イノセンス

不意に切り取った、日常のワンシーン。
けれどもそれが。そんな些細な事が。
何よりも大切だと、気付いたから。

―――きらきらと輝く瞬間を、切り取って胸の中に永遠に保存したい。


不意に君が子供のような顔で微笑った。
それがあまりにも突然だったから。
あまりにも不意打ちだったから…僕は思わず瞳を盗まれた。


穏やかな日差しが暖かい午後。風香る優しい暖かさが、地上に降って来る時間。
「どうしたんですか?如月さん」
不思議そうに君は僕を見つめてきた。その顔は何処か幼くてまた僕は君に瞳を盗まれた。君のその表情に。無防備に見せる君の顔に。
「いやひどく君が子供のように微笑ったから」
「そうですか?そんな事…意識していないから」
「意識しない事が、君には大事なんだよ」
何時も自分に殻を作り自らの表情を隠してきた君。何時も笑う時にすら意識をして、その笑顔を作り出す君。そんな君が見せる笑顔はただ冷め切っていたものだった。
だからこそ。だからこそ、今。今君が僕に無意識に見せてくれた笑顔が何よりも大切なものなんだ。
「でも意識しています。貴方の前では」
「紅葉?」
「…何時もどきどきしています……」
「そう言う意識なら僕は大歓迎だけれどね」


君が微笑った顔を、ずっと。
ずっと見ていたいから。
どんな時でも、どんな瞬間でも。
君がしあわせそうに微笑う笑顔を。

―――僕はずっとずっと見ていきたいんだ……


「なんか女の子みたいですね」
「恋する気持ちに男女差はないだろう?」
「…そうですね…関係ないですね…だから……」
「うん?」
「だから僕は貴方を好きになったのだから」



そっと貴方の手が伸びてきて、僕の頬に触れた。綺麗な指先、優しい指先。暖かい、指先。このぬくもりにずっと触れていられるのならば、僕はきっと他に何も望みはしないだろう。
―――こうして貴方のぬくもりを、感じていられるのならば……
「僕も君だけが好きだよ」
僕が好きと告げるよりも何十倍も貴方からこの言葉を貰っている。僕の方がきっと、きっと欲張りなんだと思う。でも貴方はそんな僕の我が侭に全て答えてくれるから。僕が望むよりもずっと。ずっといっぱい貴方は僕にくれるから。
「君だけが、好きだよ。紅葉」
大きな手で包み込まれて、そしてそっと口付けられて。睫毛が震えるほどの甘い口付けに、僕はどうしようもない切なさと甘さを感じる。
それが心の奥底で交じり合って、もどかしいほどの気持ちを僕に植え付ける。
「…如月…さん……」
唇が離れて、そして真っ先に呼ぶのは貴方の名前。ただ独りの貴方の名前。迷わずに、戸惑う事もなく呼べるようになったのは…貴方の真っ直ぐな瞳があったから。
「うん、紅葉。好きだよ」
僕がその先を言いたくて、言うのを戸惑った言葉を貴方はさらりと言ってくれた。


好きだから。貴方だけが好きだから。
それは何も関係がない。どんなものも関係がない。
ただ『好き』だと言う気持ちだけ。ただそれだけ。
それだけが、僕の今の全てなんです。

―――貴方が好き、だと言う気持ちが……


「伝えたい言葉はたくさんあるのに」
「紅葉?」
「何時も貴方の方が先に言ってしまいます」
「それだけ君を、見ているからだよ」
「…だから…貴方に甘えてしまうのかもしれません…」
「甘えてもいいよ。君は今まで甘えると言う事を知らずに生きてきたのだから」
「……甘え…ますよ………」
「甘えてくれ。僕の両手は君だけのものだ」


好きです、大好きです。
言葉なんて足りない。全然足りない。
どうしたら僕のこの想いを。
想いを全部。全部貴方に。
貴方に伝える事が出来るのでしょうか?
いっぱい、いっぱい。

―――溢れてしまうほど、僕は貴方が大好きなんです。


「…両手だけ、ですか?……」
「くす、君からそんなに可愛い台詞を聴けるとは思わなかったよ」
「…あ…だって…その……」
「大丈夫、僕の全部は君だけのものだよ」



そんな僕の言葉に君は微笑った。
子供のような無邪気な顔で、そして。
そして何よりも嬉しそうな顔で。
でもね、紅葉。僕の方が何倍も。
何倍も嬉しいんだよ。

―――君が僕に甘えてくれたと言う事に……


生きる事に不器用で。生きてゆく事に不器用で。
それでも懸命に頑張ると一生懸命な君。
そこまでやっと。やっとふたりで来れたから。
ここまでやっとふたりで辿り付けたから。
これからは先、もっと。もっともっと。

――――ふたりでしあわせになってゆこう。


「如月さん」
「ん?」
「…如月さん…」
「くす子供みたいだね、そんなにしがみ付いて」
「…如月さん…暖かい…から…」
「それはね、きっと」

「きっと君の事だけを、考えているからだよ」



ささやかな日常が、こんな風に。
こんな風に何時も。何時も君と僕が。
暖かい気持ちになれたら。

―――なれたら…いいね………


End

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