貴方の、顔の形。貴方の、指の形。
貴方の、瞳の形。貴方の、愛の形。
―――全部、全部、記憶しておきたいから……
ずっと、愛しているのよ。ずっと愛しているわ。
ただ独り貴方だけを、永遠に。永遠に、想っているから。
「…シエラ……」
腕の中の貴方が微笑うから。あの時のままで微笑う、から。私はひどく嬉しくて…嬉しくて貴方にぎゅっと抱きついたの。
「―――生きていたんだな…逢えたんだな…よかった……」
貴方の、手。綺麗な、手。あれだけの剣を振るいながらも、その手は綺麗でそして繊細で。けれども私の頬を包み込む手は、大きくて。大きくて、暖かい。
「…ずっとお前…捜していた……」
貴方の手、貴方のぬくもり、何一つ変わってはいない。ずっと。ずっとあの頃のまま。この手だけが私を救い、私を導いていた。この手、だけが。
「…シゲン…ごめんなさい…ごめんなさい……」
頬から零れ落ちる涙。その涙を拭う、手。初めて出逢った時から、ずっと。ずっと私の涙を拭ってくれていた、手。
「…何故、泣くんだよ……」
ずっと、この手だけが、私を。
「…だって私…貴方を…裏切り者だって…罵った…」
「バーカ、そんなんいいよ。俺はお前が生きていてくれれば、それで」
「―――それでいいんだからよ……」
零れ落ちる涙が貴方の頬にぽたりと、掛かる。
私はそれを拭うことすら忘れ。忘れて、ただ。
ただ貴方を抱きしめた。それだけが。
それだけが、今。今私が願い想う事。
貴方がこうして生きて、そして。
そしてこうして、私のそばにいると云う事。
「…ごめんな…シエラ…ずっと……」
「…シゲ…ン……」
「…ずっと独りにしちまって……」
「…ううん……」
「…お前…護るって約束してたのに…今は…」
「…今は…お前に護られている……」
死を感じた瞬間に。死を想った瞬間に。
お前が現れて、本当に俺は死んだと思った。
だって最期に現れるのがお前なら。
最期に一番愛する者の姿が現れるなんてさ。
――――死ぬ前の最期の、贈り物みたいじゃねーかよ……
死神は、死を誘う為に。
一番愛しい者の姿で。一番愛する者の姿で。
現れるモンだって思っていたから。
お前の、頬の形。お前の、手のひらの形。
お前の、輪郭の形。お前の、瞳の形。
悔しいくらいに全部。全部、俺は憶えている。
「…シエラ…キスしてくれ……」
「…シゲン……」
「…生きているなら、キスしてくれ…お前を感じたいから」
「…幾らでも…貴方が…望むならば……」
そっと触れる、唇。
瞼に、額に。頬に、そして。
そして唇に、触れる。
…ああ俺は…俺はこんなにもお前を…愛している……
「―――死にたくねーな……」
「死なせない、シゲン。私が貴方を死なせない」
「…死なせるなよ…俺はもっと……」
「…もっとお前の唇…感じたいから……」
お前の、形。指先に、手のひらに、全て。
全て記憶している。全てを憶えている。
どんなに変化しようとも、どんなに時が流れても。
この指先が、この記憶が、お前の全てを。
―――ただ独り…愛したお前を……
指先が辿る記憶、それが永遠の証。
お前の形を俺が永遠に記憶する。
指先で、唇で、お前の全てを。
「…愛している…今更だけど…シエラ……」
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