夏を、見ている。2話


静かに時間は流れる。自分の意思とは関係なく。
二人の上にも穏やかに時間が流れていく。
閉鎖された二人の時はまるで、夢に住む子供みたいだった。
でも、終わりはやってくる。永遠は存在しない。

「もうすぐ、夏だな」
「ああ」
京一が退院してすでに半年の月日が流れていた。その間ふたりはこの閉じ込められた空間で、静かに時を刻んでいた。
「お前の大好きな夏だよ、京一」
龍麻は室内にある最も大きな窓を開けると、風が二人の間をすり抜けていった。それはとても、素肌に心地いい。心地いい、優しい風。
「ああ、夏んなると…不思議と心が騒ぎ出す。何故だろーな……」
窓の近くにあるソファーに腰掛けているふたりの足元を、白い猫がじゃれついて駆け回っていた。
「―――このまま…」
京一はぽそりと呟くと、そのまま龍麻の肩に寄り掛かる。そんな彼の細い身体をそっと抱き寄せた。
「…時間が止まってしまえばいいのにな……」
京一は静かに目を閉じる。龍麻の体温を感じながら。その唯一の温もりを感じながら。
「―――京一?」
龍麻の優しい声が耳に降ってくる。その中に埋もれてしまいたい。そうしたら楽に、なれるのだろうか?
「…きっと俺は覚めない……」
「え?」
「夢から覚める事が出来ない」
―――それが、最初で最後の残酷な警告だった。

―――知っていた。
きっとこんな事になるだろうと。
自分の夏は終わらない。自分だけが終わらない。
…微妙にずれ始めた時間は……。
今は取り返しの付かない程に広がっている。

気付いたのは、何時から?
何時からその『ズレ』に気付いたのだろう?
本当はあの日からだったかもしれない。
自分が残酷な賭けをお前にした日から。
時間は広がっていたのかも知れない。
―――時計の針は、逆方向に進み始めたのかもしれない。

窓から覗く月がやけに蒼くて、怖かった。ひどく、怖かった。
―――ガシャンッ
龍麻の眠りが深い場所へとさしかかったその頃、何処かで何かが割れる音が突然耳を突き破る。その音に、せかされるように龍麻は瞼を開いた。
「―――?」
…いない…一緒に眠っていたはずの京一がいない……。
「京一?」
龍麻は咄嗟に起き上がると、駆け出すように物音のしたキッチンへと向かう。そこには。
そこには、灯りも付けずにぼんやりと座り込む京一の姿があった。
「どうしたんだっ?!京一?」
咄嗟に電気を付けようとスイッチを押そうとした龍麻の手は、しかしそれと同時に飛んできた京一の鋭い声に遮られた。
「付けるなっっ!!」
「京一? !」
床に座り込んでうずくまっている京一に、龍麻はそっと近づいた。その瞳がひどく、怯えていたから。怯えていた、から。
「どうしたんだ?」
座り込んでうずくまる京一の髪にそっと触れる。そっと、触れる。何よりも優しく。けれども。けれども、その瞬間。京一の身体が脅えるようにぴくっと震えた。
「…京一?…」
「…お…お前まで…俺を殺そうとするのか?……」
「…え?……」
怯えた、瞳。自分の前に曝け出された恐怖。―――何故、お前が俺にそんな瞳をするのか?
「―――京一、なに言って……」
「俺が戦えないから殺すのか?役立たずだから…もういらないから…だから…お前まで、殺すのか?」
零れ落ちる、涙。それはとても綺麗で。綺麗、過ぎて。そして、苦しくて。
「何バカな事言っているんだ?俺がお前を殺す訳無いだろう?」
「―――嘘だ。そうやってお前まで俺をだますのか?」
「嘘じゃ、ないよ」
ひどく優しく龍麻は言うと、そっと京一の身体を包み込む。それは、何もかもから溺れそうになる程に温かい。あたた、かい。
「お前をもし殺したなら、俺はすぐにお前を追って死ぬよ」
「嘘だ、嘘だ、嘘だっっ!!」
その言葉に、癇癪を起こした子供のように京一は暴れ出した。龍麻の強靭な腕の力で無理やり押さえ込んでも、それでも彼は子供のように暴れ出す。
「嘘じゃない。俺が今生きているのはお前がここに居るからだ。お前が居ないこの世界に一体何があるというんだ?何もないんだから?俺にはお前以外の物なんて無くなってほしいと思ってる位なんだから」
「―――でも、言っている。皆が。俺を殺せって言っている。ほら聞こえてきた。お前にも聞こえてるだろ??」
「何も聞こえないよ、京一……」
「嘘だ、聞こえている。聞こえてくるっっ!!――――っ」
けれども京一の叫びは最後まで声にならなかった。龍麻の唇を噛みつくようにその言葉を塞いだから。
「聞こえるのなら俺が楯になってお前に聞こえないようにする。お前を殺そうとする奴は俺が全て抹殺してやる。いや、俺は地球上に住む生物全部を滅亡させてやる。お前の為なら。お前が望むなら」
「…ひーちゃん……」
―――ぱさり、と音がして。そして胸を激しく叩いていた京一の腕が力無く落とされる。
「忘れるな、京一。俺はお前の為なら人殺す事なんて何でもない。お前の為ならば、神だって殺せる事」
「―――」
「忘れるな、京一。俺がこの世に存在しているのはお前が生きているからなんだよ」

