血の契り
…私達ずっと。ずっと、一緒ですよね…お姉様……
生まれる前から、ずっと。
ずっと私達は繋がっていたから。
身体もこころも魂も、ずっと。
―――ずっと繋がっていた…から……
「…お姉様…」
私達は生まれる前から、ずっと。ずっと一つに繋がっていた。子宮の中で引き剥がされた、もう独りの私。たったひとつの片割れ。
「――雛…?」
お姉様は、私。私は、お姉様。同じで違うもの。違うけど同じもの。ひとつだったものがふたつに引き裂かれた。
「私のお姉様」
だからもう一度。もう一度私達ひとつになりましょう。ねぇ、お姉様。
「…雛…お前…なんかオカシイぞ……」
「――私だけの…お姉様……」
もう一度ちゃんと、ひとつになりましょう……
誰にも、渡したくはないの。
お姉さまは、私の。私だけの。
誰にも、誰にも、渡さない。
お姉様は私のもの、私はお姉様のものだから。
―――それは子宮の中でもぎ取られたただひとつの半身。
「―――んっ!!」
言葉を紡ぐ前にその唇が塞いできた。男とすらキスなんてした事なかったのに、実の妹にその唇を奪われて、そして。
「…やめっ…ん…ふぅっ……」
そして生き物のような舌がオレの口の中に入ってきて、強引に絡め取られる。強引だったけど、何処か優しくて。優しいから頭の芯がぼーっとしてきて。
「…ふぅん…はぁ…ん…はふぅ……」
抵抗しようと、押し退けようとして出した手が、何時しか袖口を掴んでいた。そのままぎゅっと握り締め背中から這い上がってくる『何か』から必死で堪えた。
「…やめ…雛……はっ…」
「くすくす、お姉様可愛いです。私だけのお姉様……」
細くしなやかな指がオレの顎に掛かり、飲みきれなかった唾液を掬う。そしてそのままお前は自らの指をぺろぺろと舐めた。オレの唾液が伝った指先を。
「…やめ…お前…どうしてこんな…あっ……」
その指が首筋を伝って、そのまま胸元のボタンを外した。巻いていたさらしを解かれ、肌が露出する。今まで裸など何度も妹に見られてきた。なのに今は。今は何故かどうしようもない程に恥ずかしい。
「お姉様の胸、綺麗です。大きくてそして…柔らかい…」
「…ああんっ!……」
指が、濡れた指が、胸に触れた。ぺとぺとの指が、オレの胸を掴んでそのまま揉み解す。手のひらに納まりきらない胸を鷲づかみにして、きつく握られた。
「…あぁっ…あん…止め…雛…やめろって…あぁ……」
幾ら否定の言葉を口にしても零れてくるのは甘い声だけだった。それがイヤで、それ以上の反撃の言葉が出てこない。そんなオレにお前の指が、唇が、胸を弄ってゆく。
「…あぁ…ダメ…ダメだって…雛…あぁぁ……」
乳首がぷくりとたち上がり、痛いほどに張り詰めているのが分かる。そこに指が触れるだけで、それを指で転がされるだけで、オレは。オレは……。
「…あぁ…もぉ…やめ…やぁっ……」
―――オレの神経は次第に犯され、そしておかしくなってゆく。
一緒、だったの。ずっと、ずっとね。
私たちは、本当はひとつだったの。ひとつ、なの。
だからね、お姉様もう一度。もう一度私たち。
―――私たち、ひとつに…なりましょう……
「ひぁっ!!」
脚を広げられ、花びらを剥き出しにされる。そしてソコに生暖かい舌が、忍び込んできた。
「…やめ…雛…そんなトコ…そんなトコ…舐める…なぁっ……」
「どうしてですか?綺麗ですよ、お姉様のココ、凄く綺麗ですよ」
ぴちゃぴちゃとわざと音を立てながらお前はオレの秘所を舌で舐める。まるで犬のように、ぺろぺろと、オレのソコを。
「…やぁ…やめ…変に…オレ…変に…ああんっ……」
