桜の、森・1


…夢幻の桜の下で。

君が差し伸べた手を、僕はそっと包み込んだ。
冷たい君の手を、少しでも暖めたくて。
その指にそっと絡ませた。

『ずっと、一緒にいよう』

このむせかえる程の桜の下で。ふたりを埋めてゆく桜の下で。
たったひとつだけ、約束をした。…たった、ひとつだけ。
これからふたりに降りかかる運命がどんなものであろうとも、僕はこの桜に誓う。
君だけを、護ってゆくと。
君だけを、愛してゆくと。
それだけを、それだけを誓う。

…君を二度と泣かせは、しないと……

それは。それは桜だけが知っている永遠の、誓い。


<前世編 1 紅の章>



…僕が、貴方の為に出来る事……。

貴方が微笑ってくれるなら。貴方が幸せでいてくれるなら。
…微笑んでくれるのなら。
その為ならば僕は、どんな事でもするから。
どんな事でも、するから。
だから微笑って、ください。
僕はこうして、貴方の傍にしかいる事が出来ないけれど。
貴方の傍で貴方を見つめている事しか出来ないけれど。
それしか、出来ないけれど。
…ずっと…貴方の傍に…いるから…。

たとえそれしか、僕には出来なくても。
それしか出来なくても。それでも。
少しでも僕は貴方の為に、なりたい。

貴方のために僕は何が出来ますか?

覚えているのは、怖い程に紅い夕日。その紅さが怖くてつい、目を閉じた。
「どうしたの?綾乃」
そんな私に貴方の声が優しく降って来る。その声に勇気付けられるように、私は恐る恐る目を開いた。
「…翡翠お兄ちゃん…あ、あのね……」
声と同じ、優しい優しい笑み。幼い私に目線を合わせる為にしゃがみ込んで、そしてそっと大きな手が頭を撫でてくれた。優しい手が、私の頭を撫でてくれた。
「…夕日がね…真っ赤で…怖いの…」
「そうか、でも大丈夫だよ。綾乃には僕が、いるからね」
そう言って私の手をそっと握ってくれて。また頭を撫でてくれた。何度も、何度も。私の顔が笑うまで。私が…怖くなくなるまで…。
「…うん…お兄ちゃん…怖くない…お兄ちゃんがいてくれれば……」
「ああ、ずっと傍にいるよ。ずっと綾乃の傍にね」
頭を撫でてくれていた指がそっと私の前に差し出される。私はその綺麗な指に幼い自らの指を絡めた。そして、そして指きりをする。
「約束しよう、綾乃。僕はこの命が尽きるまで君の傍にいると」
「本当に?」
「本当だよ。この飛水流の名に懸けて」
真っ赤な夕日が、今だけは。今だけは怖いものではなくなる。今、この瞬間だけは。
「大好き、お兄ちゃんっ」
抱きついてきた私を優しく受け止めてくれて、そしてそっと抱きしめてくれた。幼い私はそれだけで、心臓の鼓動が激しくなるのを抑え切れなくて。顔が真っ赤になるのを、止められなくて…。
「ああ、僕も大好きだよ。綾乃」
そしてずっと。ずっとその言葉だけを、信じていた。
…それが私にとって、幼い私にとっての全ての真実だった……

何時から私達は、互いの名前を呼べなくなってしまったのだろうか?
何時から私達は、互いの瞳を真っ直ぐに見つめる事が出来なくなってしまったのだろうか?

