あなたに逢えて、よかった




―――貴方に出逢えて…よかった……。


たくさんの人達の中で、巡りゆく人達の中で、貴方に逢えた事。
私が貴方に、出逢えた事。それが何よりも。何よりも、しあわせです。

星の数ほどの人達の中で、こうして指先が絡まった事が。



「泣いて、いるの?」
俯く私に貴方は心配そうに聴いてきました。その優しさが、大好きです。どんな小さな痛みも、どんな小さな淋しさも見逃さない貴方が。
「…セネト…兄様……」
顔を上げて私は微笑いました。貴方が、笑顔が好きだと言ってくれたから。私は一生懸命に微笑いました。でも。でもやっぱり瞳から涙が零れるのを…抑えきれなくて…。
「―――エスト……」
手が、伸びてきてそっと。そっと私の零れ落ちる涙を、拭ってくれて。細くて白い綺麗な指先が、私の涙を。私はその手が、何よりも好きでした。何よりも、好きです。
お父様もバル爺もいなくなって独りぽっちになった私を。そんな私を貴方のその優しさが。貴方の暖かい優しさが、私を包みこんでくれたから。

――――だから私は淋しさを…忘れられたのです……



小さな女の子、だった。とても小さな女の子だった。
華奢な肩と大きな瞳を持つ、小さくてでもひたむきな女の子。
そんな君が僕の前に現れて、そして。そしてそっと。
そっと暖かい風を僕に与えてくれた。君のその笑顔が、僕に。

カナンの王としてこれからの道を歩まねばならない自分。
肩に圧し掛かる人々の期待と、そして希望。それを一身に背負う僕は。
何時しかその重さに疲れ、そして息苦しさを覚えていた。
そんな僕に。そんな僕に、お前は何時も。

『―――セネト兄様、無理しないでくださいね』

子供のような笑顔で。春風のような笑顔で、何時も。
何時も微笑ってくれたお前。
僕が駄目になりそうになった時でも、そのひたむきな瞳で僕を。
僕をずっと見ていてくれた瞳。
真っ直ぐに僕だけを、見つめてくれた瞳。


…そんなお前が、僕は何よりも…大好きだよ……



「ごめんね、お前を泣かせてしまった」
指先が、そっと。そっと涙に触れる。その優しさが。
「お前にはずっと微笑っていて欲しいのに」
その優しさが、好き。何よりも、好き。貴方が、好き。
「…ごめんね、エスト……」
…何よりも、貴方が好きです。セネト兄様……


「…ううん兄様…これは嬉し涙、だから……」


手を伸ばして、そして。そして指先を絡めた。こうして繋がっていれば何も怖くはない。貴方の指先がこうして私に繋がっていれば。淋しさも不安も孤独も全てが。全てがそっと消え去ってゆくの。
「…好きだよ、エスト……」
指を絡めあいながら、キスしました。触れ合うキス。触れ合っている、キス。そこから伝わる思いが、私の気持ちを何よりも満たして。何よりもしあわせにしてくれるから。そして。
「…私もです…セネト兄様……」
そっと抱きしめられて、そのままベッドの上にふたりで落ちてゆきました。



