空に一瞬だけ浮かぶ、雨上がりの虹。
七色のパレットが綺麗に空に零れてゆく。
ずっと閉じ込めておきたいけど、閉じ込められない一瞬。
だから綺麗なのかな、って思った。
―――ずっとじゃないから切ないのかな?って思った。
「わーびちょびちょだーっ!!」
突然振り出した雨に、サンとフラウはずぶ濡れになっていた。やっとの事で自宅に戻ってきたけれども、今更濡れ鼠になった身体はどうしようもなくて。更に窓の外では線のような雨が降り続いている。
「凄かったねー、雨…ヴ〜寒いよーフラウ〜っ」
ぶるぶると震えながら自らの身体をぎゅっと抱きしめていたサンだが、耐えきれずにフラウに抱き付いてきた。けれどもフラウも身体も同じくずぶ濡れなので全く意味の無い事だったが。
「わーサンっ!!あんたもびしょ濡れなんだからー私が寒いでしょうがっ!」
「だって寒いんだものー寒いよー寒いよーフラウーっ!!」
「〜〜ったく…ホントに我侭なんだから、しょうがないなぁ…おいで」
ぎゅっとサンの手を引っ張って、フラウはバスルームへと連れて行った。
―――洋服の脱がし合いっこ。
向き合って互いの濡れた服を脱がし合う。
子供みたいだね、って言って笑った。
子供じゃん私達って…言って笑った。
どっちでもいいよね。どっちだって、いいよね。
子供みたいでも、子供でも。
だってこの時間だけが。子供の時間だけが。
――――私達が一番、強くいられる時間なんだから……
「…なんかサン、胸が大きくなった……」
二人で泡だらけになった。その泡の隙間から白い胸が零れてくる。サンは何時も太陽の下を駆けずり回っているのに、意外と色は白かった。元々白いフラウと並んでも遜色ないほどに。
「だってフラウが何時も揉んで…くれてるじゃん」
上目遣いにまるで悪戯をする一歩手前の子供のような顔で、サンはフラウを見上げた。その顔が少しだけ憎たらしくて、けれどもそんな顔が大好きだから。だから。
「むう、たまには私のもちゃんと揉みなさいよっ」
「あんっ!フラウっ」
フラウの手が伸びてきてサンの胸を掴む。確かにそれは大きくなっている。最初の頃はフラウの手のひらに収まるサイズだったのに、今はこうして手のひらからはみ出るほどになっている。成長期なのか…だとしてもちょっと、いやかなり羨ましい。
「もういじめちゃう」
「やんっ!…やだぁ…フラウっ…あぁんっ……」
何時もよりも力を込めて、痛い程に胸を掴んだ。ぎゅっと揉んでやれば、サンの身体がぴくんっと跳ねる。それと同時に髪に掛かった泡がふわりと、飛んだ。
「…痛いよぉ…フラウ…あんっ…」
「ってその割には気持ちよさそうなんだけど」
「…違う…よぉ…痛い…よ…ふぅっ…んっ……」
「じゃあどのくらいがイイのよ?」
フラウの言葉にサンは自らの手を伸ばして、その胸に触れた。二人泡まみれになりながら、向かい合って胸をもみ合う。無邪気な顔と裏腹のアンバランスな行為。でもそれが。それが大人でもない、子供でもない、少女特有の…不思議な卑猥さだった。
「…あんっ……」
「…こ、このくらい…が…イイ……」
サンの手は包み込むように優しくフラウの胸を揉んだ。サンよりも小ぶりだったけれど、形の良い胸だった。それよりも何よりも、フラウの肌は雪のように白い。真っ白で綺麗で、サンはそれが何よりも羨ましかった。
「…あぁ…この…くらい?……」
「…はぁぁっ…あ…うん…気持ち…イイ…イイよぉ…フラウ……」
「…私も…イイ…サン…でももうちょっと…強く…ね…」
「…こう?…フラウ?…」
「…あぁ…イイ…イイ…サン…イイ…ん……」
耐えきれずフラウは胸を突き出してサンの愛撫をねだった。サンも答えるように胸を弄る手に力を込める。そうしてしばらく二人は互いの胸を弄ることに没頭していた。
「…サ…ン…んっ…」