「…お呼びですか?姫」
自分の前に座り深々と頭を下げるその姿に、綾乃は一瞬だけ苦しげな顔をした。けれどもそれは本当に一瞬の事で、次の瞬間には何時もの『姫君』の顔へと戻っていた。何時もの、『支配する者』への顔へと。
「顔を上げなさい、翡翠。それよりも例の戦の件ですが」
そう言うと綾乃は如月を自分の傍に近づけた。そうしても彼の顔は何時もと全く変わらない。相変わらず綺麗で、そして何の感情もない。
…当たり前だ…彼は飛水流の忍者の後継ぎ。そして自分は緋勇家のたった一人の姫。立場が違いすぎる。そう、自分は『使う』側の人間で彼は『使われる』側の人間だ。
…昔のままでは…いられは、しない……。
それでも。それでもと、思う。こうして手を伸ばせば触れられる程に近くにあるさらさらの髪と。長い睫毛と、そして。そして、ずっと変わらない綺麗過ぎるその顔と。
ただ年を重ねてしまっただけで、それだけでその全てに触れる事が出来なくなる。触れる、事が。自分は何一つ、変わってはいないのに。あの頃の昔のままの小さな綾乃なのに。それなのに。
…どうして?…
彼は幼い頃の約束通りに自分の傍にいてくれる。ずっと、傍に。でも。でも、その約束すら今は、遠すぎる。とても、遠い。
…貴方が…とても、遠い……。

貴方が辛そうな顔をすると、僕も辛い。
貴方が哀しそうな顔をすると、僕も哀しい。
どうして僕はこんなにも無力なのでしょうか?
どうして僕には何も出来ないのでしょうか?
…誰よりも貴方を想っているのに…それとも…

…想っているだけじゃ…駄目なのかな?……

この時代、戦はいわば『裏』の戦いでもあった。…裏…忍者たちが暗躍する時代。その最中に自分は飛水流の跡取として、この緋勇家に仕えていた。
緋勇家はお世辞にも裕福な家柄とは言えない。ただ武士としての『名』だけが一人歩きしているような、そんな家柄だった。
けれども我が如月家は、飛水流は決してこの主君を代えようとはしないだろう。父は先代の緋勇家の当主に大変世話になったと聞いている。そして自分も。
自分も主君を代えようとは決して思わない。父親…いや、頭の決めた事は絶対だ。そして。そして、何よりも。自分は彼女と、約束したから。
…傍に…いると……
ずっと傍にいると、約束したから。だから。

未来永劫、僕は君に仕える。例えこの命が滅びようとも。

それが、約束。君と僕との。そしてこの血を流れる飛水流の、血の契約。
僕が決めた。その宿命という名の元に。
あの紅の夕日の下で、互いの指を絡め合いながら誓った約束。
それだけが僕の全て。それだけが僕の生きてゆく意味。

「もみじ、おいで」
如月が手を伸ばすと、その黒猫はすんなりと彼の腕の中に納まった。「にゅぅぅー」と一回鳴いて、後はなすがままにその腕の中でくつろぐ。その腕の中にある小さな命が、ふと如月の心を軽くした。
「お前少し、痩せたかい?」
腕の中にすっぽりと納まった小さな生き物がひどく軽く感じられて、如月は心配そうに尋ねる。するともみじは一回「にゃん」と鳴いて彼の顔を見上げた。まるで言葉が通じているとでも言うように。
「心配させないでくれよ」
如月はこの猫の事が心配だった。この小さくて弱い生き物が。父親には忍びたる者生き物など買うべからずと言われていたが、どうしてもこの猫だけは放って置けなかった。
「何時死ぬか分からない自分達が生き物を飼うなど、残酷だろう?」そう、父は言ったのだが。
…それでも、放っておく事は出来なかった。
風が吹いてひとつ、紅い葉を如月の肩に落とした。その葉を見つめながら、ふと如月は思い出す。この小さな命と出会った時の事を。
あの時もこんなに一面が紅い葉で埋め尽くされていた。もう一年になるんだな…そう思うと不思議な気持ち、だった。
…あの時は、本当に死ぬのかと…そう思っていたから。

