甘い日常



何時もずっと、一緒にいたいから。


大きくて広いその背中を見ているのが好き。
その背中を見つめていると、ね。
その背中を見ていると、護られているんだなって…思えるから。

自分の身は自分で護るのが当たり前だったから…だからこんな気持ち、しらなかったの。



「ヴェガ」
しばらくの背中を見つめていたけれど。見て、いたけれど我慢できなくなったから、後ろからぎゅって抱きついた。大きな広い背中に直接触れる瞬間。何よりもしあわせな、瞬間。
「どうした、ジュリア?」
そんな私に何時もの無表情な、声。でも知っている。そこに含まれる優しさを、私は知っているから。
「何でも無い、ただこうしたかっただけ」
少し力を込めて抱き着けば、呆れたような軽いため息。でも私は知っている。そんな貴方の口許が優しく微笑っている事を。
「全く、お前は」
前に廻された私の手をそっと離させると、そのまま貴方は私の方に向き合った。こうして向き合って、そして確認する。やっぱり貴方の瞳が微笑っているから。
「イヤ?こんなのは?」
向き合ったから、今度は背中に手を廻した。後ろから抱き付いてぬくもりを感じるのもいいけれど、こうやって背中に手を廻して手のひらで感触を感じるのも好き。
「いや、そんなことは無い」
くすっとひとつ微笑う貴方に、私は最高に幸せな顔をして。そしてしあわせなまま、その胸に飛び込んだ。



貴方の前では、子供みたいになっちゃうの。
自分でもビックリするくらいに、甘えたり。
いっぱい甘えたり、我侭言ったり。
こんな子供みたいな自分を、私は知らなかった。
知らなかったの。自分がこんな部分を持っている事を。
貴方に出逢うまで、知らなかったから。


けれどもそんな私を貴方は受け入れてくれる。
そんな私を、大きな腕で包み込んでくれる。


だからね、私。私いっぱい貴方に甘えるの。
子供みたいに我侭になりながら。一番大好きな貴方に。
一番大好きな人、だから。


―――どんな私も全部、隠すことなく…見せたいから……



「お前がこんなだとは思わなかった」
髪をそっと撫でてくれる手が。大きくて優しい、手が。
「こんな私は、イヤ?」
その手が私だけのものだと言うことが。この大きな、手が。
「イヤだったら…こんな事はしない」
何よりも、嬉しいから。何よりも、しあわせだから。


大きな手が私の頬に掛かり、そのままそっと。そっと唇を塞ぐ。
微かに瞼を震わせながら、私はその唇を受け入れる。ただひとつ、大事なキスを。



「…ヴェガ…大好き」
「ああ」
「貴方が一番大好き。だから」
「うん?」
「ずっと…私をそばにおいてね」


私の言葉に貴方は一言「ああ」と言って、もう一度私を抱きしめた。広くて優しい腕が私を包み込む。この腕が私のものだけだと言うことが。この腕が私の為にあるんだって事が。何よりも嬉しくて。何よりも、嬉しいから。
「本当にお前は子供のようだな」
貴方の言葉に見上げれば、不意打ちのように額にキスをれる。それすらも、しあわせ。溢れるほどの、しあわせ。大好きなひと。
「顔にすぐ出る」
「…だって貴方が嬉しいこといっぱい、私にくれるから……」
「いっぱい、か?」
「うんいっぱい。いっぱい、貴方だけが私にくれたのよ」
無条件に甘えられる人。無条件に護ってくれる人。無条件に、そばにいてくれる人。父も兄も、何時も。何時もずっとはいてくれなかった。ずっとそばにはいてくれなかったから。

でも。でも貴方は、こうしてそばにいてくれる。私のそばにいてくれる。ずっと、いてくれる。


しあわせ。溢れるほどのしあわせ。
いっぱいの、しあわせ。それは。
それは貴方だけが私にくれたもの。


――――貴方だけが、私に与えてくれたから。




「でもジュリア…俺もお前から、貰っている……」



ただひとつのもの。それだけがあればいい。
それをお前だけが、俺にくれた。ただひとつの。



――――溢れるほどに、優しい愛を。

 


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