deceit ACT / 3


時々、全てを抹殺したくなる程の孤独を感じる時がある。
 

昔から、他人が見えないものを、聞こえないものを、見分ける事が出来た。時には他人の本音さえ、見える事があった。どんなに表面を綺麗に飾っても。どんなに幻を作り上げても。この真実しか映し出さない瞳は、たやすくそれを見破る事が出来た。


「おはよう、如月」
如月がこの学校へ来てから、一週間が経っていた。その間特に何かが起こると言う訳でも無く、次第に彼の存在はこの場所へと浸透していった。
「おはよう、龍麻」
柔らかい如月の笑み。この笑顔が龍麻は格別に好きだった。全てのものを包み込んでくれる優しい笑みは、見ているだけで心を満たしてくれる。それに時々龍麻はその笑みに、理由の無いノスタルジアを感じる時があった。
「如月ってさー頭いいね」
「君は何を突然言い出すんだい?」
「だってこっちに来ていきなりテスト受けてトップとるんだもの」
「勉強が出来ても世の中を知っていなければ意味はないだろう?」
「でも、凄いよ」
でも、と龍麻は思う。そんな言葉は如月だから言えるのだと。彼みたく全てにおいて完璧ならば、きっとそんな些細な事なんて気にしないだろうから。
「でもやっぱり、羨ましいな」
綺麗な容姿、均整の取れた身体。無駄な肉が一切無く、かといって貧弱でも無い。まるでしなやかな獣のように。
「そう言えば如月、茶道部に入ったんだって?」
「ああ、向こうの学校でも茶道をやっていたからね」
龍麻はちらりと、如月の指を見た。茶道をやっているのに相応しい、しなやかな指を。けれどもその大きな手は、全てを包み込む強さも持っている。
「確か京一が言ってたけど、如月って剣道の腕前凄いんだろ?何かインターハイで優勝したとか…京一は剣道部だから如月にぜひ入ってほしかったって言ってたよ」
「前の学校で剣道部の助っ人として出ただけだよ。大した事じゃないよ」
「でも凄いよーーっ!!」
龍麻は本当に純粋な顔をして、如月を褒める。彼はきっと嘘を付けない性格なのだろう。今まで何者にも汚されず、真っ直ぐに生きてきたのだろう。それが彼の最大の長所でもあり、最大の欠点だ。
「―――君は、何か大切なものを失った事があるかい?」
もしも龍麻が一度何かによって、傷つけられたら、何かを失ったら、どうなるだろうか?それでも彼はこの素直な真っ直ぐな心を持ち続ける事が出来るだろうか?
「…大切なもの?……」
「ああ、これだけは失いたくないと、思ったものだよ」
如月の言葉、に。龍麻は不意にデジャ・ヴを感じる。そう、こんな場面に自分は以前出逢っていた。けれども、それはおかしい。―――如月と出逢ったのは、後にも先にも今だけなのだから。
「どうしたのんだい?龍麻」
その龍麻の沈黙をどう取ったのか、如月は微かな疑問と共に尋ねてくる。けれども、龍麻は茫然と彼を見つめるだけだった。
―――確かに以前、自分はこの言葉を彼と交わした事がある。間違えがない。けれども、何時何処で?有りえる筈は無い。如月と出逢ったのは、一週間前のあの日からだ。けれどもそれは次第に確信となって、龍麻の心を支配する。確かに、自分は如月とこの言葉を交わした。そして、その時自分は……。
「……俺は、絶対に失わないよ………」
そう、答えた筈だ。強い意思を持って。そう、答えたのだ。真っ直ぐに彼を見つめて。
「―――そうか………」
そして、その時も如月はそう言った。あの何よりも綺麗な笑顔を浮かべながら………。