一面の夕日の紅が、まるで血のようだった。その時初めて、綾乃の言った言葉の真実の意味を理解した気がした。夕日が、怖い。確かにこの圧倒的な紅の色に世界を染められたら、怖いかもしれない。自分の全てをその紅に染められたなら。
その紅い色の中、小さな命が泣いていた。瞼の奥に映る幼い日の、綾乃。小さな、綾乃。大切な、大切な。この世で最も大切な、自分が護らねばならない命。この命に懸けて、この飛水流の血に懸けて。
「…くそっ…こんな所で僕は死ぬ訳にはいかない……」
夕日の色と同じ血が背中から、胸から、溢れている。意識はこの紅に染められ、何処かぼんやりとしている。それでも、それでも自分は死ぬ訳にはいかないのだ。
幼い頃の約束。その約束を護る為に。自分は、死ねない。死ぬことなんて…出来ない。
この夕日と同じ色の下で、指を絡めてした約束を。
独りぼっちの、綾乃。小さな、綾乃。父親は何時も戦でいない。母親は君を産んですぐに亡くなった。僕以外誰も君のそばにはいない。
何時も膝を抱えて、そして泣いている。だから、僕は。僕は君を護る。君を泣かせるもの全てから、僕が君を護るから。
…だから、泣かないでくれ、綾乃。

…泣かないで…くれ……

『…泣かないで…ください……』
何故?僕にそんな事を言うの?泣いているのは、君の方だろ?
『…泣かない…で……』
泣いているのは、君の方だ…綾乃…いや、違う…君は、綾乃じゃ…ない…?
『…貴方を死なせたりはしない…だから…』
君は、誰だ?どうしてそんな哀しげな瞳で僕を見る?そんな瞳で見たら…君よりも僕が、哀しくなる……。
『…だから…泣かないで…』
…僕の方が、哀しくなる……。

「…泣くな……」

手を伸ばして、その頬に触れる。
冷たい頬だった。ひんやりと冷たい。
けれども。
けれども零れ落ちる涙だけは。
涙だけは、暖かかった。

目を開いたと同時に飛び込んできたのは、深くて哀しい黒い瞳だった。その瞳を自分は何処かで知っている気がしたが、その記憶はぼんやりと霞が掛かって薄れてそして消えた。そして次に感じたのは、ざらついた舌の感触。その感触の先が小さな子猫だと気付くのに、混沌とした意識のせいでしばらく時間が掛かった。
「…お前…なのか?……」
そう呟いてみて自分は何に対してそう問いかけたのか、分からなくなった。ただぼんやりとした何かが自分の思考を覆ってそして、全てを何処かへと消し去ってしまった。
まるでぽっかりと胸に穴が空いたようなそんな感覚だった。それは激しいまでの消失感。でもすぐにそれは別の意識に摩り替わって、そして永遠に閉じ込められた。
「にゃぁ…」
そして自分の意識を『今』へと戻すかのように聞こえてくる、その声。一回だけ鳴いたその声が、その言葉の意味を肯定するように聞こえたのは気のせいだろうか?
「…僕を…慰めてくれているの?…」
血まみれの手を伸ばして、その頭に触れてみる。不思議と痛みは無かった。これだけ血に塗れているのに…不思議と痛いとは思わなかった。
「…にゃあ…ん…」
柔らかい、毛だった。その柔らかさが心地よかった。こんなにも小さくてそして弱々しい生き物が懸命に自分を慰めてくれている。それなのに…それなのに自分は…死ぬ訳にはいかない。
…綾乃が、待っている。泣きながら、膝を抱えながら、待っている。それなのに。それなのにこんな所で僕は、死ぬ訳にはいかない。
「…ありがとう…」
その一言にまた、子猫は鳴いた。言葉じゃない何かが、伝わったとでも言うように。言葉以外の何かが、伝わったとでも言うように。
…そして一枚葉が頬に落ちる。夕日よりも紅い葉が。
「…もみじ…か…」
「にゃあ」
「…ふ、じゃあお前は今日から『もみじ』だ。僕と一緒に…くるかい?…」
その言葉にまた子猫が鳴く。そしてまた。

