人形

――――ただ静かに、穏やかに、生きていたかっただけなのに……


何も、望みはしなかった。欲しかったものは『平凡なしあわせ』で。特別なものも、何も欲しいとは思わなかった。ただこの静かな村でひっそりと暮らせればそれだけで、よかった。
人形達に囲まれて、明日の天気を心配するような毎日を。そんな平凡で穏やかな毎日を、過ごせればそれだけでよかった。


わらわの、願い。わらわの、希望。わらわの、夢。
ただ皆が楽しく暮らせるようにと。穏やかに過ごせるようにと。


――――そんなささやかなものが、何よりもかけがえのないものだった……


指に絡まる糸だけが。この糸だけが。
そしてそなただけが、知っている。
そなただけが、わらわの全てを知っている。


指に絡まる糸と、そしてそなただけが…ただひとつのわらわに残されたもの……



目の前が、一面血の海になっていた。その紅が火の色なのか、血なのか、もう雹には区別がつかなくなっていた。生臭い匂いと、焼け爛れた匂いと。それがごちゃ混ぜになって室内を埋め、そして男達の卑下た笑い声だけが響いていた。
「へへへ、お姫様もう逃げられねーぞ」
武士の格好をした男が、楽しそうに笑いながら言う。その瞳に醜い欲望の光を含ませながら。その男が雹の前に立つと、別の男が彼女の華奢な身体を後ろから羽交い締めにした。抵抗しようと身体を捩るが、大人の男の力の前ではどうにもならなかった。
「―――わらわに触るなっ!」
それでもその瞳はきつく目の前の男達を睨み返す。それが彼女にとっての最期の自尊心だった。どんな時でも常に強くあれと。人形遣いの一族としての誇りだけが、この少女にとっての最期の砦でもあった。けれども今そんな少女の誇りすらも、幕府の男達は踏みにじろうとしている。

―――性と云う、どうする事も出来ない暴力によって。


ただ平凡なしあわせだけを願っていた。
天下など、そんなものなど望みはしない。
そんなものに価値など見出せなかった。
ただ、ただ、平凡に。ただ、ただ、静かに。
穏やかに暮らしていきたかっただけなのに。


どうして、わらわ達が一体何をしたというのじゃ?わらわが何をしたと言うのじゃ?