「…あっ……」
甘く掠れた声が、京一の唇から漏れる。その声を盗むように、龍麻は何度も何度もその唇を塞ぐ。
「愛している、京一」
暗闇の中。漆黒の闇の中。二人は閉鎖された場所で、神の目を盗みながら抱き合う。誰にも見つからない、誰にも入り込めない空間で。
「…あぁ…やめ……」
京一の綺麗な背中がそりかえる。爪が龍麻の背中に痛い程、食い込む。
「愛している、愛している」
京一が全てを考えられなくなるように。幻聴さえも消してしまうように。何もかも考えられなくなって、自分以外の存在を認識出来なくなるように、龍麻は激しくその身体を貫く。
「―――あああっ!」
意識が無くなるまで。自分以外、見えなくなるまで。その身体を責め立てる。そうでもしないと。そうでもしないと、京一は存在しない人間達に、壊されてしまう。見えない人間に殺されて、しまう。
―――そして。そして、何よりも自分は。
この想いを。激し過ぎるこの想いを、京一に思い知らせてやりたかった……。

その日を境に京一の幻聴は始まった。龍麻には聞こえない言葉が彼の精神を破壊している。そして。それと同時に。同時に、彼は見えないものを見るようになっていた。
「な、すげー綺麗だろ?ひーちゃん」
京一は自分には見ることが出来ない物を一生懸命説明する。そのたびに龍麻は優しく包み込むように京一に笑って言うのだ。
「ああ、綺麗たな。お前には叶わないけど」
「何だよっそれは」
そう言うと決まって京一は。京一は、恥かしいのか真っ赤になってそっぽを向いてしまう。
そう言う所は全く変わらないのに。なにひとつ、変わらないのに。いいや、何も変わってはいない。京一は自分の前で無邪気な子供のように笑い、澄み切った瞳で自分を見つめる。
―――何一つ変わっていないのだ……。
そう思っても胸は、痛む。痛まずにはいられない。
京一が幻聴を聞く時、幻覚を見る時、彼はその中に隔離されてしまう。
自分の前にいるのに。自分の腕の中にいるのに。
その時だけ京一はここに居ない。別の世界へ、自分の居ない世界へ行ってしまう。
それが耐えられない。自分が彼の見ている物、思っている事が理解出来ないのは辛い。
辛くて辛くて、まるで首を締められるように。喉を掻き毟られるように。
その時間が長くなればなる程、神経が麻痺してしまいそうになる。
一体、どの位の時間が過ぎればお前はここに戻ってきてくれるのだろうか?
膝を抱え、気が遠くなる位の時間を待っていた。
……お前が俺を見てくれるまで……。

―――皮肉な、幸せとはこの事だろうか?