「―――『力』が、ここへ来て増幅している」
御門はそう言うと机に置いてあった花瓶に手を触れる。その瞬間、花瓶が跡形もなく粉々に砕け散った。
「このままでは、拙いね。壬生」
窓枠に無造作に腰掛けていた壬生に、御門は言う。そんな彼に壬生くすくと楽しそうに微笑いながら。
「何が、拙いんですか?」
「このままでは、封印が解ける」
「封印?龍麻の?そうでしょうね。このままじゃあ拙いですね。でもそれは予め予測していた事でしょう?僕たちが一つの場所に集ったんだ。こうなる事は分かっていた筈です」
「確かにある程度は予想していた。でも、速過ぎる。まさか彼が―――如月翡翠がこれ程の『力』の持ち主だとは、思わなかった」
「―――それは貴方が馬鹿なんですよ。あの人を、なめすぎている」
「随分君は酷い事を言うね。けれども、確かにそうかもしれない。彼は私の想像以上だった」
「―――如月さんは、『玄武』ですよ」
「……………」
「あの人は四神の一人。僕らとは比べ物にならない程の力のある人だから」
「まるで彼が神だとでも、言うのかい?」
「神?そうかもしれませんね。あの人ならば、きっと不可能な事なんて無いんでしょうね」
「でも、彼は死んだ」
「――――」
「私たちを置いて、真先に死んだのは、彼だった」
御門の言葉に。壬生は何も、言わなかった。ただその漆黒の瞳が、遠くを見つめるだけで。


覚えているのは、身体に染み付いたこの黒い血だけ。


「―――龍麻」
「……壬生っ!………」
今朝の不可解な思いがどうしても頭を離れなくて、龍麻は授業もそっちのけで屋上で頭を冷やしていたのだ。そんな龍麻の前に壬生が現れたのだから、自分は驚かずにはいられなかった。
「何て顔しているんですか?そんなに僕の顔が珍しいんですか?」
「…そうじゃなくて……まさかこんな所に壬生が来るとは、思わなかったから」
壬生の言葉に本当に困った顔をする龍麻に、苦笑を禁じえない。―――素直な、龍麻。真っ直ぐに純粋に、全てのものを信じて。龍麻の強さは、全てを信じる強さだ。けれども。けれども、そんな強さが時には人を傷つける事を彼は知らない。―――例えば、自分のように…。
「授業耽る時は、屋上と相場が決まっているんですよ」
「ふーん、そうなんだ」
壬生の言葉に龍麻は素直に関心する。純粋に壬生は龍麻を『素直』だと思う。そして自分の本来なら『半身』である筈の彼。でも、それだけだ。それ以上にもそれ以下にもなれない。それでももっと別の形で出逢えたら。自分と彼は本当の意味での『半身』になれたかも、しれない。―――なれたかも、しれない。
「…壬生……変な事、言っていいかな?………」
「変な事?」
真剣な瞳を向けてくる龍麻に、壬生はくすりと一つ微笑って頷いた。
「上手く、言えないんだけど……俺如月がこの学校来る前から、出逢っていた気がするんだ……」
「―――」
「…デジャ・ヴって言うのかな……今日如月と会話した事が、何だか前にも同じような会話ほした事があるって思って……思って、じゃないんだ……確かに、あったんだ……」
「……何て、会話をしたのですか?………」
「如月が俺に聞いたんだ『何か、大切なものを失った事があるか?』って」
その龍麻の言葉に。一瞬、ほんの一瞬壬生の表情かが変化した。
「…その時俺は思ったんだ…前にも確かに同じ事があったって。そして、俺は覚えているんだ。その時如月に自分が返した言葉も…そして……如月がその俺の答えに対しての言葉も………」
「―――貴方は、何て答えたんですか?」
「失わないって、言った。俺は絶対に失わないって」
信じる者の、強さ。そう、龍麻は信じている限り失わないだろう。そして。
「如月さんは何て答えました?」
「……『そうか』って………」
そして。全てを手に入れて、そして決して失う事の無い、彼。その強さと優しさで。何も失わずに、手に入れてきた如月。
「…上手く…言えないけど…如月とは初めて逢った時から、不思議な親近感があったんだ。何か、あの笑顔を見た事があるって……」
「――――それは、間違っていませんよ…龍麻……」
「………壬生?…………」
突然壬生の手が龍麻の額に延びてきて、驚く間も無くその指が額へと埋め込まれる。そして。
「貴方と、如月さんは以前出逢っています。それも一度じゃないですよ。何度も、何度も。貴方が転生し続ける限りそれは永遠に続くんですよ。そして、僕も」
額に埋め込まれた指先が黒く光り出す。それは壬生の瞳の色彩と同じ、だった。
「僕も、あの人と出逢うんです。どんなに嫌でも。逢いたくないと、思っても」
その光が段々強さを増し、そして最高潮に達した時。龍麻の身体は崩れるように落ちて行った。
「―――そして僕が、どんなに逢いたかったかも知らずにね………」


