堕ちる事の暗い悦び。
壊される事の、甘い痛み。
―――その瞳に魅せられた瞬間から、堕ちて壊れた。
「…あぁっ…如月…もっと…突いてくれよぉっ……」
目の前で喘ぐ村雨の顔を見ながら、俺は身体が疼くのを止められなかった。如月の太くて硬いそれが、村雨の中に埋め込まれている。その黒光りする物体は村雨の奥深くまで抉り上げそしてその器官を容赦なく攻め立てる。
「…あぁ…イイっ!…堪らねーよ…如月…あああっ!!」
口からはだらしない程涎を垂らしながら、あられもなく乱れる村雨に…俺は羨ましくて堪らなかった。
俺も…俺も如月のソレで…突いて欲しい…腰が立たなくなるまで……
「君の身体もいい具合にこなれているね…誰に仕込まれた?」
―――ぐちゃんっ…とより一層深く中に入ってゆく音がする。堪らない…そんな音を聴かされたら俺は…俺は……。
「…へっ…歌舞伎町で…今まで生きて来たんだぜ…咥えた男の数なんて覚えてねーよ…はぁっ……」
火照った身体が押さえ切れず自らを慰めようとしてもそれは叶わなかった。俺の手は手錠で縛られ宙に浮かされている。そして。そして足は限界まで広げられ、俺自身は惜しげもなく外に曝されていた。
「…でも…お前が一番だ…こんなすげーの…俺は…知らねーよ……」
乱れる村雨と対照的に如月は顔色ひとつ変えない。ただ無表情に自らの凶器で村雨の中を抉るだけだ。汗一つかかずに、服一つ乱さずに。
「…あぁ…もお…出してくれよっ…俺ん中に…ああ……」
抜き差しするお前の凶器。強くて硬くてそして熱くて…それを。それを俺の中に……。
「…ふっ……」
何時しか俺自身は何もしていないのに勃ち始めた。びくびくと震えながら。お前のソレを…お前がソレを俺に入れる夢想をするだけで……。
「――村雨、醍醐君が君の姿で欲情しているよ」
お前の冷たい視線が俺を見据えた。冷たく無機質な瞳。全てを支配する王者の瞳。その瞳に魅せられたら…魅せられたらもうこうして堕ちてゆくだけ。
「…へへ…違うぜ…如月…醍醐はお前にこうされたいのさ……」
わざと接合している部分を持ち上げて、村雨は俺に見せようとする。それだけで。それだけで俺は自らの身体が暴走し始めるのを止められない。
「そこまで順応で淫乱になると…虎を飼いならすのも飽きてくるね」
ずぷりと音がして、如月のソレが村雨から引き抜かれる。立派なそれが俺の前に見せられて、俺はもう。もう……。
「…あっ…如月…抜くなよぉっ……」
「君も堪え性がないね。少しくらい辛抱するんだ」
そう村雨に告げるとお前は引き出しを開けて、そこからバイブレーダーを取り出す。それは男性自身の形そのままで、先端がぶつぶつになっていて実にグロテスクな物だった。
「見ているだけでこんなかい?君の白虎は変身が早過ぎるね」
「…ああ…っ……」
お前の長い指先がぱちんっと俺自身の先端を弾いた。それだけでどくんっと俺のソコは反応を寄越す。
「君みたいな淫乱な虎はこれで充分だよ」
「ああ―――っ!!」
グロテスクなそれが、俺の中に突っ込まれる。そしてお前はリモコンの値を最大にすると、そのままリモコンをその場に投げ捨てた。俺がどうやっても届かない場所に。
「へ、あんたもやる事がえげつないね…そこが堪んねーだけどよぉ」
「いいんだよ醍醐君はあれで…苛められると燃えるタイプなんだ」
「マゾかい?あんたは明らかにサディストだけどな…でも如月になら俺…苛められてもいいぜ…」
「くす、これでかい?」
「あああっ!」
