ふたりの日常

―――何よりも、大切な『ふたりだけ』の時間。


「ねー壬生。アイス食べようよー」
龍麻は自分の一歩先を歩く壬生のシャツをくいっと引っ張った。そのお陰で、壬生はその場に立ち止まらなくてはならなくなってしまったが。
「全く…貴方は…。さっきパフェ食ったばかりでしょうが」
呆れ返った壬生がくるりと振り返って、龍麻の髪をくしゃっと掴むと、溜め息混じりに言った。そんな彼に上目遣いで龍麻は。
「だってー暑いんだもんっ。こんなの家に帰る前に干からびちゃう」
不覚にも壬生はぷーと膨れた龍麻の頬を可愛いなどと思ってしまう。この時々見せる子供のような仕草が。
「甘い物を食べると、かえって喉が乾くだけですよ」
「う〜っ」
つんっと尖らせた唇も可愛い。思わず壬生はふと、優しい顔をした。普段の彼からは想像もつかない程の優しい顔を。
その瞬間、龍麻は耳まで真っ赤にして俯いてしまった。
「…ずるい……」
その呟きはやっと壬生の耳に届く程の小さい声だったけど、ちゃんと聴こえていたら。
「どうしたんですか?」
大きな手をぺたんと龍麻の頬に重ねて、顔を自分に向かせようとする。しかし益々顔は真っ赤になって、俯いてしまう。
「…やっぱ…ずるい……」
「どうしてですか?」
―――優しい、声。こんな声を聴けるのはこの世でたったひとり、自分だけ。
「……壬生が、カッコよすぎるから…」
「貴方の瞳に映る僕が、ずっとそうであれば嬉しいですね」
その言葉に恥ずかしくなって、ぷいっと龍麻は背後を向いた。そしてすたすたと歩いていってしまう。そんな彼にくすっとひとつ微笑って、壬生は龍麻の後を追った。


二人は龍麻の自宅であるマンションの一室に戻ると、さっそくテーブルの上に買ってきた荷物を置く。ドサッと思い音が響く。
夏の太陽は容赦なく大きな窓から照りつける。それが眩しくて龍麻はカーテンを閉めると、そのままお気に入りのソファーにごろん、と寝転がった。
その間に壬生は買ってきた物をきちんと整理をして、龍麻のいるリビングへと戻ってくる。
「…壬生…」
それを確認すると龍麻は子猫みたいな甘えた声で彼を呼んだ。答えるように壬生は近づいて、そっと抱きしめてやる。
「あったかい、壬生」
くすくす笑って龍麻はその背中に腕を廻す。細くて白い腕。龍麻は日焼けを全くしない体質だった。
「―――暑いのではないのですか?」
少し意地悪っぽく言った壬生の背中を龍麻はギュッと摘む。でも壬生は少し顔を歪めただけで、また優しい顔で微笑む。
「いいの、壬生の暖かさはとっても心地いい」
ぺたんっとその胸に顔を埋める。とくんとくんとその心臓の音が耳に届く。彼の心みたいに、優しい。
「…龍麻……」
壬生の手が龍麻の顎を捕らえると、そのまま自分に向かせる。そしてそっと、口付ける。
「…ん……」
甘い甘いキス。龍麻の全部を溶かしてしまうような。それは自分の知っている物の中で一番甘い。アイスクリームよりもチョコレートパフェよりも、ずっとずっと甘い。
「龍麻」
キスの後の耳元で囁くお前の声が好き。だからずっと聴いていたくて目を閉じて、お前に凭れ掛かる。そんな俺の髪を優しく梳いてくれる手が、大好き。そして。
「―――愛していますよ……」
いつだって、龍麻が一番ほしい言葉をくれた。そして大きくて暖かな手が、そっと龍麻の頬に重なる。そしてゆっくりと、唇が降って来る。
「…ん……」
しっとりと唇が重なる。優しいキス。壬生の心と同じで。優しい、優しい、キス。
「…あっ……」
壬生の唇が龍麻のそれから首筋のラインへと移動する。そうする事で、その白い肌が微かに朱に染まってゆく。
「…やっ…待っ…」
壬生の手が鎖骨へと辿り着くと、彼のTシャツを託し上げる。その手を拒むように龍麻はその手を掴んだ。
「…龍麻?」
鎖骨から離れると壬生は龍麻の顔を見つめる。そんな壬生に龍麻は目尻をほんのりと赤らめると、羞恥の為に視線を外して。
「―――こんな明るいうちからは嫌ですか?」
「……違う……」
壬生の問いかけに龍麻は消え入る程の小さな声で答える。そんな彼は耳まで真っ赤になっていて。そして。
「じゃあ、どうして?」
壬生の手が龍麻の髪をそっと撫でた。さらさらの髪が壬生の指をすり抜けていく。
「…俺、今汗と埃でべとべとだから……」
そんな龍麻の言葉に壬生は思わず、笑いを零してしまう。しかしそれは決して、不快な物ではなくて。
「バカですね、龍麻。僕は貴方のならどんなものだって欲しい」
「…でも…俺……」
「貴方ならなんでも、ほしい」
深い漆黒の瞳。龍麻がずっと恋こがれていた。それはいつも彼に魔法をかける。
「…壬生…」
「はい?」
龍麻の手が壬生の首筋に延びると彼は、その耳元にそっと囁く。
「…一緒、お風呂入ろ…」
精一杯の彼の勇気に壬生は、苦笑しながら頷いた。