京一の幻覚は一時的な物だったらしい。太陽が一番激しく照らされる季節になった時、彼の幻覚は消えた。その代償として。
―――京一は過去の意識が全く、失われてしまった。

「久し振りだね、龍麻」
「…如月……」
狂った二人だけの時間に侵入者が訪れる。誰も知らない世界に隔離された、ふたりに。
「蓬莱寺がああなって以来、逢えなかったけど。どうしているのかと思ってね」
「…ああ……」
龍麻は曖昧に返事をしただけだった。曖昧に。その瞳に何処か狂気の色が含まれていた事を、如月は見逃さなかった。真実を映し出すこの瞳を捕らえた『狂気』の色を。
「蓬莱寺は、元気かい?…紅葉がひどく気にかけているのでね……」
如月の問いに龍麻は何も答えない。多分彼には『蓬莱寺京一』と言う人間以外に興味も、そして意識すらもないのだろう。でもそれを自分は否定ははない。この瞳に映した龍麻の狂気は自分も確かに持っているものだから。―――壬生紅葉と言う人間に対して。
だから彼の持つ狂気を、自分は決して否定したりはしない。
「―――入れよ……」
そんな如月に龍麻は、ただ静かに背中を向けてそれだけを言った。如月はその言葉に従うように無言で彼の後に続く。
「ひーちゃんっ」
龍麻が部屋に入って来た途端、如月の耳に京一の嬉しそうな声が飛んで来た。それはまるで子供のような無邪気さ、だった。
「京一」
龍麻の優しく呼ぶ声に、京一は甘えるように彼に抱きついた、その時だった。
「…誰?……」
京一の身体が如月の目にも分かる程にがくがくと震え出す。そしてその声も明らかに恐怖の色で、怯えていた。
「―――蓬莱寺?」
凍り付くように止まってしまった京一の視線の先には、如月の相変わらずの無表情な顔。それは『他人』龍麻以外の…自分以外の『知らない』人間。
「…ここまで…酷いとは…紅葉には見せられないな……」
「誰だよ、お前?俺はお前なんて知らないっ!」
「―――龍麻…お前……」
その先を言いかけて、如月は止めた。自分に今のふたりの状態をどうこう言う権利はない。それどころか…それどころか…心の何処かで羨ましいとすら、思った…。
愛する者を、自分だけのものにする方法。それを今目の前の龍麻は実行しようとしている。
「お前に俺をどうこう言う権利は無い筈だ…そうだろう?如月」
「同類と見るか?確かに僕も紅葉を閉じ込めてしまいたいと、何度思ったか分からない。しかし」
「しかし?」
「―――永遠に追い掛けるのも…悪くないと思っている……」
「…追い掛ける……」
龍麻がその言葉を呟いたその時、だった。再び腕の中の京一が暴れ出す。
「お前なんか知らないっ知らないっっ俺はお前だけだ」
「…蓬莱寺…」
「お前しか知らない!他の奴は皆、敵だ。皆俺を殺そうとしている。そいつだってそうだ。俺を殺す為に来たんだっ!!」
「大丈夫だ、京一」
その動きを、そして不安を閉じ込めるように。龍麻は骨が砕けそうになる程強く、強く抱きしめる。
「…誰もお前を殺そうなんて思ってない、大丈夫。お前俺が守っているんだから……」
「…ひーちゃん……」
「俺が、居るんだから」
龍麻の手がひどく慣れている事に、如月は気付いた。こんな風に京一がなるのは初めての事ではないのだろう。だとすれば尚更…この事実を如月は自分の最も愛する者に伝える事は出来ない。
如月にはどうでもよかったのだ。このふたりがどんな状態であろうとも。自分にとって大切なのは壬生紅葉その人だけで、そして。そして龍麻が大切なのは蓬莱寺京一その人だけなのだから。
ただ壬生が彼を気にするから、見に来ただけで。それ以外の理由は今自分にはない。何故ならば自分と同じ瞳を持つこの男の気持ちが…手に取るように分かるから…。
「――悪い、如月」
「分かっている。少なくとも君は、幸せだ。そして蓬莱寺も…幸せだ」
「…そう思う…か?お前にはそう見えるのか?」
「―――そうでないと、紅葉が納得しないからな」

