SWEET&SWEET
はちみつよりも、甘い。君の、キス。
「どうしたの?祇孔」
覗き込んできた龍麻の瞳は、子犬みたいに大きくてきらきらしてる。村雨はその好奇心いっぱいの瞳に苦笑を漏らしながら、龍麻にぽいっと飴玉の袋を渡した。
「・・ん、これ・・・えっ?・・・」
その差し出された袋のパッケージを見た龍麻の頬がほんのりと、赤く染まる。その仕草が村雨には堪らなく、可愛い。
「如月のやろーがくれた。自分は試したから俺にくれるだと。先生も、食べてみろや」
「・・食べてみろって・・・」
そう言われて素直にうんと言える代物ではなかった。そのパッケージにはでかでかと「えっちをしたくなる飴」と、書かれていたのだから。
「たまには先生から、誘ってくれたら嬉しいぜ」
その言葉に真っ赤になって俯いてしまった龍麻に、村雨の手が伸びてくると、そのまま抱きしめた。大きくて優しい村雨の暖かい腕。その中にいられるだけで、龍麻はとても嬉しくなる。
「・・こんなの・・食べなくたって・・・」
ぎゅっと飴の袋を握り締めながら、龍麻は呟いた。恥かしすぎてまともに村雨の顔が見られないらしく、胸の中に顔を埋めてしまった。そんな所もまた、堪らなく可愛いのだが。
「・・食べなくったって・・俺は・・祇孔が・・・」
「ん?先生。俺がどうした?」
龍麻は耳まで真っ赤になっていた。そのトマトみたいに真っ赤になった耳が美味しそうで、村雨は軽くその耳を噛んだ。その途端、ぴくりと龍麻の身体が跳ねた。
「・・何時でも・・祇孔と・・こうして・・・」
それ以上恥かしすぎて言えないのか、龍麻は益々顔を埋める。お蔭で龍麻には、見えなかった。今村雨がどんなに幸福な顔をしているのかを。でも。
「・・俺もずっと・・先生と、こうしていたいぜ・・・」
でも、その声で。その声の響きだけで。龍麻には村雨の表情が手に取るように・・分かったから。
マシュマロよりも、柔らかい。君の、唇。
・・・村雨のキスは、何時も、優しい。
普段のちょっと乱暴な口調やぶっきらぼうな態度からは想像出来ない程、彼のキスは優しい。龍麻は村雨に口付けられるだけで、それだけで頭の芯から、溶けてしまいそうになる。
「・・んっ・・・」
ぱたんと、音がして龍麻の握り締められていた飴の袋が床に落ちた。村雨は龍麻を抱きしめながら器用にそれを拾い上げると、いったんキスを止めてその飴をひとつ口に含んだ。
「・・祇孔?・・・」
キスを止められてちょっと不満なのか、龍麻の目が上目遣いに睨み付けてる。本当にこんな所など、どうしていいのか分からない程可愛くて堪らない。
「・・ほら、先生・・」
村雨の口の中で小さくなった飴が、口移しで龍麻の中に放りこまれる。その飴の味は、村雨みたいに甘かった。
「これで先生と俺は、同じ気持ちだ」
「・・祇孔ったら・・・」
くすくすと笑い出した龍麻の顔を見ながら、村雨も目だけで笑った。龍麻にしか見せることのない・・優しい瞳で。
こんぺいとうよりも、綺麗な。君の、瞳。
「・・あっ・・・」
衣服を剥がされ胸の突起を口に含まれると、龍麻の口から耐えられずに甘い吐息が零れた。
「・・あっ・・ん・・祇孔・・・」
ほんのりと桜色に色づいたそれは、村雨の舌でたちまちぷくりと立ち上がる。それを尖った舌でつついてやると、面白いように龍麻の身体が跳ねた。
「先生の身体、素直だな・・可愛いぜ・・」
「・・バカ・・何言って・・んっ・・・」