…またひとつ、頬に葉が落ちた。

「もみじ、帰ろうか。もう外は寒いよ」
何時の間にか腕の中で眠ってしまった子猫にそう呟くと、如月は自宅へと向かった。背中にはやはり紅の夕日が溢れていた。けれどもそれを怖いとは、思わなかった。
ただこの小さな生き物を腕の中に抱いて、このまま静かに時が過ぎてゆければ。ただ穏やかに過ぎてゆければ、それがもしかしたら一番の幸せかもしれないと思いながら。

…それが、幸せなのかもしれないと、思いながら……

このまま。このままただ穏やかに。
ふたりだけでいられたらと…
…そんな我が侭を…願った……

紅の色は、嫌い。血の色だから。沢山の命が失われてゆく色だから。
私の大切なものを奪ってゆく色だから。
「…え?……」
私は父の言葉を認めたくなくて、もう一度聴き返した。けれども返って来る言葉は、一寸の狂いも無く同じものだった。

「綾乃、お前の嫁ぎ先が決まった」

…翡翠お兄ちゃん、綾乃大きくなったら翡翠お兄ちゃんのお嫁さんになるの。
僕の、お嫁さんにかい?
…いいでしょー?綾乃がなってもーねーねー
そうだね、綾乃が大きくなっても僕を好きだったらね。
…好きー大好きーずっと好きーーっだからお兄ちゃん…

翡翠お兄ちゃん、綾乃をお嫁さんにしてね

「イヤですっ!!私は嫁になど行きませぬっ!この緋勇家の…緋勇家の名は私が護ります」
「駄目だ、綾乃。もう決まった事だ」
「どうしてですかっ?!どうしてっ?!!お父上はこの緋勇の名が滅びても…構わないと言うのですか?!」
「…お前の為だ…綾乃…」
「…ちち…うえ?……」
「この家など滅びても構わん。わしはお前に人並みの女としての幸せを与えてやりたい」
「…女としての…幸せ?……」
そんなもの…そんなもの、いらない。私はいらない。私が欲しいのは……
「綾乃…お前の気持ちは分かっている…でも…駄目だ…」
私が欲しいのは…お兄様…だけ…翡翠お兄様…だけ……。
「…何故…ですか?……」
「駄目だ、あいつは忍びに生きるものだ。何時死ぬか分からない。そして本人もそれを自覚している。そんな男の元へやればお前が苦しむだけだ」
「いやですっ!!そんな…そんな理由でっ!!」
「それにあの男は…飛水の血からは逃れられん。だからお前を受け入れはしない…綾乃っ!!」
私は気付いた時には、その場を駆け出していた。ただ、逢いたかった。
…逢いたかった、あの人に……

紅の色、紅の夕日。私はこの紅が、嫌い。
貴方がいなければ。貴方が手を繋いでくれなければ。
私は怖くて目を開ける事すら出来ないの…。

「…姫?…」
一瞬だけ驚愕に見開かれた顔はけれどもすぐに、何時もの冷静な顔へと戻っていった。何時もの、何時ものこの人の顔へと。
「外は寒いですよ…中へ入りますか?」
その言葉に私はこくりと頷いた。その顔は『姫』では無く幼いただの子供のままの私だった。
紅の夕日の下で、泣いていたただの独りの子供だった。

…僕が…貴方の為に…出来る、こと。
苦しまないでください。哀しまないでください。
貴方のせいではないのだから。
貴方のせいじゃ、ないのだから。
…どうしたら…どうしたら……
貴方に僕の言葉は伝わるのですか?

綾乃は、泣いていた。何時もの『姫』の顔を崩して。子供のままの僕が知っている、知っている彼女の顔になって。膝を抱えて心で泣いている。それが僕には分かったから。だから、僕は彼女を拒めなかった。
必要以上に近づく事は僕にもそして何よりも彼女の為にならないと分かっていても。それでも。
それでも僕には彼女を見過ごす事なんて出来はしなかった。