「―――」
封印の為に多量の『力』を放出してしまった壬生は、その身体の脱力感に耐えきれず、ぺたりとコンクリートの上に座り込んでしまう。そんな当麻を労うように伸は微笑って。
「…壬生……いやもうひとりの黄龍……『黄龍の器』の封印、御苦労様……」
御門の手が延ばされて、壬生を起こそうとする。しかし壬生はその手を払いのけた。
「相変わらず、他人を拒むんだね…まあ、別にいいけど……。でもそんなに他人を拒み続けると、何時かは君の心の方が駄目になるよ」
「………自分は棚に上げてですか?…………」
「私は拒まないよ。自分の元へと来る者は、全て受け入れる。ただ、追わないだけだよ」
「相変わらず、口だけは上手いですね」
「私が上手いのは、口だけじゃ無いよ。何なら、試してみるかい?」
「―――貴方は、追わないのでしょう?」
「ああ、そんな無駄な事はしないよ…でも君は…放って置けない………」
再び御門の手が延ばされて、壬生を抱き締めようとする。けれども再び壬生はその手を拒否して。
「―――僕は『本物』以外はいらないです」
「…君は…いつもそうやって強がるんだね……。本当は飢えているくせに………」
御門の言葉に、壬生は答えない。けれども、否定しない。
「初めは君も私と同類の人間だと思っていた。どんな事があっても、傷付く事なく、目的の為にだけに貪欲になれる強かな人間だと……でも、本当は違う………」
何よりも自分が大切で、強かで、そして残酷な壬生。でもそれは、裏返しだ。真実を隠す為の。
「―――君は、飢えている。何かを強く望んでいる」
嘘が巧みな、壬生。幾らでも平気で残酷な嘘を付ける。でもそれは逆に言えば、壬生は何よりも自分に正直だから。自分に正直だから、幾らでも残酷になれる。
「君は、一体何を望む?」


幾ら奪ってもきりが無い。次々に、新たなものを見せてくるから。
その全てを奪う事はきっと、永遠に出来ないのだろう。それでも、どうしても………。


その全てが欲しいと思うのは。――――自分勝手な我が儘、なのだろうか?


昔から、他人が見えないものを、聞こえないものを、見分ける事が出来た。
「―――――」
如月の瞳が、不意に色彩を変化させる。それは他人には分からない、ごく僅かな変化だったが。
「おい?如月?」
突然立ち上がった如月を不思議に思って、京一は尋ねてくる。けれどもそんな彼に如月は、彼を一瞥しただけで。
「すまない。急用が出来たので、帰らせてもらうよ」
「おいっ、如月っ!」
京一の制止の声も聞かず、それだけを言い残すと荷物も持たずに教室を出て行ってしまった。
「……何だぁ?あいつは………」
京一は食べ掛けのパンを手に持ったまま、茫然と如月の背中を見送ったのだった……。


