うそつき

如月は凄く、うそつきだと思う。
だってあいつは俺の事を『可愛い』って言うんだ。
こんな俺の何処が可愛いって言うんだろう?何処を取ったらそんな言葉が出てくるのだろう?
だから如月は、うそつきだ。
今日もあいつは俺にうそをついた。
俺が如月との約束の時間に一時間も遅れていったのに、あいつは。
あいつは俺を見て、にっこりと微笑う。そして。
そして言うんだ。

『よかった、忘れていたと思っていたよ』

…バカ…俺がお前との約束を…忘れたりする訳ないだろう…
絶対あいつは分かっている。なのに俺を怒らない。
…ずるいと、思う。
如月は何時だってずるい。俺がどんなに八つ当たりしたって、拗ねたって。怒ったって。
あいつは微笑ってる。
俺を包み込むような優しい笑顔で何時も俺を見ている。
本当はそんな笑顔…欲しくないのに。
俺が八つ当たりしたら『バカ』って言えばいいのに。
俺が拗ねたら無視すればいいのに。

…俺が怒ったら、あいつも怒ればいい……

なのにあいつは何時も俺の前では微笑っている。何時だって、どんな時だって。
…ズルイよ…そうやってお前は俺に自分の感情見せないで、俺だけひとりイライラして。
俺だって、お前の事は何だって知りたいのに。お前は何一つ教えてくれないから。
…だから俺…不安になるんだ……

「龍麻」
如月の、声。少しトーンの低い心地よい声。
「なんだよ」
俺は少しぶっきらぼうに答えてみた。仕方ないよな…俺…お前のせいで落ち込んでいるんだから……
「いや、ただ顔が見たかっただけだよ」
そうやってまた、微笑う。優しい全てを包み込んでくれる笑顔で。
「俺の顔なんて、つまんねーよ」
思いっきり拗ねた口調で、顔まで不貞腐れながら言ってみた。けれども如月はやっぱり微笑っている。
「いいや、龍麻の顔は可愛いからな。僕は君の顔ならば一日中見ていても飽きない」
「二日見たら、飽きるかもよ」
「いや、龍麻のその綺麗な瞳も鼻も口も何日見ていても全然飽きる事はない」
「でもそんなに俺の顔だけ見ていたら、他の事何にも出来なくなっちゃうだろう?」
「構わないよ。龍麻の顔を見ていられるなら食事も睡眠もいらない」
「バカっ!!」
俺は思わず叫んでしまった。だってこいつがあんまりにも変な事を言うから…。
「どうしてバカなんだい?僕は龍麻さえいれば他には何もいらないよ」
「だってお前そんな事したら死んじゃうだろっ?!俺、如月が死ぬのは絶対にイヤだからなっ!!」
「…龍麻……」
また、如月が微笑う。何時ものように。でも。
でも、何だかちょっと…違う……
「可愛いよ、龍麻」
そう言って俺を抱きしめる。その腕はひどく、優しくて。優しくて心地よくて、そして。
そしてひどく、暖かくて。
俺は何だか眠りたくなってしまった。あまりにもその腕の中が気持ち良かったから。でも。
でも、眠らない。
…だってさっき見せてくれた如月の顔が、何時もの笑顔とちょっとだけ違ったから。
「龍麻の髪の毛は柔らかいな」
如月の大きな手が俺の髪を優しく撫でる。それはとっても。とっても、気持ちがいい。
あんまり気持ち良くて、やっぱり俺は眠たくなってしまった。

…俺が如月の腕の中でうとうととし始めた頃。
『龍麻、愛しているよ』
と、如月の声が聞こえた気が、した。
あいつはうそつきだけど。
…この言葉は、信じようと思う……

だって俺も如月が…大好き…だから……






End

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