快楽の館・True Story


ごしゅじんさまは、おおきなにんぎょうをたいせつにしています。
あ、これはおれだけがしっているひみつなので。
ひみつだから、だれにもいっちゃだめです。
だってそうしたらもう、ごしゅじんさまおれをだいてれなくなっちゃうかもしれないから。


どうしたら、君は僕を見てくれるのか?
どうしたら、君は僕の名前を呼んでくれるのか?
…どうしたら…君は……

―――もう一度、僕の前で微笑ってくれるのか?


「…紅葉……」
その名を呼んでも君は。君は決して答えてくれる事はない。ただ人形のように僕を見下ろすだけ。その漆黒の瞳で、僕を映しているだけ。それでも、僕は。
「…紅葉…愛しているよ……」
僕は君の名前を、呼び続ける。その瞳が、その声が、僕を見つめて呼んでくれるまで。
君の身体をそっと抱きしめ、そして体温を感じる。それが君が唯一生きているんだと分かる証だから。この腕の中に広がる暖かい温もりが。それだけが、君が生きている証。
「…紅葉…何時かきっと僕が……」
そして拒まないけど受け入れない唇に口付ける。その時だけ温もりが灯る君の唇が哀しい。こうやってしか君と体温が分け合えない事が。
どんな男女を抱いてきても、幾ら沢山のペットを手に入れても。僕のこころは永遠に満たされる事はない。どんなに至上の快楽を作り上げても。それでも君に敵うものは何もない。
本当は何も欲しくはない。何一つ僕にはどうでもいいものなんだ。君が。君が僕を見てくれないのならば。
―――君が、僕の名前を呼んでくれないのならば……
「…僕が君を…もう一度……」
もう一度、口付けをする。君の唇に。愛しい君の、唇に。


ごしゅじんさまは、いつも。
いつもそのにんぎょうといるときだけ、ほんとうのかおをします。
おれたちにはぜったいにみることのできないかおを。
そのにんぎょうにだけは、みせるんです。

―――ほら、いまもこうやって……


君をこの腕に抱き上げて、僕は浴室に運んだ。君の為だけに拵えた部屋。君の為だけに用意した部屋。誰にも、誰にももう君を見せたくはないから。
君の服を脱がすとそのまま湯船に浸からせた。そうやって君を抱きしめながら身体を洗ってやる。
―――壊れた精神。壊れたこころ。君を壊したのは、快楽。そして薬。それが君の精神を破壊した。
君が暗殺者として身を置いていた拳武館。そこで繰り広げられた性と薬の暴力。君の精神は堪えきれずに悲鳴を上げて、そして。そして粉々に砕けた。
―――君を、壊した……
「…紅葉……」
ならば今度は僕が壊してやろう。君が壊れたモノで、僕が壊してやる。それが。それが君をこんなにしたやつらへの復讐…そう復讐だから……。
「紅葉、どうしたら君は僕を見てくれる?」
東京を護る為に戦った僕ら。そして仲間たち。けれどもやつらは、君を見捨てた。拳武館の中で館長達の慰み者にされ、そして麻薬を打たれ続けた君を誰もが見捨てた。
―――仲間だと、表向きは言いながらも。
最後の戦いになって薬が切れて発狂した君に、奴らがした事を僕は絶対に忘れない。戦いの邪魔にならないようにと、こんな風に君の精神を壊したやつらを。
だから僕は。奴らを全て君と同じ目に落としてやる。この快楽の罠へと。堕落させてやる。
―――それが。それが僕に出来る君への唯一のことならば。
「紅葉…どうしたら君は……」
手をこうやって包み込んでも、君の髪をそっと撫でても。あの頃のように君はもう笑ってはくれない。閉じ込められ壊れた君のこころは。
「…紅葉…僕だけの紅葉……」
本当は抱きたいのは君だけだ。君さえ僕はいてくれるならば。君がこの腕の中でいてくれるなら。僕は、僕は何も望まないのに。
君の身体を貫きたい。君の甘い吐息を聴きたい。君の鼓動を感じたい。
「…僕だけの…紅葉……」
ああこんなにも君を愛しているのに。僕の声だけが…それだけが届かない……。


「ごしゅじん、さま」
紅葉の身体を洗って風呂から出てくると黒崎がタオルを持って待っていた。疑う事を知らない瞳が僕を見上げて来る。可愛そうに…君をこんなにしたのは目の前の僕なのにね。
それでも君は僕を信じて真っ直ぐな目を向けてくる。ある意味紅葉よりも純粋なのかもしれない。
「ありがとう」
僕は黒崎からタオルを受け取るとそのまま紅葉の身体を拭きはじめた。誰にも。誰にも彼を触らせはしない。誰にも彼を触れさせはしない。
「黒崎これを持っていってくれ」
「はい」
拭き終わったタオルを渡されて黒崎はそのまま部屋から去ってゆく。他のペット達の中でも、君だけは特別に可愛いよ。だって君だけは、唯一紅葉がこうなる事を反対したからね。
―――でも、それだけだ…それ以上でもそれ以下でもない……
僕にとって紅葉…君以外の人間は全て敵だ。そして全て支配すべき対象なんだ。君、以外の全ての人間がね。


地獄に落ちる?
落ちてやろう。
復讐の修羅となって。
君の為に。
君の為だけに僕は。

―――僕は鬼にでも邪にでもなろう。

君を愛しているんだ。
君だけを、愛しているんだ。
紅葉、君だけを僕は。


ごしゅじんさまは。
ごしゅじんさまは、きっと。
きっとあのにんぎょうだけがだいじで。
あのにんぎょういがいいらないと、おもいます。
たぶんおれも、いらないとおもいます。
でもそれでも。
それでも、いいんです。
だっておれが。
おれがごしゅじんさまがほしいから。
ごしゅじんさまがほしくなくても。
おれがほしいから。
それで。それだけで、いいんです。

でもちょっとだけ、ごしゅじんさま…おれをきにしてくれたら…いいな……。


―――如月さん…僕は貴方のそばにいられれば。
そばにいられればそれだけで。
それだけで、しあわせなんです。
だから、如月さん。
僕はそれ以上何も望まないから。
だから、ふたりで。
ふたりでいられれば。
それだけでいいから、如月さん。
他のことなんて、考えないで…ください……

…僕以外の事を…考えないで…如月さん……


こうして、君を抱きながら僕は眠る。
そうしないと何時しか僕は眠れなくなっていた。
君がこの手から消えてしまわないかと言う不安が。
そんな不安が僕につきまとって。

だからこうして。
指を絡めながら君と眠る。
君と、こうやって。


腕の中の君が。
君が僕に寄り添ってきたのは…

…気のせい、だろうか?………


何もいらないです。
何も欲しくないです。
如月さん、僕は。
僕は貴方が傍にいてくれるだけで。
何も、何も、いらないです。

―――貴方がそばに、いてくれるならば……



 


End

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