秘密


見上げた夜空にぽっんりと浮かぶ月。
丸いその月を、不意に切り取って。そして。
そして食べたら美味しいかな?なんて思った。

こんな事三蔵に話したらバカにされると、思ったから言わなかったけれど。


何時までも俺は子供で。
あいつにとってはずっと。
ずっとずっと、子供で。
どんなに背伸びしても。
どんなに手を伸ばしても。

―――この距離が縮まることはなくて……


どうしたら、そばにゆけるのか。どうしたら、近付けるのか。そんな事ばかり何時も考えていて。でも考えても、距離が縮まることはなくて。
「―――おい、何してんだ?サル」
「あ、悟浄」
背後から掛けられる声に振り返れば、タオルで無造作に髪を拭いている悟浄がいた。風呂上がりのせいかひどく、濡れた匂いがした。
「って俺サルじゃねーよっ!」
ベッドの上に座ったままで、不貞腐れたように悟浄を見上げれば。そのままくしゃりと髪を、撫でられた。そして。
「拗ねんなよ、バカ。だから何時までもお前はガキなんだよ」
そしてそのまま。そのまま降りてくる唇に、俺は眼を閉じて受け入れた。


秘密が出来るたびに、少しだけ。
少しだけ大人になれるような気がした。
少しだけお前近付けて、そして。
そして段々遠ざかってゆくような気持ち。
それでも止められないのは。止められないのは。


――――少しでも早く…大人になりたかったから……


「ガキの癖に…色気づきやがって…ヤッて欲しいのか?」
背中に手を、廻した。広い背中に。何時しかこの背中に腕を廻すとひどく落ち付いている自分に気が付いた。ひどく、落ち付いている自分に。
「…お前が教えたんだ、悟浄」
何も知らない俺を抱いたのはお前。その腕に抱いたのはお前。誰でも良かったわけじゃない。けれども誰が良かったわけでもない。
「いいだろ、お前悦んでんだろーが」
手が伸びて来て俺の上着を脱がすと、そのまま胸に指が触れてきた。尖った胸を指がぎゅっと摘まむ。それだけでびくんっと俺の身体が跳ねた。
「…やぁっ…んっ…」
「イヤじゃねーだろ、サルが」
「…あぁっ…はっ……」
何度も胸を指で弄られる。尖った乳首を指の腹で転がされ、そして爪をくいっと立てられれば。耐えきれずに口から零れるのは甘い悲鳴だけで。
「…あぁっ…はぁぁっ…あ……」
そのまま圧し掛かるようにベッドに押し倒されて、伸びてくる舌に自らのそれを絡めながら。絡めながら、俺達はベッドの上でもつれ合うように倒れた。



『そんなに、あいつが好きか?』
意識を失ったまま目を空けない三蔵を、ずっとお前は待ち続けていた。
『…悟浄……』
まるで魂がなくなった抜け殻のように呆然としているお前。人形のような、お前。
『―――好きでも…構わねー…でも今だけは』
そんなお前を見たくなかったから。そんなお前が嫌だったから、俺は。
『今だけは…忘れさせてやんよ……』
抜け殻のお前を、この腕に抱いた。人形のようなお前を、俺は貫いた。



好きだと思うたびに胸が痛んで。
苦しくて切なくて、それから逃れるために。
必死で逃れるために、俺は。
この熱を求めるのは卑怯なのかな?


「―――ああああっ!!」
腰を掴まれ一気に貫かれる。その衝撃に身体が跳ねて、そして貫かれる痛みに眉が歪んだ。それでも俺は必死に背中に手を廻して、その衝撃に耐えて。耐えて、その楔を身体に迎え入れた。
「…あああっ…あ…悟浄っ……」
痛みは何時しか快楽に摩り替わってゆく。こうして身体を貫かれる行為がこんなにも。こんなにも激しい快楽を与えるものだとは…分からなかった。
自らの意思も想いも何もかもを飛ばしてしまう、頭から犯されてゆくようなそんな感覚。
「…あぁぁっ…ああんっ…あんっ……」
「相変わらずキツいな、お前…ソコが堪んねーんだけどよ」
髪を撫でられた。優しい指先だと思った。この指にずっと触れられていたら俺は。俺はお前を好きになれるかな?三蔵よりも好きに、なれるかな?そうしたら…楽に…なれるかな?

―――ううんきっと…きっともっと…辛くなるだけだ……

それでも、こうして。
こうして、この腕を。
腕を、指先を、唇を、熱さを。
求めずにはいられない俺は。
こうして全てが無になる瞬間を。
求めずにはいられない俺は。



「ああああっ!!!」



頭が真っ白になる、瞬間。
意識が真っ白になる、瞬間。
身体の中に注がれた熱が。
注がれた液体が、全てを。

―――全てを…忘れさせてくれる瞬間……


秘密が、ひとつずつ。
ひとつずつ、増えてゆく。
言えない秘密がこうして。
こうして胸に降り積もって。
何時しか全てを埋めた時に。

――――俺はきっと、何かを失うのだろう。



「…気絶しちまったか…サルが……」
意識のない唇にそっと口付け。そして髪を撫でてやっても瞳は答えることはない。それでも、指先も唇も、止まることはなくて。
「…そんなにも…アイツが…いいか?……」
付け込んだのは自分。お前の想いを気付いて付け込んで、そして手に入れたのは自分。そして何時しか俺は。
「…アイツが…いいか?……」
何時しか俺は…お前もアイツも失う日が来るかも…しれない……。



この胸に宿る秘密が、何時しか溢れだしそして。そして誰かを必ず傷つけるのだろう。



    END

 

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