソレをお前は俺の口許へと持ってゆく。
「…あ…」
冷たい支配者の笑みを浮かべたお前は、俺の髪を掴む。そしてそのままお前自身で俺の唇をなぞってゆく。
「欲しかったら、ちゃんと舐めるんだよ」
「…き…さらぎ……」
逆らえない事は分かっている。俺はお前の奴隷。お前の望むままに命じられるままに動く人形。でもそれは。それは俺自身が望んでいた事。
「―――んっ!」
口の中にお前を含む。喉にまで届くその大きさに一瞬俺は顔を顰めた。苦しくて、息が出来ない。
「ん…う…ん…」
舌を使おうにも口の中で動きがとれなくて、ただ唾液だけが口元を伝う。それでも俺は夢中になってお前自身をしゃぶった。欲しかったから。お前が欲しいから。
「…は…う……」
苦しさの為に目尻から涙が浮かんでくる。けれども俺は決して止めなかった。こうして口の中わ犯されるだけでも俺は…俺自身はまた立ち上がり始めている。
「…あっ!…」
どくんどくんと、俺の口の中に白い液体が流れる。その液体を俺は必死になって飲み干した。けれども、飲みきれない液体が口元を伝うのを止められなかった。
俺自身はその行為によってまた勃ち上がっている。するとそれを見通したようにお前はせせら笑った。
「君は、口に入れられると感じるんだね」
「あっ」
すっとお前の手が延びて俺自身を握る。まだ愛撫を与えられてないのにそれは確かに熱くなり始めていた。
「ほら、こんなになっている」
「あっぁぁ…」
「本当に君はどうしようもないね」
「ああっ!」
いきなり俺自身を愛撫していたお前の指が最奥の部分を抉った。抉って淫らに中を掻き乱す。
「…あっあっあっ……」
引いたり突っ込んだり、まるで生き物のように蠢く指。お前の綺麗な、指。
「――いやあっ!」
お前が俺の内壁を爪で荒々しく引っ掻いた。その痛みを伴う刺激に俺は堪えきれずに身体が震えさせ悲鳴を上げる。しかしお前はお構いなしに俺の中を傷付け、楽しんでいた。
「ぁぁ…あっ…」
「そんな声を出して…イイんだね…村雨…」
「あっ…あ…ぁぁ…ん…」
俺は答えられない。答えられなかった。声は激しい喘ぎとなって、言葉を書き消させる。
「イイんだね。君のココ、こんなにも僕の指を締めつけているよ」
「あっ!!」
お前指が引き抜かれたのかと思うと、今度は指が二本になっていた。指はそれぞれ別の動きをして、俺の中を蠢く。内壁を押し広げられて、俺はまたお前の指を締めつける。
「もう我慢出来ないのかい?」
締めつける俺の内部を感じてお前はせせら笑う。でももう俺は目尻に涙を溜めて喘ぐだけだった。喘ぐしか、出来なかった。
「しょうがないなぁ」
「ああっっ!」
急にお前の指が引き抜かれ、遠くなっていた意識が現実へと戻される。けれども快感の火種が燃え上がってしまった身体は、この状態で耐える事など出来ない。縋るような瞳で俺はお前を見つめた。
「…きさら…ぎ……」
「―――立つんだ、村雨」
全てを見透かした様な瞳でお前は俺を見る。そしてそのまま手を引っ張ってその場に俺を立たせる。けれども俺の両膝はがくがく揺れてうまく立てない。
「立てなくなる位感じているんだね、本当に君は…」
そう言うとお前は俺のくっきりと浮かび上がった背骨をなぞる。それだけで俺の身体はぞくりと、した。
「…あ…ん…」
俺はふらふらと立ち上がりながらお前を跨ぐとそのままそそり立つお前のソレに腰を降ろした。
「ああっ―――!!」
お前が俺の腰を引っ張って、そそり勃つ自身を俺の最奥に突っ込む。ずぶりと音を立てながら、俺の中に挿ってくる。
「ああっあっあっ」
熱く硬いソレが俺の中を犯してゆく。身体を2つに引き裂かれるような痛みが、逆にどうしようもない程の快楽へと摩り替わってゆく。
「あ…あ…ん…ぁ」
「君は締め付けだけは、悪くない」
「ああ…ん…あぁ…」
俺は自分から腰を振っていた。お前か欲しくて、欲しくて、自分から淫らに腰を振る。そんな俺を。そんな俺をただお前は冷たい瞳で見ているだけ。身体を貫くソレとは対象的にただ冷たく俺を。
「ああああっっ!!」
意識が途切れる寸前、俺は悲鳴じみた声を上げて…そしてお前が俺の中に注がれている瞬間を感じた。
逃げられない、逃げようとも思わない。
こうして鎖に繋がれて、お前に犯される日々。
けれどもそれは。それは俺自身が望んでいた事だから。
―――俺自身が、望んだ事だから……
End