突然挿れられた如月のソレに、村雨は再び喘いだ。その様子を見ながら俺は。俺は埋められたそのバイブの振動で何時しか達していた。けれども機械は俺がどうなろうが一定の激しさで攻め立てる。それは終わることのない拷問と快楽。
「…ああっ…イイ…やっぱ…堪んねーよぉ……」
激しい振動が俺の中で動いている。でも。でもそれはお前のモノじゃない。お前の熱いモノじゃない。
「…如月っ如月ぃ…もっと…もっとぉ……」
―――お前のモノじゃない……それでも……
「―――あああっ!!」
「はぁぁぁっ!!」
村雨が達するのと同時に、俺は二度目の射精をしていた……。
―――トントン…と、扉がノックする音がする。その音にお前は村雨から身体を離して扉へと向かう。
まだ村雨は名残惜しそうにお前の背中を見ていた。明らかに欲情している娼婦の目で。男の熱さを求める瞳で。
「ごしゅじん、さま」
扉を開けた瞬間に入って来たのは黒崎だった。ただ。ただその様子が何時もと違う。それは。
「…へっ、如月可愛いだろう?」
「君がやったのかい?村雨」
「ああ、お前の家のメイド口説き落としてかっぱらって来た」
黒崎はメイドの格好をしていた。ただし女物の服は彼には小さいらしく、スカートは膝上まで上がっていて、上着は腹が出ていた。それでも頭にあのひらひらの帽子と、レースのエプロンを付けているのは…村雨の悪趣味のせいだろう。
「ごしゅじんさまへんですか?」
首を傾げながら聞いて来る黒崎は本当に子供のようだ。ここまで子供だと同じ『ペット』とは言えライバル心も闘争心も起きては来ない。
「別にどうでもいい、ほら」
「あっ」
黒崎の身体が押されて村雨の腕へと納まる。そしてそのままゆっくりと如月は二人を見下ろした。
「君の趣味なんだろう?村雨。だったら可愛がってやりなよ」
「…あ、おれごしゅじんさまが…」
「――って言っているけどいいのかよ?」
「たまには自分のペット同士が睦み合うのを見るのも…一興だろう?」
「け、だってさ。せっかく俺が可愛くしてやったのにな」
「…あっ…」
村雨の手が後ろから抱かえたまま、するりと服の中に偲び込む。そしてそのまま胸の突起を弄り始めた。
「…あんっ…あぁ……」
「可愛いなあ、こうやって抱いてると胸のねー女抱いてるみてーだよ」
「…やぁ…ん……」
耳たぶを噛むと黒崎はいやいやと首を振る。その仕草すら子供じみている。けれども。けれども身体は立派な大人だ。快楽を受け入れる身体、だ。
「…やぁ…ああ…ごしゅじんさまぁ……」
身体は反応し始めているのに、黒崎はそれでもイヤイヤと首を振って抵抗する。彼にとってあくまでも『ごしゅじんさま』が絶対なのだ。それ以外の男の腕は、駄目なのだ。
「くすくす、可愛いよ黒崎」
そんな黒崎の様子を楽しみながら、お前はそっと頭を撫でてやる。そしてそのままひとつキスを、した。それで黒崎が抵抗出来なくなるのを、知っているから。
「…んっ…ふぅ……」
そんなお前に黒崎は必死で舌を絡める。それは健気にすら見える程だ。けれどもそんな黒崎を村雨は自らの指で容赦なく攻め立てる。胸の突起を摘みながら、ゆっくりと手を下腹部へと持ってゆくとそのままスカートを捲り上げた。
「―――本当に君は悪趣味だね」
黒崎が身に付けていた下着は女性物のショーツだった。更に服を捲り上げるとブラジャーまで付けられている。
「可愛いだろう?」
臆する事なく村雨は言うと、そのショーツ越しに黒崎自身をなぞった。それだけでぴくぴくと身体が小刻みに揺れ始める。
「…あっ…あぁ…んっ…やぁん……」
「僕はそんなモノには興味ないけれどね」