「ふふ、お姉様、こんなにたっぷりと蜜が零れていますよ…感じているんですね」
「…やめろ…そんな事…言うなぁ…ああ……」
じゅんっと子宮が感じているのが分かる。それはオレが今まで経験したことのない感覚だった。今まで知らなかった、感覚だった。
一体オレは。オレは何処まで何処へ行かされてしまうのだろうか?一体何処へ、オレは…。
「…あぁ…もぉ…分かんねーよ…オレ…あぁぁ……」
「くすくす、可愛いです。お姉様…私だけのお姉様」
突然の喪失感。舌がソコから離れたのが分かった。けれども。けれどもオレのソコは、舌を。その動きを、求めていて。刺激を、求めていて。
「…ぁぁ…雛…オレ…オレ……」
腰が無意識に動いていた。オレは何時しかお前にソコを押し付けていた。欲しくて。刺激が、欲しくて、どうしようもなくて、オレは。
「大丈夫ですよ、もっと。もっとたっぷり可愛がってあげますから」
そう言って雛はにっこりと笑った。それはオレが知っている、ずっとオレが見てきたお前の子供のような笑顔、だった。
「…ああんっ…くふぅ…はぁっ…ん……」
指が、中に入っている。何本入っているのか、もう分からない。ただ。ただ指がオレの中を掻き乱して、捏ね繰り回して。
「…あぁ…はぁぁ…あんっ…雛…雛ぁ……」
ぐちゅぐちゅと、音がしている。その音が耳に届くたびにさぁぁっとオレの身体が朱に染まる。けれども。けれどももう『やめろ』とは口に出せない。出てくるのは甘い、自分の知らない甘い声だけだった。
「…ああぁ…ああんっ……」
「お姉様、私も…私も…良くしてください」
「…あっ……」
開いていたほうのお前の手が、オレの手を取ってお前のソコへと導いた。ソコは指が触れただけでぐしゅぐしゅに濡れていた。
「…お姉様…私のココも…ね、…お姉様……」
「…あぁ…ぁぁ……」
何時しか俺の手はお前のソコへと入っていった。そしてオレがさけているのと同じように中を指で、掻き乱す。そのたびにオレの指が、濡れてゆく。
「…ああ…お姉様…イイです…イイです…ああんっ……」
「…はぁぁっ…雛っ…雛…ああんっ……」
「…もっと…もっと…お姉様…んっ…んんん…」
唇が、触れた。そしてそのまま舌を絡め合う。もう何がなんだか分からなくて。ただ与えられる快感を、与える感覚を、追って求めるだけで。
「…んんんっ…ふぅんっ…んんん…」
「…んんっ…はぁぁっ…はふぅっ……」
指が互いのソコから引き抜かれ、そのまま腰を押し付けて擦り合わせた。濡れぼそった秘所を腰を揺すりながら、擦り合わせた。その摩擦が、何時しかオレの意識を遠ざけて。そして。―――そして。
「――――ああああんっ!!!」
何か大きなモノがオレを飲み込んだような気がしたと思ったら、視界が真っ白になった。
足りないもの、ぽっかりと開いた空洞。
それがここに。ここにあるから。
手を伸ばした先に、お姉様の中に。
私の空洞と、お姉様の空洞は。
互いの中に存在するから。だから、お姉様。
―――私たちは、ひとつにならなければならないの……
唇が、触れた。そっと、触れた。
そして舌が忍び込んで、そして。
…そして、舌を、噛み切って………
「…雛……」
「…これで…ひとつになれる……」
「…ひ、な……」
「……ね、これで血が交じり合って…ひとつに……」
「…ひとつ、に………」
口の中で交じり合う血。血の、契り。
子宮の中からそれは、きっと。
きっと約束されていたものだから。この血が。
この血が、交じり合ってひとつになる事が。
――――ただひとつ、血の、契りが……
End