「…んんっ…ふぅっん……」
むども胸だけでは物足りなくて。もっと。もっと触れたくっなって。触れたいから、キスをした。唇を開いて舌を絡めあいながら、互いの口内を貪る。
―――バスルームの中はぴちゃぴちゃと濡れた音だけが、響いていた。
一番好きなのは?と聴かれた時。
迷わずに相手の名前が言えること。
一番大切なのは誰?と聴かれて。
迷わずに互いの名前が、云える事。
―――きっとそれが、一番大事だから……
ふわふわの白い泡が二人を包み込む。その白い泡の中に火照って朱に染まる身体が、浮き上がって。そして。
「…あぁん…フラ…ウ……」
キスの後の唾液が残ったままの唇がサンの胸に触れる。そのまま尖った乳首を口に含み、舌で転がした。その度にぴくんぴくんと、身体が揺れて座っているのも耐えられなくなって。
「…あぁん…フラウ…私…あんっあんっ……」
フラウの身体に凭れ掛かるようにサンの両手が、頭にしがみ付く。けれどもフラウの体重では支えきれずに、そのままもつれ合うように二人の身体は硬いタイルの上に落ちていった。
けれども。けれども行為に夢中のふたりには、止めることは…出来なくて。
―――ちゅぷちゅぷ…と、濡れた音。ウラウの舌が醸し出す音が、サンの耳に響いてくる。
「…あぁ…やぁ…ん…フラ…ウ…あぁ……」
ちゅぷっと小さな音とともにサンの胸からフラウの唇が離れてゆく。それが名残惜しくてサンは胸を突き出す格好をした。けれどもそれ以上そこに愛撫が与えられることはなかったが。けれども。
「―――ああっ!!」
けれどもフラウは一端起き上がると方向を転換して、サンの秘所に顔を近づけた。そしてそのまま脚を開かせると、ピンク色のソコに舌を忍ばせる。とろりと蜜を滴らせ始めたソコに。
「…あああ…あぁ…はぁっ…んっ……」
その蜜をわざと音を立てながら吸って、指を中へと侵入させた。ひくひくと淫らに蠢く蕾は、与えられる快楽に忠実に花開いてゆく。ぐちゅぐちゅと中を掻き乱せば、鮮魚のようにサンの身体は跳ねて。
「…あぁぁっ…あぁ…フラ…ウ…ひゃんっ…ぁ…」
「…サン…私のも…私のも…舐めて、ね……」
サンの気持ちよさそうな声に耐えきれず、フラウも脚を開いてサンの顔面に自分の秘所を暴いた。やっぱりそこからも蜜が零れてきて、サンの顔に掛かった。
「…ねぇ…サン…私のも……」
「…フラウ…ん…はぁっ……ふぅ……」
「…あんっ…あぁ…イイ…イイよぉ…サンっ!……」
突き出してきた秘所におずおずとサンの舌が絡まる。それはぎこちない動きだったけれど、懸命にフラウのピンク色の媚肉を舐めていた。唾液と蜜が交じり合うくらいに。
「…んっ…ふ…んんん……」
それに答えるようにフラウの舌が、指が、再びサンのソコを攻めてゆく。互いに秘所を唇に押し当て、そしてその蜜を吸い合って。そして。
「――――ああああっ!!!」
「……あああんっ!!!」
ふたりは同時に、達した。その瞬間、視界が真っ白になった。
…あ、雨…上がっている……
……そうだね…サン…音、しなくなった……
…っ!フラウ、見て見てっ!!
……どうしたの?………
『虹が、出ているよ。ほらっ!』
微笑う。無邪気に微笑う。
子供のような笑顔で。でも子供じゃない笑顔で。
『ような』って言葉使った時点で。もう。
…もう私達、本当は…子供じゃないんだよね……
「うん、綺麗だね」
でも今は。今はまだ、もうちょっとだけ。
「うん。凄い綺麗っ!やったねフラウっ!!」
もうちょっとだけこのままで。もう少しだけこのままで。
「凄いいいもの、見ちゃったね」
もう少しこのままでいても、いいよね。
――――だって私達…まだ…まだ一緒にいたいから……
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