Only you




君が、微笑って。君が、泣いて。
君が、恥ずかしがって。君が、怒って。

くるくるとよく変わる表情を見ているのが好きだった。
無表情だと言われている私には羨ましいほどに、君は。
君は色々な顔を私に見せる。それが楽しくて、それが嬉しくて。
―――ずっと君を見ていたいと、思った。


記憶が戻り、帰るべき場所を思い出しても。それでも。
それでも何処かで、願っていた。

―――君と一緒に…いたかった、と……



『リシュエル…おいら…子供じゃない』



君が真っ直ぐな瞳で、そう告げた時。
反らされる事のない瞳で、真っ直ぐに。そして。
そして君の小さな肩が微かに震えていたその瞬間、私は気が付いた。

―――君が、好きだと言う事を……


帰るべき場所は、戻るべき場所はそこにあった。すぐそこにあった。けれども、私は。
「バド、一緒に行こう」
私は君の手を取った。護るべき人間は、他に。他にいたのに。でも私は君を、護りたかった。
「…リシュエル…でもおいら…盗賊だし……」
「行こう、バド。一緒に」
記憶が戻りそして私には帰らなければならない場所があった。――メーヴェ…君の傍に。君の傍に帰らなければならなかった。それでも私は。
「君と一緒にいたいんだ」
その想いよりも何時しか、君が。君が大切になっていた。君だけが、大切になっていた。
「…リシュエル……」
「行こう、ずっと君といたいから」
そっと腕に抱きしめたら、一瞬君の身体がぴくんと跳ねて。けれどもゆっくりと緊張が解けていってそして。そして、何時しか私の腕の中に身を、委ねてくれた。それが何よりも、嬉しかった。


すぐにでも帰らなければならなかった。
傷が治ったらすぐに。すぐに戻らねばならないと。
けれども心の何処かで、思っていた。
このままずっと一緒にいたいと。
病気の心が弱くさせたのかそれは今でも分からない。
けれども、私は。私は確かに思っていた。

――――君と一緒にいたいと……


君を、見ていたかった。君を、ずっと見ていたかった。
私の廻りにはいなかった人間。私の廻りにはなかった光。
強くて眩しくて、そして。そしてひたむきな瞳。
こんなにも曇りのない瞳を私は知らない。こんなにも真っ直ぐな瞳を。
盗賊でありながら、どうしてこんなにも君は純粋でいられるのか。
それが私は知りたかった。知りたいと思ったら何時しか。
何時しか強く惹かれていた。どうしようもない程に愛しくなっていた。

―――君が好きなんだと、思った。


護るべき者。護るべき存在。
私の全てで護るべきメーヴェ。
それ以上に私は。私は君に。

君に強く、惹かれていたから。



「…おいら…盗賊だけど…入れてくれるかな?」
「君が盗賊なら、向こうは海賊だよ」
「…へへ、そうだね。そう、だよね」
「だから着いて来て欲しい。私が帰るべき場所に、君がいて欲しい」
「―――リシュエル……」
「私が護るべき存在よりも…君が大切だから」


そっと頬に手を重ねれば、君はぴくんっと震える。何時も、こうだ。私が触れるたびに君の身体はこうなる。それが愛しくもあり、そして少しだけ…悔しいのだけれども。
―――何時になったら君は私に、全てを預けてくれるのだろうか…と。


「好きだよ、バド」
「…あ、あのリシュエル……」
「ん?」
「…お、おいらも…その……」
「うん」
「……き……」


「……好き………」


それだけを言って俯いてしまった君の頬をそっと撫でて、自分へと向かせた。そしてそのままそっとキスをする。触れるだけの、キス。でもきっと想いは伝わるはずだから。


「…キスって…その……」
「うん?」
「…あ、甘い…んだな……」
「そうだね、とっても甘い」

「きっと君が、甘いからだよ」


私の言葉に耳まで真っ赤になって、そして。そして俯いてしまう君。そんな所はまだ子供だけれど。子供だからこそ愛しくて、そして。そして君が少しづつ大人になってゆくのを、もっと綺麗になってゆくのを見てゆきたいから。



――――君をずっと、見てゆきたいから……

 


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