自分に覆い被さってくる男を唯一自由になる脚で、思いっきり蹴り上げた。足をばたつかせて激しく抵抗する。それに業を煮やした男の一人が思いっきり雹の脚を切りつけた。
「あうううっ!!!」
その激しい痛みに初めて少女の口から悲鳴が漏れる。男達に圧し掛かられても気丈にも抵抗し続けた彼女の口から。
「へへへ、イイ声じゃねーか…そういうのが聴きたかったんだぜ」
「…っ!……」
その言葉に雹はきっと唇を噛み締めて悲鳴を堪えた。自分が悲鳴を上げる事でこの男達を喜ばせる事は、彼女の心が許さなかった。意識すら失いそうになる痛みを必死に堪え、男達を睨み付ける。それは壮絶なまでに綺麗で、そして逆に男達に別の欲望を芽生えさせた。
その自尊心を粉々にして、滅茶苦茶にしてやりたいと。その唇から甘い声を上げさせて、あられもなく乱れさせたいと。
「まあいいさ、今からたっぷり聞けるんだしよ…どーせ殺されるんだ、最期にじっくり楽しもうぜ」
「離せっ!わらわを離せっ!―――あっ!!」
再び男は圧し掛かると、そのまま雹の胸元を肌蹴させた。そのまま襦袢に手を突っ込むと、柔らかな雹の乳房を力任せに握り締めた。
「やっ!止めるのじゃっ!!いやっ!!」
強い力で握られ、痛みに耐えきれずに雹の口から悲鳴のような声が零れる。それを堪えようと唇を噛み締めようとしたら、再び胸を強く握り締められた。
「いやっ!!止めっ!止め―――っ!!」
首を左右に振って抵抗から逃れようとしても、ただ漆黒の髪が揺れるだけでしかなかった。むしろ男達にとって乱れる長い黒髪すらも欲望の対象になっていた。
「へへ、柔らかけーなぁ。流石姫様と言われているだけあるねぇ、ケケ」
「いやあっ!!」
ビリリと音と共に襦袢が引き千切られ、帯の部分まで広げられた袖口から白い胸が覗く。それは若さゆえの弾力と、そして透き通るほどの白さを持つ極上の二つの膨らみだった。
「いい形してんじゃねーかよ、俺にも触らせろ」
「いやっ…ああっ!」
雹の上半身を引っ張り上げると、別の男が後ろから彼女を抱きしめ、両の胸を揉み解す。柔らかな白い肌は揉むたびに指の隙間から零れる。けれども弾力のある乳房が指を跳ね返し、その抵抗感がまた男の指の動きを活発にさせた。
「…ああっ…止め…止めるのじゃ…あぁ……」
首を左右に振って必死に抵抗をしても、口からは自然と甘い息が零れて来るのを抑え切れない。その間にも背後の男の指は外側の柔らかい部分から桜色の胸の果実へと移り、それをカリリと爪で抉った。
「いやぁんっ!」
その刺激に一瞬電流が走ったように、雹の身体がピクンっと跳ねる。その様子を目の前で楽しんでいた男が、ククと笑いながらその尖った果実を口に含んだ。そしてちろちろと舌で嬲る。
「…いやぁ……そこは…あぁっ……」
指で突起を引っ張られ、別の男がその突起を貪る。肩に掛かっていた着物は何時しかずるりと腕から抜け落ち、雹のしなやかな身体が男達の前に晒させる。透明なほど白い肌が羞恥と快楽で朱に染まり、それが益々男達の欲望を煽っていった。
「…もう…止め…やぁぁ………」
ぴちゃぴちゃと音を立てながら乳首を吸っていた男の動きが止まる。どろりとした唾液をたっぷりと胸に濡らして、唇が離れた。その瞬間、雹の身体が一瞬弛緩したのを男達は逃さなかった。
「やああああっ!!!」
雹の身体を畳の下に押し付けると、腱を切られ動かなくなった両足を掲げそのまま限界まで広げさせる。雹の意思から離れた脚は抵抗する事無く開かされ、彼女の一番大事な部分を男たちの前に曝け出された。
「へへへ、綺麗な色をしてるじゃねーか…お前生娘か?へへへ」
男の太い指が茂みを掻き分け、まだ開かれていない雹の蕾へと辿り着く。そのまま外側の柔らかい部分をなぞれば、小刻みに彼女の身体が痙攣した。
「…やめっ…見るな…そんな所……」
目をぎゅっと閉じその陵辱に耐えようとした。けれども外側をなぞる指の感触が目を閉じれば閉じるほど逆に伝わり、雹の肌を益々朱に染めてゆく。そして。
「さーて、具合はどうかな?」
「―――ひあっ!!」
男の指がまだ雹ですら触れた事のない場所へと入ってゆく。狭すぎるソコは太い男の指を中々受け入れてはくれなかった。けれども構わずにずぶずぶと男は指を埋めてゆく。そのたびにぎゅっと指を媚肉が締めつけ、益々雹を苦しめた。
「…痛い…いやじゃ…いやじゃ…抜いて…あぁぁ……」
指を折り曲げ中を掻き乱せば雹の口からは悲鳴のような声が零れる。綺麗な顔が苦痛に歪み、目尻からは涙を零れさせた。けれども皮肉にもその表情こそが何よりも男たちの見たかったものだった。
「ああっ!!」
男の指が雹の一番感じる個所を探り当てると、そのままソコをぎゅっと摘んだ。その刺激に身体が波打ち、唇から唾液が零れて来る。男は指先が濡れてゆくのを楽しみながら、何度もソコを摘んだ。
「…あああんっ…駄目じゃ…ソコは…いやぁぁぁんっ…」
「何が駄目なんだ?こんなにも俺の指を濡らしておきながら、本当はイイんだろう?ほら」
「あああんっ!」
「イイんだろ?ここが。ほらこんなに剥き出しになってるぜ、イヤらしい姫様だなあ」
「…ああ…止め…ソコは…止め…あぁぁ……」
「おい、そのくらいにしろよ。もう俺我慢出来ねーんだよ」
「しゃーねえな。全く好きものがよ」
遠ざかりかけていた雹の意識が不意に呼び戻される。それは皮肉にも雹の中を犯していた指が引き抜かれた感触によって。そして。
「まあ、一番は俺が貰うからな…ご開帳だぜ――姫様」
そして、その言葉に初めて。初めて雹の瞳に『怯え』が…走った……。



生まれて初めて与えられたのは一本の糸。
人形遣いの娘にとってそれは命よりも大事な命。
そして。そして自分よりも大事な自分を作る。
この手で、作る。自らの伴侶を。自らの分身を。


『…ガンリュウ……』


わらわが初めて作った人形だった。初めて作った想いだった。
わらわの心の鏡。わらわの永遠の片翼。わらわの永遠の…伴侶。
どんな時もともにいると、どんな時でも独りではないと。