真先に如月の瞳に飛び込んできたのは、驚愕に見開かれた夜空の瞳、だった。
「―――そんなになってまで、未だ結界を張る力が残っているとはね……」
如月の言葉に壬生はくすりと、微笑った。そしてその細い手を延ばして。
「もうこれが限界です。立つ事も出来ません」
如月は無言で近づくと、その延ばされた壬生の手を取った。けれども、彼を起こそうとはしなかった。
「ならばもう一人居た男に頼めば、良かったのに?」
「……やっぱり、見えたんですね……。僕が龍麻を封印する所を………」
「ああ、見ていたよ」
「そして僕がこの屋上に、誰も人を入れないように結界を張ったのも」
「―――ああ、全部ね。あの男が龍麻の身体を抱えて、この場から消えたのも。その後で、君がこうして結界を張ったのも…そして……」
繋がっている壬生の手に力がこもり、如月を引き寄せる。本当は、それは不可能な事だった。何故ならば、壬生は全ての力を使い切っていて、指さえ動かす事がやっとなのだから。けれども、如月は彼のさせたいようにさせた。壬生が自分を引き寄せるから……そのまま彼のやりたいようにさせた。そして。
「……君が、僕を呼んだのもね………」
触れてきた壬生の唇を。如月は、決して拒まなかった。
「―――如月さん…………」
いつの間にか、壬生の指先は如月の髪に絡まっていた。そう言えば、この間も彼はこの髪に執拗に触れていた。
「僕を、抱いてください」
「―――その、身体でかい?」
「この身体だからですよ。貴方の『力』を分けてください」
「あの男に頼めば、良かったんじゃないかい?」
如月の言葉は最期まで、言葉にならなかった。壬生がその唇でその言葉を閉じ込めて、しまったので。そして。
「僕は、貴方を呼んだんだんです」
―――真っ直ぐな瞳で、壬生は如月にそう言った。


――――口づけは、ひどく甘かった。
「…んっ……」
初めは触れ合うだけの口づけも、次第に激しいものへと変化する。互いを貪り付くような……。如月の舌が壬生の歯列を割って、口内へと割り込んでくる。それを壬生は自らの舌で絡め取った。
「…ふぅ…ん……」
壬生の口端から何方の物とも付かない唾液が零れ落ちる。けれども、如月の味に酔い痴れている彼には、そんなものは気にはならなかった。
「…はぁ…」
唇が離れた瞬間、壬生の口からは甘い吐息が零れる。そんな彼を一瞥すると、如月は柔らかい耳たぶへと唇を寄せた。
「…あっ……」
それを甘噛みしてやると、壬生の瞼がぴくりと震える。それはひどく、官能的だった。如月の手が壬生の衣服に掛かり、器用にそれを脱がしてゆく。その間も彼は壬生の耳の裏の柔らかい部分を攻め続けた。
「…如月…さん……」
壬生が甘えるように自分の名を呼ぶ。如月はそれに答えるように、彼の顔を見つめた。
「―――何だい?」
綺麗な髪と、漆黒の瞳。その全てがどんな宝石よりも豪華だった。そう彼は、この世の最高級のものだけを集めて造られた、最高の彫刻。
「…名前…呼んでください……」
きっとこの世にある綺麗なものを全て集めても、彼の前では色褪せてしまうだろう。色彩褪せて、しまうだろう。
「…呼んでください…如月さん……」
「―――分かったよ、紅葉………」
如月の言葉に、壬生は微笑った。それは本当に嬉しそうな顔だった。


