何もいらない、貴方がいればそれでいい。
抱きしめて、ぎゅっと抱きしめて。その髪に触れて。触れて、そして。そして全ての痛みと苦しみを分け合えたならば。
「―――ジーク……」
名前を呼ぶだけで苦しく、痛みは身体を貫き。そして。そして心の底から蝕んでゆく。
「…何処に…いるの?……」
声にしてみたら余計に苦しくなった。心で呟くよりも苦しかった、切なかった。どうにかなってしまいそうだった。
―――どうにかなれたならば…楽になるのに……
そっと胸に手を伸ばす。貴方が触れてくれたように。そっと、胸を指で包み込む。
「…あっ……」
そのまま服の上から揉んだ。最初は軽く、次第に強く。貴方がそうしてくれたように。貴方が、してくれたように。
「…あぁ…ジーク…はぁっ……」
布越しではじれったくて、自ら服のボタンを外して直に触れた。敏感になっている胸の突起は、触れる前からぷくりと立ち上がっていた。
「…ああ…ん…あぁ……」
大きな手、だった。胸に触れる貴方の手はとても大きくて、そして節くれだっていて。けれどもひどく繊細な指。何時も大きな手で私の胸を包み込んでくれて、指の腹で乳首を転がして、そして。そして……
「…ジーク…あ…あんっ……」
そしてカリリと、白い歯が尖った胸を噛む。その刺激に何時も私は身体を、睫毛を震わせていた。でも。でも今は。
「…あぁ…ぁ…ジーク…ジーク……」
触れている指はあまりにも細い。胸の果実を吸い上げる唇は、何処にもない。
「…ジーク…触れて…私に…私に…触れて……」
―――私を抱く、貴方の力強い腕は何処にもない。
どうして?どうして、こんなにも。
こんなにも貴方を好きになってしまったのだろう。
貴方を愛してしまったのだろう?
私はただ。ただ貴方の苦しみを、貴方の痛みを。
少しでも和らげてあげたかっただけなのに。
―――ケイト…愛している……
胸を弄る手が一層激しくなる。爪を立てて胸の突起に突き立てて。
―――愛しているよ…私だけの……
血が滲むほどに、その突起を抉って。そして。
―――私だけの…モノに……
そしてそれだけでは足りない私のもう一方の手は、何時しか濡れた下腹部へと辿り着いていた。
―――君のココが、欲しい…
茂みを掻き分けて辿り着いた秘所は、既に愛液で濡れぼそっていた。
―――可愛い君のココを私だけのものにしたい……
貴方を想い、貴方を願い、濡れていた。
傷ついた心を、傷ついた身体を。
その全てをこの腕で抱きしめたかった。
抱きしめて、共有して。そして。
そして、そっと。そっと貴方の髪に、触れられたならば。
「―――ああんっ……」
膝を立てて、秘所を剥き出しにした。あられもない格好になって、自らの指で慰める。端かに見たらひどく惨めな格好だろう。それでも。それでも指の動きを止める事は出来なかった。
「…ああ…あん…はぁぁっ……」
媚肉を掻き分け、中を捏ね繰り廻す。ぐしゅぐしゅと濡れた音が耳に届く。その音に身体の芯がジンっと痺れるのを感じた。
「…ジーク…あぁぁ……」
一本では物足りなくて、指の本数を増やす。二本の指がそれぞれ勝手気侭に中を抉ってゆく。けれども、まだ足りない。
「…ジーク…あぁ…貴方が……」
指なんかじゃ足りない。もっと別なものが欲しい。もっと熱くて、そして硬いモノが。貴方のモノが、欲しい。
「…貴方が…欲しい…ジーク…ジーク……」
貴方の楔で私の中を掻き乱して欲しい。何度も何度も奥を抉って、そして。そして身体を真っ二つに引き裂くように、激しく。激しく貫いて欲しい。貴方が、欲しい。
「…欲しい…よぉ…ジーク…ああ……」
けれども私の中をいたぶるのは自らの指でしかなくて。私を埋めるのは細い指でしかなくて。熱い、強い、楔ではなくて。
…身体は火照り昇り詰めてゆくのに…心は冷えてゆくばかりだった……。
今貴方はどうしているの?今何処にいるの?
私の声は届かない?届く事は、ないの?
この想いは、届く事はないの?貴方に、届く事はないの?
好きで、好きで。
貴方が好きで、どうしていいのか。
どうすればいいのか。
―――もう分からなくて……
「…あああっ…あん……」
背中に腕を廻すのが好きだった。広い背中にこの腕を。そして。そして貴方の傷に触れるのが、好きだった。
「…ジーク…ジーク…ああ……」
こうして触れれば少しでも。少しでも貴方を癒す事が出来るのではと思って。こうすれば、貴方に少しでも近付けるのではと思って。こうすれば。
―――貴方の痛みを少しでも…分け合えると思って………
「…あぁ…ぁぁ…ん…もぉ…ジーク……」
分け合いたかったの、痛みを。分け合いたかったの、傷を。ひとりでは抱えきれない程の哀しみと辛さは、ふたりでならば乗り越えられると思ったの。
「…ダメぇ…ジーク…あああっ!!」
ふたりでなら、痛みも。ふたりでなら、哀しみも。半分になると…想ったの……
ぽたりぽたりと、大量の愛液が指に広がった。
独特の雌の匂いが広がる。
脚を投げ出しながら、剥き出しになった秘所を隠そうとせずに。
私はただ空洞のように、それを見つめた。
あられもない自分の姿を、ただ見つめていた。
「…貴方が…好きなの……」
荒い息のまま、私は呟いた。
言葉にしたら何故か。
何故か、涙が零れてきた。
狂えたら、死ねたらと。
ふと思うことがある。
この苦しみから逃れられるならと。
でも死ねない。でも狂えない。
貴方にもう一度、逢うまでは。
貴方の髪に、もう一度触れるまでは。
それまでは、死ねないから。
―――貴方に逢って、その傷を抱きしめるまでは………
「…ジーク…愛しているわ……」
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