巡りゆく季節の中で



少しづつ時は流れていって。
ゆっくりと気付いてゆくもの。
心の中に降り積もり、そして。

そしてそっと、心に宿ったただひとつの想い。



初めて手を繋いだのも。
初めて言葉を交わしたのも。
初めて見つめあったのも。
初めて好きになったのも。

―――全部、全部、お兄ちゃんだった…から……


ただ一つの言葉を信じて。ただ一つの約束を信じて。ずっと、待っていた。ずっと、ずっと、待っていた。
「―――プラム……」
呼ばれた声に振り返れば、そこに。そこには自分の記憶と全然変わらない、けれども少しだけ違うその顔があった。
―――お兄ちゃん、と呼ぼうとして。呼ぼうとして声が出なくて。何時ものようにあの頃のように呼ぼうとしたのに何故か寸での所でその声は止まって。そして。
「迎えにきた、お前を」
差し出された手を、ただ。ただ握り返す事しか、出来なかった。


ずっと、変わっていないのに。
全然変わっていないのに、でも。
でもやっぱり何処か違う。違う、から。
それが嬉しくて、そして少しだけ淋しくて。
どうしてなのかな?どうしてなんだろう?

このままでいたいと思いながら、それでも変わりたいと願っている自分。


「…お兄ちゃん……」
やっと声が、出た。それは自分でも驚くほど弱々しい声で。そして。そして気付けば瞳からは涙が零れていた。ぽたりと、零れていた。
「相変わらずだ、お前は泣き虫だ」
ずっと一緒にいたかった。ずっとふたりでいたかった。あの頃のように、あの頃のままで。大切な兄妹として。
「…だって…お兄ちゃんが……」
離れたかった。ずっと離れたいと思っていた。もうあの頃のように、あの頃の思いでは。傍にいる事が出来ないから。
「驚いたか?」
変わるのが怖くて、でも変わらないのも切なくて。どうしていいのか分からなかったから。分からなかった、から。でも。
「…うん…驚いた…でもね……」
でも今、気がついた。こうして変わらない大きさと優しさを持っているお兄ちゃんが違う風に思えたのは。少しだけ別人のように思えたのは。それは私が。
「…でも…嬉しいよ、お兄ちゃん……」
―――私が貴方を、好きだから……


ただひとつの約束だけを信じて待っていた。
待っている間は何も怖くはなかった。
その間ずっと。ずっとお兄ちゃんの事だけを考えていたから。
でもこうして。こうして迎えに来てくれた瞬間怖くなった。
私の気持ちが以前とは変わってしまって、そして。
そしてお兄ちゃんの私への気持ちとずれていたらと。
違うものになっていたらと、そう思ったら怖くなった。
でも今こうして。こうして、お兄ちゃんの顔を見ていたら。

…やっぱり好きだと云う気持ちが…勝っていた、から……


「プラム、その…」
「何?お兄ちゃん」
「…俺…レオンハート様に、言わねーといけない事がある」
「何を?」
「…その…あの…俺……」



「…お前を…くださいって……」



初めて、声を聴いた男の人。
初めて、見つめあった男の人。
初めて、好きになった男の人。

それは全部。全部、お兄ちゃんだから。


「―――プ、プラム…その…な、泣いてるのか?」
そっと手が伸びてぎこちない動作で私の涙を拭う。その手は優しくて。苦しいくらい優しくて。
「…だって…お兄ちゃん……」
優しすぎる、から。だから涙が止まらないの。止まら、ない。
「…あ、迷惑だったか?…お前の気持ち…はその……」
「違う…お兄ちゃん…私…私…」

