俺の名は黒崎隼人、またの名を正義のヒーローコスモブラックさっ。今日も今日とて俺は最強のヒーローとなるべく、如月骨董品店の扉を叩くのだった。
「やあ、黒崎。待っていたよ」
相変わらず如月さんは壮絶な美貌で俺を迎え入れてくれた。何時も何時も思うのだが、どうしてこの人はこんなにもカッコイイのだろうか?その笑みを見ただけで俺は神経がぼーとしてしまう。
「こ、こんにちは如月さん」
いい加減何度も逢っているのだから見慣れてもいいモノなのだが、全然慣れない。美形は何度見てもやっぱり美形なんだなぁと、妙な所で感心してしまった。
「どうした?黒崎」
…とそんな事を考えていたら如月さんが不思議がって俺の顔を覗き込んできた。ああっまさか見惚れていたなんて言えない。
「い、いや…その…」
うわーこれ以上近づかないでくれ。俺の心臓はどきどきして張り避けてしまいそうになる。
「くす、顔が真っ赤だよ」
張り裂ける前に、如月さんは微笑って。そして。そしてひとつ、キスをしてくれた。
俺はそれだけでもう頭の芯からぼーとしてしまうのだった。
如月さんは何時もの通り店を閉めてしまう。そして俺に向き直ってまたキスをひとつ、くれた。
「…き、如月…さん……」
「どうした?黒崎」
「あ、あの今日の忍者修行は?」
「ああ、そうだったね。君はその為に来たんだ」
思い出したように如月さんはぽんっと手をひとつ叩くと、俺を残して何処かへと行ってしまった。
…今日は、何をするんだろう……と、そんな事を考えたらまた心臓がどきどきしてきた。
如月さんの忍者修行…思えば最初は『忍耐』の修行だった。
忍耐と言いつつあんな事やこんな事をされてしまって…思えばあれが初めて如月さんに抱かれた時だった。思い出しただけで恥かしい。恥かしいのだがちょっと嬉しかったりする自分がいたりして…。
ってまてそんな事で喜んではいかんっ俺は正義のヒーローだっ子供達に夢を与えるコスモブラックなんだっ!!
思いっきり首を左右に振って考えを振り切ろうとする。けれども思い出すのは如月さんの指使いと、甘いキスの感触だけで。…如月さんの……
あ゛あ゛ダメだっ。違う事を考えなければ…。そう修行俺は忍者修行に来ているんだっ!
そして次の修行は巻物だった。飛水流裏四十八手の巻物を全部試したんだっけ…。この間やっと全部クリアーした。けれども如月さんは合格点をくれなかった。
何時までも恥かしがる俺に『忍耐の修行はからきしだね。こっちはだいぶ上手くなったのにね』とにっこりと微笑いながら甘いキスをくれた。
でもう一回やり直しをしようって、言われたんだっけ。ってなんか…騙されている気がするのは気のせいなんだろうか?いや、気のせいだ…きっと…多分…うん……。
だって相手は尊敬する如月さんなんだっ忍者なんだっヒーローなんだっ!!!ヒーローが騙したりする訳ないよなっ!!
そう一人で思いっきり納得すると俺はその場でガッツポーズを取った。その瞬間、如月さんが戻ってきた。
「何をしているんだい?黒崎」
「あ、いえ…その…えーと……」
あまりの恥かしさにそのポーズのまま固まってしまった。でもそんな俺に如月さんは気にせずに俺に近づいてきて。
「今日は縄抜けの修行をしよう」
にっこりと笑って、俺の身体に縄を巻き始めた。
「…き、如月…さん……」
「し、黙ってて」
そう言うと唇を塞がれてしまった。如月さんのキスは俺にとって最大の弱点だ。だって、どうしようもなく甘くて気持ち良くて、どうにかなってしまいそうになるから。
「…んっ……」
如月さんの舌が俺の口中に忍び込んで来てそのまま絡め取られた。舌裏を舐められ、そして根元をきつく吸われると俺はもうその場で立っていられなくなる。気付いた時には俺は如月さんの背中に腕を廻していた。
「…ふぅ…んっ……」
「君は本当に可愛いね」
やっとの事で唇が解放されると、そこには綺麗過ぎる如月さんの笑顔。本当に、この人は綺麗で。どうしようもない程に。こんな笑顔をされたら俺でなくったって、めろめろになるよなぁ。
なんてぼーとしていたら凄い事態になっている事に気がついた。俺の身体は何時の間にか全裸にさせられていて、そして縄で縛られていた。