「ふー気持ちいいー」
少し熱めのシャワーは龍麻の汗塗れの身体に、最高の心地好さを与える。このまま水に同化してしまいたい。
「…龍麻」
バスタブに浸かっていた筈の壬生がいつの間にか龍麻の背後に立つ。そして、後ろからそっと抱きしめた。
「壬生、折角髪洗ったのに。また、濡れちゃうよ」
悪戯っ子の瞳で龍麻は壬生を見つめる。そんな彼を何処までも優しくその腕は、包み込む。
「いいんですよ」
そう言うと壬生は、薄く開かれた龍麻の唇に自らのそれを重ねる。始めは触れるだけのキスも次第に深くなってゆく。
「…んん…」
お互いの舌を絡め合う。舌裏を舐めたり、根本を吸い上げたり。お互いを求めるままに貪り合う。深く、求め合う。
「…ふぅ…ん」
龍麻はもう一人では立っていられなくて、必死で壬生にしがみつく。そんな彼の腰をタイミングよく、抱き止めて。
「龍麻、愛しています」
「…壬生…」
壬生は龍麻を自分の方へ向かせると、そのまま冷たいタイルにその細い身体を押しつけた。
「ひゃっ」
その冷たさに一瞬、龍麻の身体が竦む。しかしそれは本当に一瞬の事で、次の瞬間には熱いその身体に抱き込まれていた。
「壬生、あったかい」
「貴方も、ですよ」
見つめ合ったお互いの瞳が笑っている。優しい時間の流れ。このままずっと、こうしていたい。
「…龍麻…」
壬生の手が龍麻の胸の突起を捕らえる。それと同時にその唇は龍麻の首筋を這っていた。首筋から、鎖骨へと。その綺麗なラインを舌が辿る。
「…あっ…やぁ…あ…ん…」
次第に上がっていく息を龍麻は抑えられなかった。いや、抑えようとはしなかった。壬生の前で自分を隠す必要なんて、ない。
「…み…ぶっ…はぁっ…」
尖った舌が龍麻の微かに朱に染まった胸を弄ぶ。感じやすい箇所を攻められ敏感な身体は反応した。
「…あぁ…く…ふう…はぁっ…んっ……」
左右の胸を指と舌で攻めたてられ、龍麻の理性は次第に溶かされてゆく。どんどん深い場所へと、堕ちてゆく。
「龍麻」
「―――はあっ」
待ち構えていたとでも言うように壬生の指が龍麻自身に絡み付く。それは先程の愛撫で、微妙に形に変化をもたらしていた。
「…あぁ…あっ…んっ……」
巧みな壬生の指は龍麻の全てを呑み込み、何も彼も『無』へと変えてゆく。ふわりと身体が宙に浮いたように、頭の芯がぼーっとしてきて。そして。
「いいですか?龍麻」
「―――あっ!」
壬生がそう囁くと同時に、龍麻の最奥へと指が突っ込まれる。長い指が生き物のように指が奥で蠢く。
「…くぅ…ん…はぁっ……」
抜き差しを繰り返し、壬生は龍麻の媚肉を慣らしていく。敏感なソコは、無意識の内にその動きを追っていってしまう。快楽に忠実な龍麻のありのままの姿。そしてそれは壬生のみに向けられるもの。自分だけが知っている、龍麻の本当の顔。
「…はあ…ん…」
指が引き抜かれ、壬生が龍麻の細い足首を掴む。そしてそれを自らの肩へと担ぎ上げるとそのまま一気に中へと侵入した。
「あああっ!」
龍麻はその衝撃に一瞬大きく瞳を見開く。しかしそれは本当に一瞬の事で、壬生がまだ欲望を吐き出していない龍麻自身に手を絡める事で解消されて。
「…はぁ…あぁぁ…あぁっ……」
後ろからも前からも攻めたてられ龍麻の意識が白くスパークする。もう何も考えられなくて。何も、考えられなくて。ただ。ただその快楽を追うのみで。
「愛していますよ、龍麻」
「…み…ぶっ…壬生っ!……」
龍麻の透明な爪が壬生の広い背中へと食い込む。そこから鮮血が滴っても壬生は全く痛みを感じない。それ程に自分も『彼』に溺れている。勿論、龍麻も…。
「…あっ…ああ……」
強く壬生の存在感を感じる事が、より龍麻を燃え立たせる。そして壬生も。
「―――ああああっ!」
龍麻の細い悲鳴が零れたと同時に二人は欲望を吐き出していた。


そんなふたりの、日常。
誰も知らない二人だけの時間。
それが、何よりも。
何よりも、大切で。何よりも大事で。

一番かけがえのないもの、だから。



「ね、壬生」
「何ですか?龍麻」
「…もう立てないよ…だから」


「だから責任取って…『抱っこ』してね」


そんな龍麻の言葉に壬生はそっと微笑って。そしてひとつ、額にキスをして。





「―――ええ幾らでも…貴方のためならば……」




End

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