胸から離れた唇が、龍麻の唇に重なった。それはたちまち深い口付けへと変化する。
「・・んっ・・んん・・・」
村雨の指が、龍麻の身体を滑る。首筋から鎖骨、そして胸へと。張り詰めたそれを意地悪く愛撫すると、その指はわき腹そして腰へと、移動していった。そのたびに指先は的確に龍麻の性感帯を刺激してゆく。
「・・んっ!」
村雨の指が龍麻自身に辿りつくと、そのまま指を絡めた。その形を指で辿り、先端部分を丹念に愛撫する。
「・・んっ・・んん・・ふ・・・」
唇が塞がれている為、龍麻は声を出す事が出来ない。甘い吐息は全て、村雨の口中へと閉じ込められている。
「・・ふぅ・・・んっ・・・」
村雨の指先が龍麻のそこから先走りの雫を感じて、いったん愛撫を止めた。そして唇を開放してやる。
「・・し・・こう・・・」
快楽の涙が、龍麻の目尻を伝う。その瞳は開放を求めて媚びているように見えた。その瞼に、村雨はひとつ、キスをする。
「先生、今日は俺達一緒なんだろ?だったらイク時も・・一緒に・・行こうぜ・・・」
ミルクよりも、蕩ける。君の、声。
「・・あっ・・・く・・・」
村雨の指が龍麻の最奥へと忍びこむ。狭すぎる龍麻のそこは何度村雨を受け入れても慣れる事がなかった。
「・・くんっ・・・」
そんな龍麻を気遣ってか、村雨の愛撫は丁寧だ。その指が馴染むまで、何度でも村雨は抜き差しを繰り返す。
「・・くぅ・・ふう・・ん・・・」
声に艶が混じってきた頃、村雨は指の本数を増やした。その勝手気ままに動く指先に、龍麻の意識が翻弄される。
「・・ふぅ・・ん・・あ・・・・」
「先生、そろそろいい?」
耳元に息を吹き込むように囁かれ、龍麻の瞼が震えた。その低くてどこか官能的な村雨の声は・・何時も龍麻の身体を刺激する。
「・・きて・・祇孔・・・」
両手を村雨の広い背中に廻しながら、龍麻は自分の気持ちを村雨に
精一杯告げた・・。
角砂糖よりも、溶ける。君の、身体。
「・・あっ・・あぁ・・・」
指とは比べ物にならない異物感の巨きさに、龍麻の綺麗な眉が歪む。そんな龍麻を慰めるように、村雨は全身にキスのシャワーを降らした。
「・・あぁ・・あ・・・」
「・・痛いか?・・先生・・・」
濡れた龍麻の前髪をそっと掻き上げてやりながら、村雨は尋ねた。こんな時の彼の声は、切なくなる程優しい。
「・・平気・・祇孔のだったら・・俺・・・」
「・・・先生?・・・」
「・・俺・・痛みすらも・・嬉しい・・・」
この痛みすらもふたりを繋ぐ絆だとしたら。ふたりの気持ちを繋いでいるものならば。
・・・痛みすらも、悦びに変わるから・・・。
「・・先生は・・俺を喜ばすのが・・本当に上手いな・・・」
「・・・だって・・俺・・お前が・・好きだもん・・・」
「俺もだぜ、先生。俺には先生だけだ」
「・・祇孔・・好き・・・」
「俺もだ、先生」
「・・あい・・してる・・・」
「ああ、俺も。俺も先生を愛している」
その言葉を実証するように。ふたりは同時に昇りつめた・・・。
・・どんな砂糖菓子よりも・・甘い。ふたりの、関係。
「この飴は、先生には利いたみたいだぜ」
村雨は袋を開けると、再び龍麻の口の中にその飴玉を放りこんだ。
「・・むっ・・どうしてだよ」
「・・そりゃー・・・」
「・・先生、何時もより・・気持ちよさそうだったからな・・・」
・・・耳元で囁いた村雨に。
龍麻は目の前の枕を彼の顔面にぶつけた。その顔は本当にトマトみたいに、真っ赤だった。
・・・誰にも、負けない。ふたりの、関係
End