快楽の館・4

 

手負いの獣を飼いならしてもつまらない。
冷たい瞳でお前は一言そう言った。
何処までも冷たい深い闇を持つ瞳で、お前は。

お前の世界に映るものは『虚無』しかないのだろうか?

初めて男を知った瞬間を思い出しながら、俺は人間ではないソレを身体の中に受け止めていた。冷たいお前の瞳が見下ろすその前で。恥かしくもなく限界まで足を広げて、獣の肉棒を求めて腰を振った。深く、深く…もっと深くと……。
「ああっ…犬神…もっとぉ…あああっ!!」
血を太股に垂らしながらも獣の拡張を受け入れる俺の秘所はもうただの。ただの淫乱な雌猫のそれでしかない。それでももう俺には止められなかった。
その冷たい視線の下に俺の全てを暴かれて、もっとも恥かしい自分を暴かれて。そして見下される事が。ぞくぞくする程の、快感。止められないエクスタシー。
「…いいぜ…いいぜ…たまんねーよっ!…」
もう俺の視界には何も映ってはいなかった。口からはダラしなく液体を垂らしながら、股間からは白濁した液を垂らしながら…秘所からは紅い血を垂らしながら…。
―――俺は。俺は獣とのセックスに溺れていた。

初めて俺をこんな風に抱いたのは、人間のお前だった。人間の犬神杜人だった。如月と同じ瞳で。醒めた瞳で、ただ俺のことを乱暴に犯した。―――それが、よかった。
堪らなかった。今まで女をヤルことしか知らなかった俺は、お前によってヤラれる悦びを知った。
乱暴に組み敷かれて突っ込まれる悦び。肉を引き裂かれる悦び。何時も自分が支配していた。女は俺の望むままに足を開いて、俺の上に跨る。俺の言う通りに、俺の言われるままに。そんなセックスに俺は何処か満たされないものを感じていた。
―――そんなセックスに飽き飽きしていた……。
だからこそ、乱暴に服を引き裂かれ。押し倒され突っ込まれた事が。その絶対的な力に支配される事が。自分の思い通りにならない行為が。
俺の身体に火をつけて、止まらなかった。その初めての刺激が俺にとって忘れられなかった。忘れられず、忘れられず何時しか俺は男の腕を求めてさ迷った。
さ迷って、さ迷って。そして出逢った。初めての衝撃すら吹っ飛ぶ程の、快楽に。どうしようもない程の快楽の海の中に。
その何よりも綺麗な顔で無表情に俺を支配する『ご主人様』に。

「――ああっ…もっと突いてくれ…はあっ!!」
見つめる。見下ろす。冷たい瞳。冷酷な瞳。狼と交わり乱れる俺を、ただ醒めた瞳で見下ろしているお前。何よりも綺麗な顔で何よりもえげつないお前。
「―――ああああっ!!!!」
そんなお前の瞳が、俺を絶頂にまで追い込ませてゆく。


