SilentNight

釘づけのつま先にそっと唇
血だらけの手のひらに突き刺さるナイフ
鏡に映す面影はこなごなで…
何もかも消えて消えては浮かぶ


…もう誰も…僕を救えない……


綺麗な光の下で、僕は狂気の夢を見た。決して届かない光の破片を見た。虚偶の真実は僕を優しく貫いて。破滅は静かに僕の中に侵入した。


…貴方はどうして、微笑っているの?……


「…紅葉…」
貴方は微笑っていた。柔らかく優しく何時もの笑顔で。僕を包み込んでくれるその笑顔で。
「…どうして、そんな顔するんですか?…」
追い詰めたのは僕の方の筈なのに…それなのに僕の方が追い詰められている。怯えた瞳で貴方を見つめている。
「君が怯えているから」
澄み切った真っ直ぐな瞳。何処までも綺麗で、何処までも穏やかな。どうして、貴方はそんな瞳をするの?
「…どうして…どうして貴方は笑っているの?…こんなめにあっているに…」
口許が醜く歪む。僕はこんな風にしか笑えなくなってしまった。いや…ずっと前から僕は心から笑える事が出来なかった。
「だってこれは君の傷だから」
切り刻まれた、腕。肩。胸。血まみれの貴方の身体。僕が傷つけた。この手のひらのナイフで。
「君が心に受けた傷だから」
血まみれの手が伸びてきて僕を抱きしめた。何時ものように、何時ものように僕を抱きしめる。ぬめりとした感触が僕の頬に当たる。貴方の血。綺麗な綺麗な貴方の、血。
「君の見えない傷だから。だから僕が引き受けたそれだけだよ」
この血の海に抱かれて永遠に眠れたらと…それはひどく甘美な誘惑。
「…貴方が…僕を狂わせた…」
「ああ、そうだね。紅葉」
「貴方の綺麗な瞳が真っ直ぐな視線が…貴方の腕の中が貴方の愛が…」
高貴な魂。血まみれの僕では決して手に入れられない何よりも強く輝くその魂。それを。それを僕は奪いたくて…。どうしようもない程…奪いたくて。
「僕を狂わせ、壊してゆく」
「そうだよ、紅葉。僕が君を狂わせたんだ」
奪いたくて、奪いたくて。そして、破滅…した。


君が、欲しかったから。誰にも渡したくなかったから。
君を僕だけのものにしたかったから。君を壊して、君を狂わせて。
そして。そして僕は君を永遠に手に入れる。


「貴方の掛けた鎖を僕は解く事が出来ない」
「解けないように、したからね」
「貴方の鎖が僕を引き裂いて行くんです。貴方の視線が誰かに向けられるだけで。貴方の手が誰かに触れるたげで。それだけでこの鎖は僕を粉々に引き裂いてゆく」
「そうだよ、紅葉。僕が掛けたんだ。君の首に、君の全身に、見えない鎖を」
血まみれの貴方の指が僕の髪に触れた。僕の髪も貴方の血に染められてゆく。全てを染められる事にどうしようもない程の幸せを感じながら。
「…如月さん…もう終わりにしても…いいですか?」
「…君が望むなら……」


「…僕には君を殺す事が出来ないからね」


愛しているから、君を殺せないよ。大事な大事な僕のたったひとつの命だからね。


「愛しています、如月さん」
「…僕もだよ、紅葉……」
「…愛しています……翡翠………」


これが、答え。貴方は僕から逃げない。そして僕は貴方から逃げられない。これが何よりの幸福。何よりの幸せ。絶望が夢ならば、真実は破滅。


…知っていた、こんな事。貴方に出逢って、僕は生まれて。そして死んだ。たったひとつだけ僕が手に入れたもの。このひとを愛する心だけ。他にはなにも、なにもない。


「…翡翠……」


貴方には綺麗な未来とそしてたくさんの光があった。光のある場所。そこが貴方だった。闇に染まる僕には近づく事の出来ない強い強い光。それでも貴方は僕に近づいた。そして僕の全身に見えない鎖を掛けた。


…光へといけない僕を…貴方は捕らえた……



君が闇から逃れる事が出来ないのならば。僕の元へと来る事が出来ないのなら。それならば。その闇から君を奪う為に鎖を掛けた。君を僕だけのものにする為に。


「愛しているよ、紅葉」


Whataslientnight
この手で殺してしまいたい
このままでいつもふたりで…
Whataholynignt
この目で眠らせてしまいたい
そのままで世界を閉じて…


そのままで瞼を閉じて…


…僕が最期に見たものは…貴方の幸福な死に顔。



End

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