「如月の方がもっと趣味がえげつないと思っていた」
そう言いながらも村雨の指の動きは止まらない。自身をなぞっていた指をそのまま滑らせ、布ごと黒崎の秘所に突っ込んだ。
「…やあっ…ぁ……」
ぐいぐいと指を掻き回す音がする。そのたびに黒崎の口からは耐えず甘い吐息が零れる。そしてついに堪えきれずにショーツに白い染みを作った。
「もう出したのか?黒崎」
「…ご、ごめんなさい…ごしゅじんさま…ごめんなさい…おれ……」
今にも泣き出しそうな黒崎にお前はまたキスをひとつした。そして口許だけで笑って。
「まあいい。それよりも僕のを舐めるんだ」
「はい、ごしゅじんさま」
そのまま黒崎は差し出された如月自身を嬉しそうに舐め始める。しかし村雨の指は止まる事はなかったが。
「…ん…ふぅ…んんっ……」
如月自身を舐めている間に、黒崎の腰が村雨の手によって持ち上げられる。そしてそのまま突き出した格好になった秘所をショーツ事、村雨は舐め始めた。
「…んんっ…ふぁ…あっ……」
「駄目だよ、口を疎かにしたら」
「…ご…ごめんなさい…ごめんなさい……」
謝りながらもまた必死で黒崎は如月のソレを舐め続ける。けれども村雨の悪戯も止まらなかった。舌が離れたと思ったら今度は、ショーツを紐状にしてそのまま黒崎の双丘の狭間に引っ張った。
「…んんんっ…んっ!……」
「歯を立てたら許さないよ」
「…ご、…ごめん…な…さ…い……」
「如月、こいつの後ろ挿れてもいいか?」
「ヤリたくなったのか?村雨」
「苛めてみたくなった」
「まあいいさ。好きにするがいいよ」
指や舌とは違う別のモノが黒崎のソコにあてがわれる。その感触に黒崎はいやいやと首を振った。しかし髪は如月の指で押さえ付けられてどうにもならない…。そして。
「――――っ!!」
ショーツ事黒崎の中に村雨のソレが挿れられた。その痛みに黒崎の眉が歪むが、許される事はなかった。黒崎の口は如月のソレで塞がれ、そして後ろは村雨の凶器が蹂躙している。
「…んんんんっ…ふぐっ……」
前からも後ろからも攻められて、黒崎の目からは涙が零れ落ちる。けれども許される事はなかった。
続けられる儀式。でもそれは。それは黒崎自身も望んだ事じゃないのか?この館に、如月に捕らわれた時から、俺達に権利はない。如月の望むように、望まれるような雌猫になる以外は。
「――――ああああっ!!」
やって黒崎の口が自由になった時、その顔とその中にはそれぞれの欲望が注がれていた。
「…ご、…ごしゅじんさま…おれ……」
ぽろぽろと大粒の涙を流しながら、黒崎は如月を見上げた。顔からぽたぽたと精液を零しながら。
「…ごめんなさい…ごしゅじんさま…の…はをたてました…ごめんなさい……」
「そうだね、おしおきをしないとね…そうだ…醍醐君のを舐めてあげるんだ。それで許してあげよう」
「はい、ごしゅじんさまっ!」
さっきまで泣いていた黒崎はぱっと嬉しそうに笑って。そして。
―――そして……。
「…ああっ…は…」
「…んっ…んんん……」
「…黒崎…やめ…あ……」
「…はぁ…んっ…んん……」
「…駄目だ…また出るっ……」
「…あああっ!……」
「どうだい?メイドに奉仕される気分は…いいものだろう?醍醐君」
お前はまた冷酷とも思える笑みを浮かべると、そのまま足元にあったリモコンを踏み潰した。
「君みたいな淫乱は…挿れっぱなしで…構わないだろう?……」
堕ちる。
堕ちてゆく。
二度と抜けられないこの沼に。
永遠に堕ちてゆく。
けれどもそれは。それは、自分が望んだ事だから……。
End