「…嬉しい…お兄ちゃん……」


見つめ、あった。初めて目を合わした時のように、真っ直ぐに。真っ直ぐに見つめた。思えばずっと私は。私はお兄ちゃんだけを見ていた。実の兄だと思っていた時も、迷う事無くずっと。ずっと貴方だけを、見ていた。
「好き、お兄ちゃん」
繋がっている手にぎゅっと力を込めて、そのまま。そのまま自分からキスをした。その瞬間お兄ちゃんの手がびくっと動いたが、次の瞬間に私の身体は引っ張られそのまま抱きしめられた。
「…お兄…ちゃん……」
唇が離れて、そしてもう一度見つめあった。少しだけ頬が赤くなりながらも、貴方は微笑った。私が一番大好きな、顔で。そして、そっと私の身体から手を離す。
「お兄ちゃん?」
「ダメだ俺…このままじゃ……」
疑問に思った私に少しだけ困った顔で貴方は言った。戸惑いながら、ぽつりと。
「…このままじゃ俺…お前の事……」
その先を言う前に私は。私は自分からその腕に飛び込んで、そして。そしてキスを、した。


多分きっと、今。
今私達が思っていることは。
心の中で思っている事は。
同じ、だから。

だって、分かるよ。貴方は。
貴方は初めて私が声を聴いた男の人。
貴方は初めて私が言葉を交わした男の人。
何時も、何時も私の初めてには貴方がいるから。
だから私、初めて好きになった人と。

―――初めて好きになった人と、ひとつになりたい……


ぱさりと乾いた音がして、シーツの上に身体を横たえられた。ひんやりとした感触が火照った頬には心地よかった。
「…いいのか?プラム…俺……」
「聴かないで、私。私お兄ちゃんが好き」
「―――プラム」
「…お兄ちゃんが、大好きだから……」
私の言葉にそっと唇が降りてくる。ぎこちないキスだった。きっと兄はこう言った事に慣れてはいないのだろう。それが。それが私には嬉しかった。
「…んっ…ふぅんっ……」
私はきっと兄よりは上手いだろう。否がおうでも身体が覚えている。踊り子にされる為連れ去られ、そして。そしてそこで受けた陵辱の日々。私は男を悦ばせる術をそこで叩き込まれた。毎日、代わる代わる男達に犯されて。そして。そして気持ちとは裏腹に快楽に反応する身体にし込まれていた。
「…はぁっん…はふぅ……」
そんな私を貴方は救ってくれた。男たちに犯され、そして踊らされる日々に。貴方が見付け助けてくれた。穢れた身体になった私を、それでも大切だと言ってくれた。
「…プラム…俺…その…優しく出来ねーかもしれない…」
唇が離れて告げた床場に私は微笑った。その優しさが何よりも好き、だから。
「平気だよ、お兄ちゃん。私お兄ちゃんならどんな事をされても平気…あいつらには……辛いだけだったけど…でも…」
「プラム、その事は言うな。あれは事故だ。お前はあの頃のままだし、そして。そしてお前の初めての男は、俺だ」
「…うん…お兄ちゃん…うん……」
「俺の花嫁はお前だけだ」
もう言葉は、いらなかった。私はその逞しい背中にしがみ付いて、ただ。ただ好きだと想いを込めるだけで。それだけで、伝わるから。