「…あっ……」
如月の指先が壬生の胸の果実を捕らえると、それを軽く摘んだ。するとたちまち敏感なそれは、ぴんっと張り詰める。
「…あぁ…」
張り詰めたそれを指の腹で転がしたり、軽く爪を立てたりしてやる。その度に壬生の身体は鮮魚のようにぴくりと、跳ねた。
「――――紅葉………」
耳元に残る、低く微かに掠れた声。その声に弾かれるように壬生は、瞼を開く。快楽に濡れた夜の瞳が、切なげに如月を見つめる。
「…如月…さ…ん……」
甘えるように自分を呼ぶ声。縋るように見つめる瞳。全てが、本物だった。嘘でも、演技でも無い。その動作は確かに、彼の本能から起こるものだった。
「―――僕には、君が分からない」
如月の巧みな指先が余す事なく、壬生を攻め立てる。大きくて、力強くて、そして繊細な指先が。
「…あ…あぁ……」
如月の言葉に、壬生は答えられなかった。彼の指によって捕らえられた自分自身のせいで。そして言葉は、甘い吐息にすりかえられてしまって。
「…あぁ…ん…」
壬生の腕が如月の広い背中に延びると、彼のワイシャツをくしゃりと掴んだ。その指先の強さは、如月のワイシャツがくしゃくしゃになる程だった。
「もう、力は残っていないんじゃあ無かったのかい?」
まるで大事な物を必死で護ろうとでも言うように、壬生は如月の背中に縋り付く。意識が快楽に飲まれているのならば、これは無意識の内から来る動作だろう。―――そう、これは彼の無意識の、本音。
「…ああ…は…んっ……」
無意識の、本音。彼は自分から奪いたいものがあると言った。絶対に手に入れたいものがあると。その為ならば、手段は選ばないと。
「…きさらぎ…さん……」
壬生の舌が延びてきて、如月のそれに絡まる。それを受け止めると、深く舌を絡め合わせた。
「…んっ…んん…」
根本をきつく吸い上げると、堪えきれないのか壬生の目尻から快楽の涙が零れ落ちる。それを指先で拭ってやりながら、如月は尚も口内を犯していった。
「…はぁ…あ…」
「―――そんなに、欲しいのかい?」
唇が離れて真先に零れたのは、如月のその言葉だった。でも、壬生は答えない。答えられない。快楽に飲まれた意識は、如月の言葉の意味を理解する事は出来なかった。
「……一体、僕の何が欲しい?………」
それでも如月は言葉を紡ぐ。それが無駄だと分かっていても。聞かずには、いられなかった。
「…如月さん…早く……」
中々開放されなくて焦れたのか、壬生は譫言のようにその言葉を呟いた。そして、媚びるような瞳で自分を見つめる。
「…欲しい…です……」
「…何が、欲しいんだい?紅葉……」
如月の言葉に。壬生は快楽に濡れた瞳で、彼を見つめて。
「…貴方が…欲しい……」
――――それだけを、告げた。


「―――ああっ」
貫かれた痛みに、壬生の形良い眉が歪む。けれどもそれは次第に、快楽の色彩にすり替えられてゆく。
「…あっ…あぁ…あ…」
如月は壬生の腰を掴むと、ゆっくりと動き始める。その刺激に彼の口からはひっきりなしに甘い吐息が零れ落ちる。
「…きさらぎ…さん…きさら……」
より深い快楽を求めてか、壬生の細い足が如月のそれに絡んでくる。その滑らかな足を愛撫しながら、如月は求めるままに彼を深く抉った。
「…ああ…あ……」
綺麗に反り返る彼の喉に口づけて、如月は最期の瞬間を迎える為に、一気に最奥まで貫いた。――――貴方の瞳を見つめたまま、狂えたらならば……


「……僕、良かったですか?………」
未だ名残の残る熱い身体を持て余しながら、壬生は自分を見下ろしている如月に尋ねた。
「良かったと、言って欲しいのかい?」
「言って欲しいです」
そう言うと壬生は自らの両手を延ばして、如月を引き寄せる。如月はそんな彼を、そっと抱きしめて。
「……良かったよ、紅葉………」
そして、その細すぎる髪をそっと撫でてやる。大きくて広くて、そして優しい手で。
「―――狡いですね、貴方は………」
全てを包み込んでくれる広い腕。全てを護ってくれる強い胸。そして、全てを癒してくれる優しい手。
「…そうやって、僕を騙すんです………」
「―――騙す?」
「そうです、そうやって僕に優しくする振りをするんだ…本当は、誰よりも残酷なくせに……」
「―――残酷か…そうかもしれないね………」
彼は、研ぎ澄まされた刃物だ。触れたら誰もが傷付けられる。けれども、触れずにはいられない。例え、傷つくと分かっていても。
「………僕は…残酷な男なのかもしれないね………」
――――例え、傷つくと分かっていても。


なにもかも、壊れたリアルでも……。

End

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