「怖かったら、言ってくれ」
そっと私の服を脱がす指先。少しだけ緊張しているのが伝わって、嬉しかった。嬉しかったから、私はぎゅっと貴方に抱きついた。
「怖くないです。セネト兄様と一緒なら」
「エスト、好きだよ」
抱きつく私にそっと笑顔を浮かべて額にキス。そのキスに私の心がそっと溶かされて。溶かされて、そして。
「…あっ……」
私のまだ膨らみの薄い胸にその手が、触れる。そっと、包みこむように触れて柔らかく揉まれた。それだけで私の身体がぴくんっと跳ねるのが分かる。
「…あぁ…セネト…兄様…あっ……」
外側を揉まれながら、指先が胸の果実を転がす。そのたびにぷくりとソレは膨れ上がり何時しか痛い程に張り詰めていた。
「…あぁんっ…はぁっ…兄…様っ……」
「エスト、可愛いよ。僕の」
「…んっ…ふぅっん……」
胸を何度も揉まれながら、唇が降りてくる。舌先で唇を突つかれて、私は口を薄く開いた。その隙を逃さずに舌が忍びこんでくる。それを私は戸惑いながらも、絡めた。
「…んんっ…んん…ふっ……」
ぬちゅっと濡れた音が室内を埋める。それがひどく恥ずかしかった。恥ずかしかったけれど。でも私は。私は、今は。今はその恥ずかしさよりもこうして触れていたい。貴方に、触れていたい。貴方に、触れられていたい。
唇も、肌も、指先も、全部。全部触っていて、欲しいから。
「…はぁっ…んっ…あぁっ……」
ぴちゃりと、口許を結ぶ唾液が私の顎に伝う。それを貴方の舌がそっと掬った。その動きだけでびくびくと身体が震えるのを抑えきれない自分がいる。
「…セネト…兄様…はんっ……」
顎を辿っていた舌が首筋を滑り、鎖骨を吸い上げる。そのまま胸の谷間に落ちて、間のラインを舐められた。そして。そして胸の突起に舌が、触れる。
「ああんっ!」
痛い程に張り詰めた胸の果実を、そっと舌が嬲った。照かるほどに舐められて、そのまま軽く歯で噛まれる。その痛いとも思えるような刺激が、私の意識を真っ白にしていった。
「…あぁっ…あぁ…ん…は……」
「エスト…僕の、エスト…」
「…セネト…兄様…ああん…兄…さまぁっ……」
「僕だけの、エスト」
「―――あああんっ!」
身体を滑っていた指が脚の付け根に辿り着くとそのまま軽く触れてから、膝を立てられた。そしてそのまま茂みを掻き分け指が、花びらに埋められる。くぷりと濡れた音を立てながら。
「…くふぅっ…はぁっん…あぁぁ……」
くちゅくちゅと音とともに中が掻き乱される。花びらが指の肉と擦れ合ってひくんひくんと蠢いているのが自分でも分かった。そして。そしてとろりと零れて来る液体も。
「…あぁ…兄様…あ…ふっ…はぁっ……」
乱れる息。名前を呼びたくても口から出るのは、甘い吐息だけ。それでも。それでもこうして。こうしてぎゅっと背中に抱きついていれば。こうしてね、ぎゅっと、ね。
―――抱きついていれば何も怖くはないの……
「はぁ…あぁ…あああんっ!!」
がくんがくんっと脚が震えて。そして。そして意識が一瞬真っ白になって。私は何時しか兄様の綺麗な指先にいっぱいの蜜を零していた。


貴方に逢えて、よかった。
貴方にこうして、出逢えて。
神様が私に。私に貴方を。
貴方を与えてくれたことが。
何よりも。何よりも、嬉しいの。


――――誰よりも貴方が…大好きだから……



ずぶりと音ともに、貴方が私の中へと入ってくる。狭すぎる私の入り口は先端部分を飲み込んだだけで、痛みを伴う。それでも。それでも私は貴方の背中に手を廻して必死にその痛みに耐えた。
「―――ああああっ…あああ……」
身体を引き裂かれるような痛み。芯が私の中に埋め込まれてゆく痛み。でもそれ以上に。それ以上に、これは貴方だと。貴方なんだと、感じられるから。
「…大丈夫か、エスト?」
ひどく心配そうな声で、そっと私の髪を撫でながら。撫でながら言ってくれる貴方が。そんな貴方が、大好きだから。
「…へい…き…兄様…へいきだから…だからエストを……」
「―――エスト……」
「…エストを…兄様のもの…だけに……」
「ああ、エスト。お前は僕だけのものだ」
降ってくる唇。額に瞼に、唇に。そっと降ってくる唇。その優しさに溶けて、私はゆっくりと満たされてゆく。痛みすらもその唇の甘さが、そっと引き取ってくれる。
「…兄様…好き…大好き…」
「僕もだよ、エスト。お前だけを…愛しているよ……」
腰に掛かる手が、ゆっくりと動き出し私を引き寄せた。そのたびに私の中に貴方が埋まり、花びらを傷つけてゆく。けれども、その痛みすらも。
「あっ!あああっ…はぁぁぁっ!!……」
その痛みすらも、貴方が与えてくれたものならば。私に、与えてくれたものならば。
「あああああ――――っ!!!」
何もかもが、大切で。何もかもが、大事なものなの。



貴方に逢えて、よかった。貴方を好きになって良かった。
貴方の優しさが、貴方の想いが、貴方のこころが。
私をそっと埋めてゆく。そっと私を満たしてゆく。
淋しさも孤独も、痛みも哀しみも、全部。全部貴方だけが。


――――貴方の手だけが、私をこうして連れて行ってくれるから……



「…また、お前を……」
触れる、手。頬に触れる、優しい手。
「…お前を泣かせて、しまったな……」
大切な、貴方の手。貴方の、優しい手。

―――大好きな、手。




「…ううん兄様…さっきも言ったでしょう?これは嬉し涙、だって……」





あなたに逢えて、よかった。あなたを好きで、よかった。

 


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