「…はぁっ…あぁ……」
胸に舌を這わされて、ぴくんぴくんと身体が跳ねるのを押さえられなかった。決して巧みとは言えなかったけれど、想いは痛い程に伝わった。ぎこちない手だけど、ぎこちない舌だけど。一生懸命に、そして丁寧に私を扱ってくれるのが分かるから。
「…あぁ…あぁんっ……」
指で胸を鷲掴みにされて、そしてぎゅっと揉まれる。舌が乳首を転がして、軽く歯を立てられる。それが。それが何より私の心を揺さぶって。
「…ああん…あんっ……」
廻した背中の広さが。その大きさが、それだけが。それだけが唯一の私の頼るもので、そして。そしてただ一つの安心出来る場所だと。今こうして確認して。
「…お兄ちゃん…お兄ちゃ…あぁん……」
胸の谷間に舌が滑る。そのままゆっくりと臍のくぼみまで辿り付いて、そこを吸い上げられて。
「…あんっ…お兄ちゃん…あぁ……」
少しだけ不安になったから、ぎゅっと背中に廻した手に力を込めた。そしてまた確認する。ここが。ここだけが唯一の場所だって。ここだけが唯一の私の場所、だって。そして。
「…ひゃんっ!……」
太い指が私の中に入って来た。それは不器用で少しだけ痛かったけれど。けれども貴方の指だと想ったら、それだけで私のソコは濡れた。じわりと、蜜が零れて来る。
「…あぁんっ…あん…あんっ……」
「プラム、痛くねーか?」
「…へぇき…お兄ちゃん…へぇきだよ…だから、ね…指だけじゃなく…」
「――――っ!」
私の手は自然と貴方のソレに伸びていた。その分身は私を求めて熱く滾っている。それだけで。それだけで私の身体の芯はじゅんっとなった。
「…コレ…ね…お兄ちゃんの…コレ……」
愛しいソレを指でなぞる。それだけでどくんどくんと脈打つのが分かる。私を求めてここまで熱く硬くなってくれている。その事が。その事が何よりも嬉しい。
「…コレ…欲しい…よぉ……」
「プラム、もう…俺…我慢出来ねー…」
「…あっ……」
握っていた手を離されて、逞しい二の腕が私の腰を掴んだ。そして入り口に硬いものが当たる。それだけで私の蕾は悦びに蠢いた。欲しくて。ソレが、貴方が欲しくて。そして。

――――ズズズ……

濡れた音と共に私の中に貴方が入ってくる。熱い塊が私の身体を真っ二つに引き裂いた。その痛みこそが、私の身体を悦ばせる。
「あああああっ!!!」
喉を仰け反らせて喘いだ。堪えるものは何もない。押さえるものは何もない。私はもう淑女でも貞淑な女でもない。一度は穢され犯された身だから。だからこそ、私は。私は押さえる事無く全てで貴方を求めたい。好きだから。こんなにも好き、だから。
「…ああああっ…あああ…お兄ちゃん…お兄ちゃぁ…んっ!!」
ぐちゅぐちゅと接合部分が音を立てながら、楔が私の中へと埋め込まれてゆく。熱い楔。熱い塊。その全てが私にとっては愛しくそして。そして激しいモノ。
「…プラム…プラム…」
「…ああぁ…あぁんっ…お兄ちゃん…お兄ちゃん…ああああっ!!」
好き。ずっと好き。ずっとずっと、好き。だって初めて声を聴いた男の人だもの。初めて声を交わした男の人だもの。初めて指を絡めたのも、初めて手を繋いだのも。全部。全部貴方なの。私の初めては何時も、貴方だから。

「あああああ――――っ!!!!」

だから、最期にも。
最期にも、貴方が。
貴方がいて、欲しい。


――――私が死ぬ最期の瞬間に、顔を見るのは貴方がいい……




大切だった。ずっと、大事だった。
たったひとりの妹で、そして。
そしてたった独り護るべき存在だから。
それなのに俺の不甲斐なさで。お前を。
お前を傷つけ、そして穢してしまった。
こんなにも大事なのに。こんなにも大切なのに。
だからもう二度と。もう二度と離さない。

―――ただ独り、お前は俺の護るべき存在……


想えば何時も。何時もお前がいた。
巡りゆく季節の中で、ずっと。
ずっとお前は俺の後を着いて来た。
真っ直ぐな瞳で俺を見つめて。
ずっと、見つめて。そして。

…そしてずっと、俺の背中を護っていて…くれたんだよなぁ……




「…お兄ちゃん……」
「…プラム……」
「……帰ろうね……トーラスへ……」
「ああ、帰ろう…俺達が出逢った場所に」
「…うん…帰ろう…私が…」

「…貴方を好きだと…気づいた場所へ……」



これから先また。
また何度も季節は巡ってゆくだろう。
互いが年老い、そして死にゆくまで。
その中で。その巡りゆく季節の中で。


隣で笑うのは、お前だけで。
隣で泣くのも、お前だけで。



そうやって、ずっと。ずっと、ふたりで。



――――巡りゆく季節の中、変わらない想いのままで……

 

 


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