「き、如月さんっこれはっ?!」
「言っただろう?今日は縄抜けの修行だって」
「ってなんで裸になる必要があるんですかっ?!」
「だって『忍耐』と『巻物』の修行も兼ねているからね」
「えっ?ええ???」
「ちなみにこれは『亀甲縛り』と言うんだ」
と如月さんはまたしても天使のような悪魔の笑みで微笑むと、俺をその場に押し倒した。
「…嘘…あっ……」
胸の突起が縄で挟み込まれると、そのままこすられる。指とは違う感触に何時もとは違う感触に何だか気持ちが変に、なる。
「…やだっ…如月さん…あ……」
縄で挟まれながら如月さんの舌が胸の果実をつつく。その感触に俺の身体は嫌がおうでも反応した。何時もは舌か指だけなのに…このざらつく縄の感触が俺を攻め立てる。
「…やめっ…あんっ…」
「くす、何時もよりも感じてる。ほら」
「ああんっ」
如月さんの手が俺自身に触れた。それは恥かしい程に形を変化させていた。確かに何時もよりも俺は…俺は……。
「僕よりもこっちの方がいいのかい?」
「あんっ…やだっ…」
俺自身に縄が触れる。そのくすぐったいような、そして痛いようなもどかしい感触に俺の瞼はぴくぴくと震える。身体も、震える。
「…やだっ…ダメ…」
「ダメなのかい?もうイキそうだろう?」
耳元で囁かれると俺自身の先端からは先走りの雫が零れ始めた。このままじゃあイッてしまう…。
「ダメです…如月さん……」
「どうしてダメなのかい?」
「…だって……」
「だって?」
「…き、如月さんじゃ…ない…から……」
「黒崎?」
「…如月さんの…じゃ…ないから……」
俺はこの後に及んで何を言っているんだろう?そう思いつつも止められなかった。こんなに恥かしいセリフを言ってしまうなんて…俺は…。
「本当に君は、どうしようもない程に可愛いね」
けれども如月さんはそんな俺の羞恥心すらも忘れてしまうほどに綺麗な顔で微笑って、そして優しいキスをくれた。
「僕を上げるから、このまましてもいいかい?」
息を吹きかけるように囁かれて。そっと髪を指で撫でられて。優しい瞳で見つめられたなら。
「…は…い……」
俺は断る事なんて、出来はしなかった。
…俺って…ヒーロー失格…かな?……
「…ああっ…あ……」
如月さんを迎え入れながら、俺は何時しかひどく安心していた。
「…はぁ…ああ…如月…さんっ…ぁ…」
何時しかこうやって如月さんの熱を感じる事が。如月さんに貫かれる事が。
俺にとっての『安心感』になっていた。
…如月さんが…俺の中にいる…事に………
『…可愛いね…黒崎は……』
意識が途切れる寸前に囁かれた言葉に。
俺はどうしようもない程に、幸せだと思ってしまった。
目覚めた瞬間やっぱり俺の目の前には超最強美形の顔があった。が、しかしそれは何時もとはちょっと違っていた。何故ならば…
「…如月…さん?……」
俺が呼んでも如月さんの長い瞼は開く事はなかった。珍しい…と言うか初めてだった。如月さんの寝顔を見ることは。
何時も何時も如月さんは俺よりも先に起きていて、どうしようもない綺麗な笑顔で俺を迎え入れるのに。
俺は改めて如月さんの顔を見つめてみる。何時もならどきどきしてしまってあんまりまともに見られないのだけども、今は寝ているせいかちゃんと如月さんの顔が見れた。
どきどきはやっぱりしているのだけども。それでも。
「…やっぱり…かっこいい…なぁ……」
それでも綺麗な瞳が自分を見返さない分だけ恥かしくないから。だから。俺は如月さんの髪に触れたくてそっと…そっと手を伸ばした……
「…あ……」
と思ったらそれは叶わなかった。自分の身体は縄で縛られていたのだった。そうだ、この縄を解かないと俺は如月さんの髪に触れられない。触れる事が、出来ない。
「…まさか…如月さん……」
如月さんこれがっこれが縄抜けの真の修行なのですかっ?!!!
…と心の中で叫んでみても如月さんは寝入っていて、俺に返事が返ってくるはずがなく。
俺はひたすらじたばたともがくだけだった。
…今、如月さんが薄目を開いたのは…俺の…気のせいだろうか?………
そしてやっぱり黒崎の修行の成果は如月のみが知る事となる。
End