『おれのこと、きらいじゃない?……』

意識が無くなる寸前に俺は。
俺は何故かあいつの泣きそうな顔を浮かべていた。


我に返った時、俺は見覚えのある身体を犯していた。覚えている…村雨祇孔…歌舞伎町で飢えた目をしていた男。その瞳の奥に求めていたものが、俺が満たしたいものと一致したから…一致したから、その身体を犯した。
犯してやった、その肉を。まだ受け入れる事を知らなかった箇所に、俺は自らの凶器を突っ込んでやった。その肉の味に、お前は血を流しながらも悦んで咥えていた。
―――お前が望んでいたもの…支配される事…だから俺はソレを叶えてやった。
「気絶したか?村雨も案外ヤワな身体をしているんだね」
ずぶりとその身体から自身を抜いた。抜いた瞬間に頭上から声が聴こえてきた。
「―――き…さらぎ……」
「もとに戻ったかい?」
そう言ってお前はひとつ、笑った。でも笑っていない。口許だけを形を変えて、その瞳はあくまで冷酷に俺を見下ろしていた。―――支配者の瞳で。
「お前は何が目的なんだ?」
「目的?そうだね…今は目の前にいる狼を飼い慣らす事かな?」
「――っ!」
そう言ってお前は手で掴んでいた鎖を引っ張った。それは俺の首に掛けられている首輪に付けられた鎖だった。
「僕は虎も飼っているんだけどね…すっかり牙が抜けきってしまって…つまらないんだ…だから少しは僕を楽しませてほしいね」
「うっ!」
―――ピシャリっ!と乾いた音がして、俺の背中は鞭で叩かれた。俺の背中にはくっきりと紅い跡が残る。それを関心なさそうに眺めながらも、お前は何度も俺の背中に鞭を叩きつけた。
まるで。まるで機械のようだった。その綺麗な顔は怖い程に無表情で、その瞳には何も映してはいない。ただ無表情に無機質に俺の背中を鞭で叩きつけるだけで。
「くす、抵抗して欲しいな…その爪と牙で……」
口許だけで笑うお前。口許だけで。その先はただの無。黒くて深い闇しかない。闇しか、ない。その闇は俺よりも暗く、俺よりも深い。――俺の闇、よりも……。
「それとも獣ゆえの…本能かな?……自分よりも強いモノに逆らえない……」
バンと音がして、今まで俺を打っていた鞭が床に落とされる。俺の背中には無数の紅い跡が浮かび上がっていた。その後にお前のしなやかな指が這ってゆく。
「―――もう一度聴く…お前の目的は…何だ?……」
その問いにお前はひとつ、笑った。それはあまりにも綺麗であまりにも壮絶な笑みだった。見たもの全てを惹き付けて、そして恐怖に陥れる笑み。そんな笑みをお前は俺に向けて。

「―――復讐…だよ……」

それだけを言うと、俺の中にお前は自らの凶器を突っ込んだ。


「―――――っ!!!」
何の準備も施されていない乾いた俺の中に、お前はその熱く硬い棒を捩じ込んだ。ピキィ…と肉を引き裂く音と、生暖かい血を感じながらお前の凶器が俺の中を犯してゆく。
「流石だね、声を上げないのは」
「っ!!」
鎖を引っ張られて顔を上向きにされる。そしてそのまま口中を舌で犯された。生き物のように俺の中を舌が蠢き、何時しか絡め取られる。
「…っ……」
そうしている間にも中の凶器は俺の肉を掻き分け、奥へ、奥へと進んでゆく。より深くへと……。
―――これが。これが支配されると言う事なのか?
何時も俺に望まれたのは、支配。皆が俺に望んだのは支配。俺に支配される事。俺の下に組み敷かれる事。俺に、犯される事……。
これが俺の身体の下で喘いでいたやつらの、望みなのか?だとしたら。だとしたら…。
「―――っ!!!」
身体の中に熱い液体を注がれて、俺は。俺は初めて『支配される事』を、知った……。


熱い液体のようなものが、鞭の跡に注がれる。それが溶けた蝋燭だという事は、それが傷跡に落ちた瞬間に気が付いた。
「…くぅ……」
ジュワっと焼けた音を立てながら、俺の傷跡に蝋が垂らされる。何度も、何度も。俺はその度に口に零れそうになる声を耐えた。唇を噛み締めて、耐えた。
「強情だね…その方が調教のしがいもあるってものだけど…。まあ僕のモノではなく蝋燭如きで声を上げられても…僕のプライドが傷つくだけだしね」
そう言いながらも一向にその瞳は醒めている。お前はある意味プライドなんてない人間だろう。いや違うな…そんなちっぽけなモノはお前には必要のないものなんだ。
―――生まれながらに人の上に立つ人間。生まれながらに支配する人間。
それがお前だ。お前は生まれながらに『絶対者』なんだ。こうやって、こうやって全ての人間を跪かせる為に生まれてきた……
「…そうか…獣の時に…その毛を燃やせばよかったんだね…」
この俺ですら…跪かせ、支配する―――絶対者……