龍麻は自分の心が幸福を感じている事に、自虐の声を聞いた気がした。
京一は狂っていた。確かにその事実は動かない。
それなのに、自分は幸福を感じていた。
―――これ以上の喜びは無いとでも言うように。
京一は自分しか、見てない。見えないのだ。
確かにそれは彼の精神のおかしさがもたらした物だが、それでも京一は自分以外の人物を判別出来ないのだ。その事が狂気に身を埋もれさせ、そして心から歓喜させる。
―――俺しか見えない、京一。
それをどんなに自分が望んでいた事か。どんなに、願った事か。
自分でもどうする事も出来ない独占欲がこんな形で満たされるとは。
もう、どうなっても良かった。どうなっても構わなかった。
彼が手に入ったのだから。自分のこの腕の中だけに。
―――自分にとっての望みはそれ以外何も無かったのだから……。

「――― 一度…病院に連れて行ってください、龍麻」
その瞳はひどく心配そうに、自分を見つめていた。優しい、瞳。哀しげな、瞳。こんな瞳を壬生は何時からするようになったのだろうか?全ての人間を拒絶していた瞳の裏の真実に、最初に気付いたのが如月ならば。ならば何時しか壬生も京一と同じ運命を辿るかもしれないのに。あの自分と同じ瞳をした彼ならば、それを実行するかもしれない。
「……病院?」
龍麻の口が微かに、歪む。その顔は確かに『笑って』いた。壬生は、その顔を…その笑みを…知っている…。
「どうして?」
尋ねる声は何処までも穏やかで、そして平穏だった。それでも、その裏に隠された狂気の色を自分は知っている。
「…どうしってて…蓬莱寺さんの様子は普通じゃありません。だから……」
「だから?」
「…僕は仕事上…こう言った人間を沢山見てきました…だから分かります…今の蓬莱寺さんは明らかに精神病状態です」
「…知っているよ……」
今度こそ、壬生は確かに自覚した。その龍麻の笑みを。その瞳を。自分がどうして知っているかと言う事に。
「―――龍麻……」
「壬生、お前も俺と同じだろう?俺達は表裏の龍だ…俺の気持ちは手に取る程分かるだろう?そして。そしてお前だって同じ思いを抱えているくせに」
「…僕は……」
「お前の瞳は何時も言っていた『如月に自分だけ見ていて欲しい』ってな。今の俺と何処が違う?」
―――違わ、ない。自分達は同じだ。こんなにも如月を自分だけのものにしたいと…何時も何時も…思っている…だけど…だけど……
「それでも僕は、あのひとと『生きて』いたい。現実の世界でふたりで生きていたい。今の蓬莱寺さんは…『現実』で…生きて…いない……」
「――俺には出来ない。京一をまたあの無機質な白い部屋に閉じ込める事は」
「…龍麻……」
「京一から太陽を奪う事は俺には出来ない」
「……でも……」
「俺はね、壬生。傲慢な人間なんだよ。自分勝手で、知っているだろう?その位」
「…それなら僕も…傲慢ですよ……」
「だったら分かるだろう?やっと手に入れたあいつを俺がやすやすと離すと思うのか?」
―――離したく、ない。僕もやっと手に入れたあのひとを。僕だけが手にいれたただひとつの安心出来る場所。あのひとの腕の中。―――あのひと、の……。
「そうだろう?俺は今最高に幸せなんだ。たとえ神がそれを許さなくても。俺はあいつが欲しい。どんな卑怯な手を使ってだって俺は手に入れる」
僕だって…僕だってどんな事をしたって、あのひとが欲しい。僕だけを見ていて欲しい。僕だけを…愛してほしい……。
「―――あいつは俺のものだ」
その龍麻の言葉に、壬生はそれ以上何も言えなかった。…自分には言える資格はないのだ……。