この指先に絡まる糸だけが、それを教えてくれた。




「ひああああああっ!!!!!」




硬いものが入り口に当たったと思った瞬間、雹の身体は真っ二つに引き裂かれた。男の熱く硬い欲望が、雹の蕾を引き裂き真っ赤な血を流させた。白い太ももに生暖かい血がぽたりぽたりと零れ、他の死骸から飛び散ったどす黒い血の上に重なった。
「ああああっ!!あああああっ!!!」
「流石初物…きついぜ。このままじゃ引き千切られちまう」
「痛いっ痛いっ!!あああ…抜いて…抜いてぇっ!」
漆黒の髪が振り乱され、白い肌からは汗が飛び散る。瞳からは幾筋もの涙が零れ、口許からは唾液が零れ落ちた。口を閉じたくとも貫かれる痛みが悲鳴を上げさせ、揺さぶられるたびに形良い眉が苦痛に歪む。
そこに、快楽など何処にもなかった。ただ何の罪もない少女が幕府と云う名の理不尽な権力に犯され、そして踏み躙られている。それが今ここで行われている現実だった。それが、現実だった。
「うるさい口だ。ほらこれでも咥えていな」
別の男が髪を掴み、そのまま剥き出しになった自身を雹の口に突っ込む。苦痛で耐えず開かされていた唇は、抵抗する間もなくソレを咥えさせられた。
「うっぐぅっ!」
「へへへ、いいぜ。いいぜ、ほらほら」
「んんんっ!!んんんんんっ!!!」
髪を掴み自ら腰を揺さぶりながら、雹の口中を男が犯す。その間にも雹の蕾には楔が打ち込まれ、何度も何度も肉を擦れ合わさせられた。その様子を見ていた他の男たちが耐えきれずに雹の綺麗な指を掴むと、そのまま自らの欲望を握らせる。別の男は雹の上に跨り胸を掴むと、その間に楔を挟ませて擦り合わせた。
「んんっ…ふくっ!…んぐっ!!!」
男たちは笑う。罪のかけらもない笑みで。自らの欲望を満たすために腰を揺すり肉を抉り、少女を犯す。それが『正義』だと、高々に告げながら。幕府が全て正しいからだと。自らが正義だからと。その為にこうして罪のない少女が犯される事すら、当然だとでも言うように。

――――それが『正義』だと、当然のように……


望んだものは、ただ。ただ平凡なしあわせ。
小さな村のこの人々が穏やかに暮らせるようにと。
静かに、平凡だけど満たされるそんな日々を。
そんな日々を、ただ。ただ願っていただけなのに。


…何も欲しくない、権力も金も力も。何もいらないから……



「ああああああああっ!!!!!」



喉まで仰け反らせ雹が悲鳴を上げる。それと同じに雹の中に、顔に、身体に、大量の男たちの欲望が浴びせられた。それは身体に染みつくほどの、欲望の匂いだった。



「…ガン…リュ…ウ……」



意識が遠ざかる寸前、雹はか細い声でその名を呼んだ。
それは彼女の無意識の、意識だった。




…そして悲鳴が、聴こえた。男たちの…獣の悲鳴が……



ただひとつ、繋がっているもの。ただひとつ、残されたもの。
それは目の前の人間の形をした獣よりもずっと。ずっと人間らしい。
命はないけれど、血も流れてはいないけれど。それでも。
それでもこうして。こうして感じることが出来る暖かいもの。


――――あたたかい、もの……



「…ガン…リュウ……」




気付いた時には自分はこの人形の腕の中にいた。ぬくもりも何もないはずなのに、何故かこの腕を暖かく感じる。ひどく、暖かく感じる。
「…ガンリュウ?……」
その名前を呼んでも決してその人形は答えることはない。自らの糸で動くこの入れ物には、その声が返って来ることはない。けれども。けれ、ども。
「…血?……」
その瞳から零れて来る水滴は…流れてきた水滴は、真っ赤な血。そしてさっきまで自分を犯していた男たちの死骸が、一面に広がっていた。
「…わらわが…やったのか?……」
この糸を無意識のうちに操り、そして。そしし彼らを殺したのは、自分なのか?それとも。それ、とも?
「…それ…とも?……」



雹の問いにその人形は決して答えることがなかった。
ただ瞳から零れる血だけが。ぽたり、ぽたりと、零れる血だけが。




それが男たちの返り血なのか、また別なものなのか…今の雹には、分からなかった……




End

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