「くす、村雨…目が醒めたみたいだね」


目を開いた瞬間、飛び込んできたのはお前の虚無の瞳。何も映さない鏡のように反射するその瞳だった。
「…如月…犬神…先生……」
そしてその瞳の下には鎖に繋がれ背中に無数の鞭の跡と、蝋を垂らしながら如月に犯されている犬神の姿だった。
犬神のまだ男を受け入れる事に慣れていない箇所から、如月の逞しいソレが挿入を繰り返している。その音と硬さを見ただけで俺は…。
「…ずりーよ…先生ばっかで…如月…俺も…俺も挿れてくれよ……」
「挿れて欲しかったら…そうだね…先生を…満足させる事だね…出来るね、村雨」
その言葉に俺は。俺はこくりと頷いて、如月の身体の下で逞しくそそり立つ犬神のそれを口に含んだ。
「…んんっ…んんん…」
狼の時ほどではないが充分に巨きなソレは、俺の口の中いっぱいに広がる。頬張らないと咥え切れないほどの大きさだった。
「…はむぅ…はんっ………」
付け根から筋に添って舌を這わせ、袋の部分を口に含んだ。舌で転がしながら、軽く歯を立てると手で握っていたソレがより一層拡張した。
―――知ってんぜ…ココがあんたの感じる部分だと……。
過去に重ねていた身体の数だけ、俺は先生の性感帯を知り尽くしているんだぜ。あんたが俺を乱暴に犯している間に、俺は必死でソレを探していたんだから。
ぴちゃぴちゃとわざと音を立てて舐めた。その度に膨れ上がる大きさに。大きさに俺は我慢出来なくなる…。犯して欲しい。掻き乱して欲しい。ぐちゃぐちゃにして欲しい。
如月の熱さとはまた違うあんたの熱さ。如月が冷たい身体で熱く貫くならば、あんたは熱い身体で熱いまま俺を貫くんだ。
「…もぉ…俺我慢出来ねーよ……如月…先生の…先生のを俺に…」
「しょうがないな君も…いいだろう…ほら」
「―――うっ!」
如月が腕に掴んでいた鎖を引っ張って犬神の顔を上げさせる。そしてその瞬間微かに持ち上がった身体の下に俺は自らの身体を偲び込ませた。―――そして。
「あああっ!!!」
犬神の腰に足を引っ掛けてそのまま引き寄せて俺の中に埋める。ずぶずぶと音を立てながら、それは俺の中に飲み込まれていった。熱い、棒。灼熱の棒。その凶器が俺を、俺を狂わせる。
「…村雨…そんなに引きつけたら…僕が抜けてしまうだろう?」
「…はぁっ…抜ける…モンか…如月のは大き過ぎて…簡単には抜けねーよっ……」
俺は構わずに腰を引き寄せて、深く深くソレを求めた。そうすると如月は首輪を引っ張って犬神の身体を自分に引き寄せる。
そんな事の繰り返しが、また。また俺の身体をどうしようもない程に暴走させる。
―――お前と、取り合っている。ひとつの身体を…取り合っている……
「…ああっ…ああああ……」
もう後は何がなんだか分からなくなっていた。ただぐちゃぐちゃに意識が溶かされて。俺はもう何も分からずに夢中で犬神の凶器を求めていた……。


―――支配される事の悦び。
誰かのもとに跪く悦び。
自由を奪われる悦び。
何もかもを奪われる悦び。
その先にあるのは。
あるのは無限の快楽と、虚無のみ。

―――そこにあるのは、深い暗い闇だけ……


「…落ちるがいいよ…快楽の闇へと………」


お前の感情のない醒めた瞳を見つめながら。
俺は意識を真っ白にした。
その深い闇だけを、瞳に焼き付けながら。


End

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