…君を護る事が、僕の全て……

「…翡翠…兄さん……」
あの頃のように名前を、呼んだ。それはふんわりと口の中に溶けるように甘い、響きだった。甘くて、そして苦しい程に切ないその響き。
「何?綾乃」
「そうやって翡翠兄さんが呼んでくれたのは何年振りかしら…そして何時から私達互いをこうやって呼び合わなくなったのかしら?」
「僕達が『大人』になった日から」
「私はまだ子供のまま…あの頃のままの綾乃なのに?…」
「でも君の髪は伸びた。君の背も。そして君は綺麗になった。もう君は幼い綾乃じゃあない」
「…ならば…翡翠兄さん…いいえ…翡翠…」

「…大人になった…私を…見て……」

するりと着物が落ちる音がする。私は他人事のようにそれを見つめた。自分から着物をはだけたくせに。
「…抱いて…翡翠……」
ゆっくりと貴方に近づく。ゆっくりとふたりの距離を埋める。それは幼い日々からどれだけ過ぎて行った時間だったのだろうか?その時間を、埋めたくて。
「それは出来ない」
けれどもそれは叶わなかった。彼の綺麗な指先がそれを押し止めて。私を、押し止めて。
「どうして?私の事は嫌いなのっ?!」
「好きだよ。誰よりも大事に思っている。だから抱けないよ」
「…大事だったら…大事だったら抱いてよっ私を他の男に渡さないでっ!!」
「僕は、飛水流の忍びだ。そして君に仕える……」
「そんなものっそんなものが大事なのっ?!私よりも大切なのっ?!!」
「君より大切なものは無いよ。だって、綾乃…」

「…君は僕にとって唯一の…『家族』なのだから……」

「…ひ…すい…」
「血は繋がっていなくても、君は僕にとって唯一の妹だ。それは未来永劫変わらない。大事な大事な妹なんだ」
「…妹…なの?…貴方にとって…私は……」
「だから、綾乃。君には誰よりも幸せになってほしい。ただそれだけを祈っている」
「……私は…貴方の……」
それ以上はもう、言葉にはならなかった。ただ溢れる涙が言葉を消して。もう何も、何も言葉には…出来なかった……。

…貴方の…哀しそうな顔は…見たくはない……
貴方のそんな顔は、見たくない。
どうしたら?どうしたら…何時ものように微笑ってくれますか?

「…もみじ……」
足元に擦り寄ってきたその小さな身体を抱き上げて、そしてそっと腕の中へと閉じ込めた。
「僕は酷い、男なのか?」
誰よりも何よりも大切な存在。永遠に傍にいると、そして護ると誓った存在。それなのに泣かしてしまった。泣かせたくないと何時も、何時もそれだけを思っているのに。
「…酷い、男だな…。結局僕は綾乃を傷つけるだけでしか…なかったのだから……」
それだけを、想っているのに。

にゃあとまた、もみじが鳴いた。それは泣いているよう、だった。

「…父上…綾乃は…嫁ぎます……」
「……綾乃……」
「…私は…あの人の飛水の呪縛を取る事が出来ませんでした……」

あの人の呪縛を解くのは…私ではなかった。
私はあの人にとって『護るべき者』以上の存在になれなかった。
…貴方にとって…飛水流よりも大切なものは何?
その宿命を運命を、解き放つほどの存在を貴方は手に入れられるの?
私はそんな日が来ない事を願った。
そうすれば貴方は、何時までも私に縛られているから。
何時までも私の『翡翠お兄ちゃん』で、いてくれるから。

紅の色、紅の夕日。
私はやはりこの色が嫌い。
貴方がいないから。
貴方が傍にいないから。
…だから、嫌い……。

そして私は一面の紅の葉に包まれながら。
幼い自分を、置き去りにした。
この紅の森の中に。

私は幼い『綾乃』を埋めた。

…さよなら…翡翠兄さん…
貴方の綾乃はもうどこにもいません。
…もう何処にも…いないの……。

……さよなら………

この一面の紅の森を後にして、彼女は僕の前から消えた。僕の後を必死で追い駆けていた、幼い彼女はもう、何処にもいない。
今目の前を通り過ぎて行く彼女は…

ただの独りの『花嫁』だった……。



End

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