告白
どうして、生きているのだろうか?
どうして俺は生きているのだろうか?
こんなになってまでどうして?
どうして、生きている?
他人なんて、どうでもいいだろう?
所詮誰も気付きはしないんだ。
どうせ誰も分かりはしないんだ。
こんな風に俺がこの街を救った事を。
誰一人、気付きはしないんだ。
仲間。
仲間だと奴らは言う。
大切な仲間だと。
俺達は大切な仲間だと。
けれども。
けれどもそれはただの自慰行為じゃないのか?
もしも俺達がこんな。
こんな特殊な環境で出逢わなかったならば。
出逢わなかったならば俺達は。
こんな風に仲間だと呼ばなかったんじゃないのか?
所詮人は独りだ。
生まれてくるのも独りなら、死ぬのも独りだ。
ずっと一緒なんて、そんなの幻想でしかない。
ずっと友達だと。ずっと好きだと。
そんな思いは何時か風化して、そしてただの『想い出』になる。
その瞬間の一番の思いは、永遠に続く事はないのだから。
俺、頑張ったよ。
黄龍の器として。
俺は頑張ったよ。
辛かったよ。
凄く凄く辛かった。
何で俺なのかと。
何で俺じゃないといけないのかと。
いけないのかと。
だって、誰だっていいじゃないか。俺じゃなくても別の人間でも『黄龍の器』だったならば。
―――本当は黄龍の器になんてなりたくなかった。
俺は緋勇龍麻だ。
それ以外の何者でもない。
それ以外のものになんてなれはしないのに。
廻りの『仲間』達が。
廻りの『人間』達が。
俺を黄龍の器を強いる。俺の外堀を埋めてゆく。
本当の俺の。俺の壊れそうな心は。
何時しか凍らされ、そして砕かれた。
「…龍麻……」
砕かれたこころを、救ったのはお前。
その破片を拾ったのは俺のもう一つの魂。
「…龍麻、僕が君を護る…」
もう独りの黄龍の器。ああ、そうだ。
そうだお前だけが、俺の心を知っている。
俺の壊れた心を、知っている。
「…僕が全てのものから、君を護るよ……」
抱きしめる腕の優しさに、俺はそっと目を閉じた。
その包み込む腕の優しさに初めて。
初めて俺は、眠れるような気がした。
「僕は独りで、君も独りだ…龍麻…だから…」
うん、壬生。そうだね、壬生。
「…きっと埋め合えるよ……」
お前だけが、俺を。俺を満たして埋めてくれる。
ただ独り、お前だけが。
腕を廻して、そしてお前の唇を受け止める。
キスは優しい。そして哀しい。
切ない程の口付けの雨に。
俺は何時しか瞼を震わせた。
お前の腕に抱かれて。
お前の指を、熱さを受け止めて。
俺は初めて、泣きたいと…そう思った……。
誰も俺の孤独には気付かない。
誰も俺のこころには気付かない。
同じ魂を持つ、お前以外には。
「…壬生…壬生…」
「…龍麻……」
「…お前だけ…お前だけ…いてくれ…」
「…龍麻……」
「…緋勇龍麻のそばに……」
「うん、龍麻。そばにいるよ。僕だけが君の」
「君のそばに」
惹かれ合う魂。
焦がれ合う魂。
決してひとつには、なれない。
ひとはひとつにはなれない。
それでも。それでも。
永遠は何処にもない。想いは何時しか消えてゆく。それでも。
指を絡め。
舌を絡め。
仮初めのひとつになって。
―――俺達は、ただひとつの優しい夢を見る。
ただひとつ。
愛と言う名の、優しい夢を。
End