「…ひーちゃん……」
京一が、龍麻を見上げる。その瞳が純粋すぎる程、綺麗だった。哀しいくらい、綺麗だった。
「何?京一」
信頼しきった瞳。京一は全て、龍麻にゆだねていた。その瞳にどうしようもない程の幸せを、龍麻は感じながら。
「お前、あったけー」
そう言って子猫のように身体をすり寄せてくる京一の肩を、龍麻はそっと抱いた。
「そうか?」
「うん。あったかくて気持ちいい」
夏の気だるい熱さも蒸し返す気候も何も気にならない。こうして京一は龍麻に触れていないと不安になるらしい。京一は龍麻の側に居るときだけ、幻聴も聞こえず幻覚も見えない。
もしかしたら本当に…龍麻は京一の盾になっていたのかも…しれない……
「…京一…」
龍麻が京一の頬にそっと手を置くと、そのまま口付けた。柔らかい、キス。優しい、キス。
「…ん……」
触れ合うだけのキスも次第に深くなっていく。舌を絡め合い、お互いの口内をまさぐり。何時しか飲みきれない唾液が京一の口元を伝う。龍麻はそれをそっと舐め取った。
「くすぐってーよ」
京一が可笑しそうにクスクスと笑う。その顔があまりに無邪気で。あまりにも、純粋で。
「ごめんな、京一」
ひどく、幸福な時間。誰にも譲れない。
もしもこの時間を奪おうとする物は。
―――龍麻は全て抹殺すると、決めていた……。

「みーみー」
京一の膝の上で心地良さそうに、白い猫は喉を鳴らす。
小さな雪みたいな猫ももう、大人になった。そうやって時間は確かに過ぎていく。
生きている以上、それは当たり前の事だった。でも……
「京一、食事だよ」
京一の時間は止まってしまった。京一の時計は壊れて、動かない。
「こっち、来いよ」
京一は龍麻の言う通りに彼の前にぺたんと、座る。そして立ったままの龍麻を見上げて。
「今日はお前の大好きなミートローフだよ」
クスッと笑うと京一の前に食事の乗ったトレーを持って座る。それを京一はただ、見ていた。
「熱いから、気をつけて」
龍麻は自らの手で握ったフォークで京一の口元にそれを運ぶ。京一は黙って口を開いて与えられる物を受け取った。
「おいしい?」
龍麻は必ず京一にそう聞く。そして京一が頷くと龍麻はひどく嬉しそうな顔をするのだ。
―――本当に、嬉しそうに……。
京一は何もしなかった。いや、出来なかった。
龍麻以外の人間を判別出来なくなってしまった彼は、龍麻から与えられる事を受け取る事しか出来なくなったのだ。
食事を取る事もお風呂に入る事も。まるで赤ん坊のように彼は何も知らなかった。
そして、龍麻は教えなかった。全て自分の手で京一を閉じ込めてしまった。
「京一、可愛いね」
まるで龍麻は夢物語のように語る。幻の夢のように。
―――知っていた、から。分かっていた、から。
永遠は無いと。時間は進んでいくと。
京一は時間を止めてしまった。でも自分の時間は進んでいく。
いつか、きっと夢が覚めると。そして。
理解していた。子供であった自分はどこにも居ないと。
―――何よりも自分は、現実の中に住む、大人だった。

……綺麗な瞳と無邪気な心。
龍麻が持っていない、そして遠い昔に失ってしまった物。
京一はそれを持っていた。そして今も持ち続けている。
現実も絶望もなにもかも捨ててしまった、彼は。
幻覚と幻聴の中で京一が永遠に見えなくなってしまった世界の中にいる。
――――綺麗な海の底で、夢を見ている。


End

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