背徳の瞳 01 02 03 04 05

背徳の瞳





―――この想いを見せる事が出来るなら、この胸を引き裂いてでも貴方に見せたい。


何故だろう、とずっと考えていた。
「・・んっ・・・」
拒む事が出来なかった。これが倫理的にも道徳的にも正しくないと分かっていても。征士には、拒む事が出来なかった。
「・・せい・・じ・・・」
唇が離れると同時に当麻の口から甘い吐息が零れる。そして濡れた声で自分の名を呼んだ。
「―――当麻………」
征士は答えるようにその名を呼ぶと、手探りで当麻の髪を撫でてやった。幾ら征士の目が失明していても、それは容易に見つける事が出来た。そう記憶が無くなっていても、目にその姿が映らなくても、征士は覚えていた。身体が、記憶していた。
「・・何も・・しなくていいよ・・俺が全部するから・・だから・・・」
だから拒めなかったのかもしれない。この細い身体を。この熱い心を、征士は。でも。
「・・俺の傍にいてね・・・」
何故、彼はこんなにも自分を好きでいるのだろうか?

「・・んっ・・ふぅ・・・」
当麻は征士の上に跨がるとズボンのジッパーを外し、自らの口に征士自身を含んだ。
「・・んん・・ん・・・」
当麻は知っている限りのテクニックを駆使して、征士を煽ってゆく。自らの口を使うのは初めてだったけれど、当麻には別に嫌悪感も何もなかった。それが征士だから。その相手が他でも無い征士だったから。
「・・あっ・・・」
充分に猛ったのを見計らって当麻は口を離すと、未だ何の準備を施していない自らの蕾にあてがった。
「―――当麻、無理だ」
当麻の意図を理解した征士が、咄嗟に止めに入る。しかし当麻はそれを無視するように自らの身体を進めた。
「・・・ひっ・・・・」
当麻の声に明らかに苦痛の声が零れる。しかし当麻は最初の刺激を堪えると、一気に根本まで侵入させた。
「・・あっ・・ああ・・・」
征士は少しでも痛みを和らげようと、当麻自身へと指を絡める。それは巧みな愛撫によってたちまちに形を変化させる。
「・・ああ・・ん・・・」
痛みと快楽の狭間で当麻の肢体は妖しく身悶える。しかしその姿を見る事は、征士には叶わなかったが。それでも征士には手に取るように、当麻の様子が判るから。目が見えなくても。記憶を失っていても。
「・・あぁ・・あ・・・」
征士の力強い腕が、当麻の腰を支えるとそれを揺すり始める。当麻は素直に征士の与える快楽を追った。
「・・ああ・・ぁ・・・」
「―――当麻……」
征士の自分の名を呼ぶ声が、一層当麻の快楽を煽ってゆく。眩暈がする程のエクスタシー。
「・・せぇ・・じ・・あっ・・あぁ・・・」
もっと、自分の名を呼んでほしい。もっと、自分を感じてほしい。もっと、自分を……。
「……当麻………」
「・・せぇ・・じっ・・せぇ・・じ・・・」
征士は答える変わりに腰に廻した腕の力を強くする。そして限界まで、当麻を貫いた。
「―――あああっ」
当麻の声が室内を埋め尽くして、そしてふたりで同時に昇りつめた。


未だ熱の冷めない身体を抱きしめながら、征士はぼんやりと考えていた。この腕の中の人は、自分を好きだと言う。誰よりも大好きだと言う。自分の為になら何でもすると。
「……当麻………」
「何?征士」
「―――大丈夫か?身体」
「平気だよ。それよりも征士、良かった?」
「………え?………」
「俺、良かった?」
「……当麻………」
「俺は征士が良ければ、それでいいんだ」
いつも、こうだ。当麻は自分の事しか、考えていない。当麻自身の事さえ、考えていない。
「そんなにも、私が好きか?」
「うん、大好き」
何度も聞いた質問。その度に当麻は、真っ直ぐな気持ちを自分に告げる。本当に素直に自分の気持ちを見せてくる。
「死ねない程、好き」
「―――死ねない程?」
「だって死んだら、征士を見つめていられない」
「…………」
「征士にこうして触れる事も、声を聞く事も出来ない」
「―――どうしてだ?……」
「…え?……」
「どうしてお前は、私が好きなのだ?」
征士には分からなかった。別に自分を否定する訳では無いが、当麻にそこまで想われる程のものが自分に有るとは思えない。―――ここまで愛される理由が、分からない。
「征士だけが俺に、くれたんだよ」
当麻はそう言うとゆっくりと顔を上げて、征士に口付けた。それはすぐに離れたけれど。
「…征士は覚えていないから…分からないだろうけど…お前だけが俺に『絶対』をくれたんだよ……」
征士が何一つ覚えていなくても。何も判らなくても。それは確かに当麻の胸に刻まれているから。自分が、知っているから。
「何も信じられなかった俺に、征士だけが本物をくれたんだ」
全てのものに絶望していた自分に征士だけが、希望をくれた。誰にも愛されなかった自分に征士だけが、本物の愛をくれた。征士だけが、変わらないものをくれた。
「今の私は当麻にそれをやれる事は出来ないぞ。それでもいいのか?」
「いいんだ、もう貰ったから。だから今度は俺が征士に少しでも返したいんだ」
「―――当麻……」
「何?征士」
当麻が疑問符を投げ掛けた瞬間、当麻の身体は征士に抱きしめられた。そして半ば強引に征士は当麻に口付けた。無論、当麻はそれを拒みはしない……。
「……征士………」
「今私がお前にしてやれるのは、これしか無いからな」
征士の言葉に当麻は微笑った。それがどんなに嬉しそうな表情だったかは、征士には分からなかったけれども。でも。
「…大好き…征士……」
征士の背中に廻された当麻の腕が、雄弁にそれを物語っていたから。そして、そんな当麻の気持ちを自分はすんなりと受け止めていた。だから。
「―――誰よりも、大好き」
征士は、確信した。自分がこの腕の中の彼を、確かに愛しいと想っている事を。


「…見せられるなら…見せたい……」
「―――当麻?……」
「…俺がどれだけ…征士を好きかを……」
でも征士は、自覚していた。その熱くて激しい想いを当麻だけでなく、確かに自分も持っている事を……。
でも、未だ征士は知らない。その想いの意味を。

―――まだ、知らなかった。


この想いを、見せられるならば。
この胸を引き裂いてでも、貴方に見せたい。
この想いを、分かって貰える為ならば。
この身体を滅ぼしてでも、貴方に分かってほしい。


―――この肉体も血も精神も、貴方と言う名のものに奪われている。


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